需給動向 海外

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豚枝肉卸売価格は前月より低下するも依然として前年を上回る水準


◇絵でみる需給動向◇


大半の加盟国で豚枝肉卸売価格は前月比で数%低下

 2008年の域内の豚枝肉卸売価格は、域内の豚肉生産量の減少に連動する形で上昇傾向で推移し、夏のピーク時には100キログラム当たり170ユーロ(約19,900円、1ユーロ=117円)を超える水準に達したが、秋口より豚肉生産量が増加に転じたことから徐々に低下し、2008年12月末時点では同140ユーロ(約16,400円)程度となった。また、欧州委員会が2008年10月時点で推計した2008年第4四半期の豚枝肉卸売価格は同163ユーロ(約19,100円)であったが、同四半期の豚枝肉卸売価格の実績は151ユーロ(17,700円)となったことから、2008年秋以降の経済危機により、豚肉需要が減退し当初の予測以上に価格が低下したことがうかがえる。

 図1は2008年12月における豚枝肉卸売価格の変化率を加盟国別に示したものであるが、総じて前月比では数%低下しているものの、前年同月比では10〜20%高という状況であることが分かる。例外的にスウェーデンとイギリスにおいて前年同月比がマイナスの値となっているが、図1の変化率はユーロを基準としたものであることに注意が必要である。すなわち、スウェーデン・クローネおよびイギリス・ポンドを基準とした値では、それぞれ前年同月比で7%高、19%高となっているにもかかわらず、これらの通貨の対ユーロレートの悪化(図2参照)により、2008年12月時点でのユーロ建ての価格が見かけ上低くなっているものである。なお、豚肉の主要生産国であるデンマークも非ユーロ圏であるが、同国の通貨であるデンマーク・クローネの対ユーロレートは変動がないため、スウェーデンやイギリスのような現象は生じていない。以上のように、為替レートの変動による影響を除けば、実質的にはほぼすべての加盟国において豚枝肉卸売価格は、依然として前年同月を上回る水準が維持されている状況にあるといえる。

図1 2008年12月における豚枝肉卸売価格の変化率
図2 2007年12月を基準(100)とした対ユーロレートの推移

 

豚肉生産量は2008年末をピークに減少の見込み

 欧州委員会の予測によれば、2009年上半期におけるEU27の豚肉生産量は、前年同期を常に下回る形で減少傾向で推移すると見込まれている(図3)。例年、域内の豚肉生産量が減少する夏期に豚枝肉卸売価格が上昇し、生産量が増加する冬期に価格が低下するという季節的変動が観察されるが、2009年においては、経済危機を背景とした域内外の豚肉需要の減少の程度により、豚枝肉卸売価格の下げ止まりの時期および水準が左右されるとみられる。

 なお、2009年1月に開催された農相理事会において、養豚経営を取り巻く環境が悪化しているとして、現在ダイオキシン汚染問題の影響緩和のためアイルランド産およびイギリス領北アイルランド産の豚肉に限り措置されている民間在庫補助をほかの加盟国産の豚肉にも適用すべきとの提案が加盟国側からなされた。しかし、フィシャー=ボエル委員は燃料、飼料などの生産資材価格の低下により、今後収益性の向上が見込まれるとしてこの提案の採用を見送っており、欧州委員会側としては、現時点では、セーフティネットを発動させるまで事態は深刻化していないという認識であるとみられる。

図3 月間と畜量と豚枝肉卸売価格との相関(2007年〜2009年上半期)

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