調査・報告

エコフィードのさらなる利用促進に向けた取り組み
〜熊本県で始まった需要者と供給者をつなぐネットワーク作り〜

調査情報部 調査課 係長 井上 裕之

1.はじめに

 近年、食品残さを飼料として利用するエコフィードは、政策的支援や飼料化施設の整備などに伴い全国でさまざまな方法で利用されるようになった。中には給与するエコフィードを畜産製品の付加価値の一つとする事例もある。しかし、一般的に畜産農家がエコフィードを利用する際、飼料化工場から購入する場合や近隣に優良な飼料原料が発生する食品製造業などの工場が立地している場合を除き、自ら原料となる食品残さを探すことは現実的には困難と考えられる。このような背景から、熊本県では昨年末から食品残さが発生する食品製造業などと畜産農家のお互いを紹介する取り組みを開始した。今回、このエコフィード利用促進の取り組みについて、関係者からの聞き取りなどをもとに報告したい。

2.食品残さの飼料化は年々増加

 農林水産省が食品産業に属する事業所を対象に毎年行っている「食品循環資源の再生利用等実態調査」によると、調査開始の平成13年度の食品廃棄物などの発生量に対する再生利用率は36%であったが、その後17年度まで上昇が続き18年度は59%(前年同)と発生量が安定的に推移するなかで着実に上昇している。

食品廃棄物などの発生量と再生利用率の推移

 18年度の食品廃棄物の発生量11,352千トンの内訳を見ると、44%が食品製造業由来、27%が外食産業、23%が食品小売業、7%が食品卸売業からの発生となっている。また、これら食品産業全体の18年度の再生利用率(特に食品リサイクル法に規定されている用途である肥料・飼料・油脂および油脂製品・メタン原材料への利用)は48%となっている。これを業種別に見ると食品製造業が76%で最も高く、次いで食品卸売業59%、食品小売業29%、外食産業16%となっている。食品製造業の再生率の高さは、単一の廃棄物が安定的に一定量発生するため、利用しやすいことが一つの理由になっていると考えられる。

 次に再生利用の用途について見ると、食品リサイクル法で規定している用途では、各年とも「飼料化」と「肥料化」が全体の8割程度を占めている。13年度においては「飼料化」が1,539千トン、「肥料化」が1,421千トンであったが、18年度には「飼料化」が1.6倍の2,466千トン、「肥料化」は同1.8倍の2,600千トンと、「飼料化」および「肥料化」が全体の再生率を押し上げていることが分かる。また、本調査が公表された後、飼料価格が急上昇しており平成19年度の飼料化による再生利用量にどのような変化を与えるか注目される。

業種別の再生利用率の推移
用途別再生利用量の推移

3.需要者と供給者のネットワーク作り〜熊本県のエコフィード利用促進の取り組み〜

(1)熊本県のエコフィード利用促進の概要

 前述のとおり飼料化される食品残さは年々増加している。また、政策的に進められる自給飼料増産を背景に、全国に食品残さを飼料化したエコフィードの利用促進の取り組みが広がっている。熊本県でも平成18年2月に「熊本県食品残さ飼料化(エコフィード)行動会議」を設置し、利用促進に取り組んでいる。同県では、昨年、同計画に基づき設置された行動会議に参加する関係者の範囲を拡大し、畜産行政、生産者団体を中心とした畜産関係団体に食品製造事業関連団体、環境関連行政機関、試験・研究機関も加わることとなった。

 エコフィードの推進の方向性は、食品製造業由来の食品残さで単一かつ大量に発生するものについては試験・研究を進め、将来的には、飼料化施設の整備を含めた事業化を目指し、他方、中小規模の食品製造業や外食産業などで発生する食品残さについては、それぞれの畜産農家や飼料製造業(以下、「畜産農家など」という。)との相対での取引で利用拡大を図ることとされている。後者の取り組みを支援する目的で、2008年11月、エコフィード利用に関心がある食品製造事業と畜産農家など両者を紹介するホームページが開設され、熊本県エコフィードマッチングステーション(以下、「マッチングステーション」という。)として運営されている。同ホームページは、熊本県農林水産部畜産課(以下、「県畜産課」という。)および社団法人熊本県畜産協会(以下、「畜産協会」という。)が中心となって運営されており、全国的にも珍しい取り組みとしてマスコミなどでも注目されている。

熊本県におけるエコフィード利用推進の概要

(2)エコフィードマッチングステーションで利用促進

 マッチングステーションの仕組みは、飼料に適する食品残さが発生する食品製造業とエコフィード利用を希望する畜産農家などのリストを同ホームページ上に掲載し、取引関係の構築を目指すものである。両者の掲載情報は、発生する食品残さの内容(例えば「おから」など)をはじめ、名称や所在地などとなっており、両者の連絡、調整についてはマッチングステーションの運営主体となる県畜産課および畜産協会を経由して行われる。その後、両者で利用条件の話し合いなどがなされ、各種契約の締結を行い合意に達するというモデルとなっている。

熊本県エコフィードマッチングステーションの概要
マッチングステーションに掲載される食品残さ情報(イメージ)

 エコフィード原料供給者については現在、熊本県畜産課が中心となって前出の行動会議のメンバーである県内の食品製造事業関係団体に掲載を呼びかけ28者が登録されている。同ホームページには、このほかにも、(1)エコフィードに取り組む際の留意点、(2)食品残さの主な原材料の組成と乾物中の栄養価、(3)エコフィード製造や食品残さの運搬に関する許可や届出などが網羅されており、これからエコフィードに取り組む食品製造業や畜産農家などに基礎的情報を提供している。畜産農家などの登録については、取り組みが始まったばかりであり、今回の調査時点ではまだ登録はなかったものの、電話による問い合わせもあり関心が集まっているという。また、県畜産課が登録している食品製造事業者に食品残さの利用状況に関する聞き取り調査を行ったところ、豆腐製造を中心に食品残さとなるおからは昨年5月時点で、廃棄物として処分されていたものが、マッチングステーション開設後には農家から引き合いが強くなり、12月時点では、ほとんどが農家に引き取られているという。これは、畜産農家などの中にエコフィードの潜在的需要があり、入手先が同ホームページで紹介されたことで、農家が自ら食品製造業に連絡を取り利用を進めた結果と推測されている。県畜産課、畜産協会では、昨今の穀物価格の高騰に伴う配合飼料価格の上昇が追い風となり、畜産農家のエコフィード需要も大きくなっているとみている。ただし、今後も安定的なエコフィード利用を継続するためには、綿密な話し合いのもと、双方のメリットを活かしつつ長期的な供給・利用の関係が構築されることが望まれている。

エコフィードマッチングステーショントップページ

(3)ジュースかすの飼料化を目指して

 エコフィードの推進の方向性の中で、もう一つの柱が大規模食品製造業で発生する大量かつ単一の食品残さの飼料化である。これについては、県内のジュース工場で発生するミカン、ニンジンの食品残さのエコフィード化が模索されている。これらは、それぞれ年間4〜5千トン、約2千トンと大量に発生しているが、飼料として利用されていないことから、エコフィード原料として着目した県畜産課、畜産協会では、実用化に向けたテストを進めている。現在、ジュースかす(ミカン、ニンジンそれぞれ)と米ぬかを混合し乳酸菌を加え乳酸醗酵させた試作品の給与テストが行われている。給与テストを行う酪農家によれば、ミカンを原料としたものは給与当初から良く食べたものの、ニンジンを原料にしたものはあまり食べなかったという。しかし、しばらく給与した結果、ニンジンについても良く食べるようになったということである。実際、摂取状況を見たところ、両方とも食い込みが良く嗜好性に問題はないようであった。また、乳牛に与える影響については、観察した結果、ふんの色が若干変わるものの特に悪い影響は出ていないとのことであった。このことから配合・調整や保管方法がうまくいけば、実用化の可能性が出てくるとみられている。

 今後は現在進められている給与テストの結果などによる飼料としての適性を正確に確認する課題がある。また、ジュース製造のサイクルは、ミカン、ニンジンの収穫期に搾り、それを保管し年間を通してジュースを製造している。そのため、かすが出る時期はミカンが10月から翌年5月、ニンジンが12月から翌年3月と冬季を中心に限定されている。これらを畜産農家へ年間を通して安定的に供給するための方法の検討も必要であろう。また、利用する畜産農家の把握など出荷先の確保も必要となり、県内の需要の把握という点では、マッチングステーションがジュースかす由来のエコフィードの普及の下地になる可能性があると考えられる。

ジュースかすの給与試験
米ぬか、乳酸菌で調製したジュースかす

4.先行するエコフィード利用事例―コーンサイレージとの混合で自給飼料を確保―

 エコフィードの供給者と需要者をつなぐマッチングステーションの取り組みはこれからの活躍が期待されるところであるが、熊本県内で先行する事例として、県北部の菊池市に所在する株式会社アドバンスを訪問しエコフィードを含む自給飼料生産について話を聞く機会に恵まれたので紹介する。

 同社は、旭志地区の酪農家20戸が構成員となる飼料生産会社であり、西日本地域では珍しいTMR(Total Mixed Ration)センターの建設に併せて設立された。菊池市周辺は、同県の主要酪農生産地域であり、また、県内でも有数の飼料用トウモロコシの生産地帯でトウモロコシの二期作体系が普及している。同社は、このような飼料用トウモロコシの生産の環境を背景に、さらなる生産拡大、作業効率の向上および生産コストの削減を目指し、農林水産省の補助事業を利用し、19年4月にTMRセンターの施設整備を行った。同社では、トウモロコシのは種からTMRの調整、販売まで行っており、現在の販売先は構成員である20戸の酪農家である。TMRの主原料は、トウモロコシサイレージ、一般配合飼料、乾草で、これに液状の焼酎かす、破袋などで規格外となった小麦粉、醤油かすなどの食品残さを混合している。混合には自走式ミキサーを利用し、これを圧縮梱包機でビニール製の袋に入れ十分脱気をして約4週間程度乳酸醗酵をさせ、その後各酪農家へと配送される。焼酎かすは宮崎県の酒造メーカーから購入しており、アルコール分を蒸発、また、殺菌を行うため酒造メーカーにおいて加熱後バルク車で配送される。

 同社では、食品残さ、特に焼酎かす利用のメリットとして、(1)醗酵TMRであるため焼酎かすの水分(約87%)による水分調整、(2)良質のたんぱく質の添加、(3)これらによりるコストの削減を挙げる。焼酎かすについては、水分が大半を占めるため製品の乾物に換算すれば微々たる量であるが、TMRの原料として見ると、確実にコスト削減につながっているとみている。

 マッチングステーションの取り組み開始にあたり、同社は、今後エコフィード利用を検討する生産者に対して、コスト削減や良質な飼料原料の確保としてはプラスになるとしながらも、経営の規模や設備面などの条件にもよるとアドバイスする。同社のように、TMRセンターを整備し近隣酪農家20戸で運営する優良な事例であっても、やはり食品残さの運賃や運転資金の融通など厳しい面はあるとのことであった。しかし、小麦粉を利用するなど食品残さを飼料原料とすることについては、前向きな姿勢であり、メリットが大きいことがうかがえる。

焼酎かす用タンク
規格外の小麦粉
自走式ミキサー
(奥がコーンサイレージ)
ミキサーから充填機へ搬入
充填機で圧縮
製品(約4週間醗酵)

 酒造メーカーとの出会いについて聞いたところ、同社は、TMR製造にあたり原料として焼酎かすを探していた、一方、酒造メーカーは従来産業廃棄物として多額の費用を要していた状況で両者の意図が一致し取引が始まったとしている。このような状況を踏まえると、エコフィードの供給者となる食品製造業の要望と需要者となる畜産農家などの要望をつなぐ、マッチングステーションの取り組みの意義は大きく、今後、利用を推進する上でその機能に期待が寄せられる。

取材にご協力いただいた
(株)アドバンスの役職員の皆様
給与されたTMR飼料

5.おわりに

 飼料価格は穀物相場の急激な下落に伴い中期的には緩やかに低下するとみられ、生産者にとっては一安心というところであるが、コスト面で優位とみられたエコフィード利用の推進にとっては逆風にとなる可能性もある。しかし、昨年12月からトウモロコシシカゴ相場は上昇に転じている。また、農林水産省が公表した世界の食料需給見通しにおいても穀物価格は緩やかな上昇が予測されている。このことからも、エコフィードを含む一定の自給飼料基盤の確保は重要と考えられる。今回訪問した熊本県のほかにもエコフードの利用促進に向けたさまざまな取り組みが進められている。このような取り組みで、今後も飼料コストの削減はもとより食品リサイクルの促進、自給率の向上の観点からも、エコフィード利用の推進を期待したい。

参考文献
農林水産省統計情報部:平成19年食品循環資源の再生利用等実態調査結果の概要
高島 宏子:飼料価格高騰下での食品残さ飼料利用への動き「畜産の情報」国内編 平成20年1月号 独立行政法人農畜産業振興機構
社団法人熊本県畜産協会ホームページ:http://kumamoto.lin.go.jp/i-menu.html

 


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