需給動向 海外

◆米 国◆

食肉パッカーの収益性悪化により牛と畜頭数は減少傾向


◇絵でみる需給動向◇


と畜頭数は前年同期比4.4減

 米国農務省全国統計局(USDA/NASS)によると、2009年1〜8月の牛と畜頭数は前年同期比4.4%減の2228万1千頭と減少した。これは、牛肉価格が弱含み傾向にある中、食肉パッカーが収益性改善を図るため、供給を絞ることによって、価格の下げ止まり効果を狙っていることによるものと考えられる。また、食肉パッカーの購買意欲が減退していることなどから、生産者出荷頭数も前年同期比4.8%減の1289万頭と減少している。2008年より米国の牛飼養頭数は減少傾向で推移しているが、USDA/NASS公表の飼養動向調査「Cattle」によると、2009年7月1日現在の牛の飼養頭数は前年比1.5%減であるのに対し、本年1〜8月累計のと畜頭数の前年同期比は4.4%減と減少率が大きい。

図1 牛と畜頭数の推移

1頭当たりの枝肉重量は前年同月を上回る

 これに対し、2009年8月の1頭当たりの枝肉重量は前年同月比0.8%増の358キログラムと前年同月を上回って推移している。これは、出荷時期を迎えた肥育牛が出荷を先送りにされ、通常より長く肥育されているため、出荷体重が増加傾向にあるためと予想される。

図2 1頭当たりの枝肉重量の推移

価格回復を見込み、フィードロットへの導入時期を先送り

 USDAによると、2009年第2四半期の全米のフィードロット(収容能力1000頭以上規模)への導入頭数は、前年同期比6.6%減の462万9千頭と1996年の442万頭から2番目に低い数値を記録した。一方、同年7〜8月の導入頭数は第2四半期に導入が半減した反動もあり、前年同期比6.9%増の397万3千頭と前年を上回って推移した。導入減少の要因として、牧草の生育状態が良好なため通常より長い期間牧草地に放牧していたことに加え、価格の回復が見込まれる年末から来年の出荷を見込んで、フィードロットへ肥育素牛の導入時期を先送りさせたことが考えられる。

 フィードロットへの導入の先送り傾向が見られる一方で、体重の軽い肥育素牛の導入が増加傾向にある。これは、以前から懸念されていたテキサス州中南部における継続的な干ばつの影響が出ているとみられており、十分に牧草を給与されていない素牛がフィードロットに導入されていると推測される。

図3 フィードロット導入頭数の推移

肥育牛価格は回復の見込み

 USDA/ERSでは、飼養頭数が縮小していることから、2008年第4四半期より前年を下回っている肥育牛価格が、2010年第1四半期から前年同期を上回ると予測している。しかし、この肥育牛出荷の先送りが年明け以降の供給増加につながる可能性もあり、肥育牛価格について、今後の動向が注目される。


元のページに戻る