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欧州委、酪農危機に対する短期および中・長期的対策を提案


各国で広がる生乳出荷拒否ストライキ

 EUの主要酪農国では、世界的不況の影響により乳製品価格が急落したことから、生乳生産者価格が生産費を下回る水準まで引き下げられており、生産者を取り巻く情勢は依然厳しい状況が続いている。このような中、生産者価格の値上げを求めるデモが行われていたが、9月16日には、European Milk Boardを中心に、フランス、ベルギー、ドイツ、オランダなどで40,000人以上の酪農家による大規模な生乳出荷拒否ストライキが行われた。

 欧州委員会では、乳製品市場の低迷を受けて、すでにバター、脱脂粉乳の介入買い入れおよびその実施期間の延長や輸出補助金の交付再開といった対策を講じている。しかしながら、7月13日の欧州理事会でさらなる対応を検討すべきとの意見があったことを受けて、同委員会は9月17日に開催された欧州議会において、酪農家に対する短期的および中・長期的な支援対策の詳細について提案した。

期的な対策

 同委員会は、短期的な対策として、危機状況下での「緊急対策」として各加盟国が交付する補助金の上限を酪農家一戸当たり7,500ユーロ(約100万円:1ユーロ=133円)から1万5千ユーロ(約200万円)への引き上げや、加盟国によるクオータ買い取り計画を提案した。

 加盟国によるクオータ買い取りについては、酪農家の所有するクオータを各加盟国が買い取り、生産から切り離すことにより実質的は生乳生産の抑制効果を促すものである。また、クオータを超過した場合の各加盟国から徴収した課徴金のうち、買い取りクオータに相当する部分は、酪農問題関係の予算に充てることができるとしている。

 域内価格が乱高下した場合の緊急対策は通常、共通市場制度(Common Market Organization:CMO)に関する理事会規則(EC1234/2007)第186条により対応するが、現行規定では乳製品はその対象とはなっていないことから、将来的には乳製品にも適用することとし、同委員会の権限で迅速に当該措置を講ずることができるようにする方針である。

中・長期的な対策

 また、同委員会では、短期的な対策のほか、中・長期的対策として、委員会や各加盟国の専門家による作業グループを設置し、

・公正な競争を確保しつつ、酪農市場のよりさらなる安定を図るため、酪農家と乳業会社間の契約関係についての法的枠組みを構築する可能性

・同委員会が年内までに報告することとなっている酪農部門の供給チェーンに関する作業の完了

・生産費削減や技術革新といった前向きの取り組みを、EUの酪農部門にどのように普及していくか

などについて検討することを提案している。

最近の乳製品価格は上がり基調


 同委員会は今回、提案の公表と併せて、最近の乳製品価格に改善が見られ、上昇基調にあると報告している。同委員会によると、この1カ月で、バターはフランスで4%、ドイツで8%上昇するとともに、EU平均価格で見ると、脱脂粉乳は2〜3%上昇、チーズは輸出補助金の規則を改正した今年8月以来、5〜7%上昇、また、生乳も8月には2%上昇したとしている。

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