輸出ブランド

鹿児島黒豚、 ついにシンガポール市場へ



  平成25年までに輸出額を1兆円規模に拡大するという目標の下、官民挙げての総合的な輸出戦略が推進されています。こうした中、各地の畜産物輸出ブランドについて、随時、本稿で紹介していきます。

 今月は、豚肉について、シンガポール市場への輸出が認められた国内唯一の処理施設、鹿児島県の南九州畜産興業株式会社の「黒豚」輸出について紹介します。

国内唯一の対星豚肉輸出可能施設

 シンガポール政府は、これまで日本からの豚肉輸入を認めていなかったが、本年5月14日、南九州畜産興業株式会社(ナンチク)を同国への輸出可能施設として認定した。同社は国内で唯一のシンガポール向け冷凍豚肉の輸出施設となり、豚肉以外にも牛肉の輸出可能施設として国内のほかの2施設とともに認定された。平成16年、現地で日本食レストランを経営する業者から黒豚の要望があり、それに応えるため同国政府へ豚肉の輸出許可を申請したことが輸出のきっかけとされる。シンガポールは政府などによる黒豚の定義は無いが、食に関心の高い国民の一部には、通常の豚肉とは異なる「Kurobuta Pork」として認識はされている。同社はシンガポールへの輸出解禁を受け、本年6月15日に鹿児島黒牛・鹿児島黒豚の出荷を開始した。

シンガポール向け輸出用黒豚の段ボール

厳選された黒豚をシンガポールへ輸出

 輸出向けの黒豚は、国内向け黒豚とともに県内の直営農場(株式会社吉松ファーム)で生産・肥育されている。同ファームでは、健康で安全な豚を生産するため、飼料に「黒酢もろみ・にんにく・納豆菌」を混ぜて与え、豚本来の活力を向上させる管理を行っている。さらに、シンガポール向けについては、同ファームの熟練した管理者により豚の体型・毛並み・体重などを基に、選抜が繰り返された最高の黒豚をナンチクに出荷している。また、ナンチクでは、と畜後において再度厳正な肉質チェック(肉の締まり具合、ロース芯の大きさ、筋間脂肪の状態など)を行い、合格した最高品質の黒豚のみをシンガポールへ輸出している。

吉松ファームで飼育されている黒豚(生後60日齢)

マレーシアなどへの輸出も視野に

 これまでの輸出実績は、7月40頭、9月50頭、10月30頭分であり、フルセットで出荷される。また、販売は、輸出に取り組むきっかけとなっ た現地の業者を通して行われている。同社の豚 肉処理能力は1月当たり3万頭であることから、生産量に対するシンガポール向け輸出割合は高いものではない。しかし、新たにシンガポールへの輸出を検討している日本国内の業者からの問い合わせもあり、さらなる輸出量の増加を目指していきたいと考えている。具体的には、シンガポールへの販売を増やすとともに、マレーシアなど同国以外への輸出も視野にリサーチを続けたいとしている。

  協力:南九州畜産興業株式会社


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