需給動向 海外

◆米 国◆

2009年の米国の牛肉輸出は一時的に減少の見込み


◇絵でみる需給動向◇


2009年の牛肉輸出量は減少するが、2010年には回復する見込み

 米国農務省(USDA)が8月19日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2009年の米国牛肉の輸出量(枝肉重量ベース)は、世界的な景気後退の影響を受けて前年比8.9%減の約77万1千トンと見込まれている。また、2010年の牛肉輸出量は、供給量の減少に伴う価格の上昇により、輸出競争力は弱まると見込まれるものの、BSEの発生によりいったん落ち込んだ米国産牛肉に対する国際的な需要は回復傾向に向かうと考えられることから、前年比7.3%増の81万6千トンと予測されている。

図1 牛肉輸出量

2009年上半期の牛肉輸出量は前年同期をわずかに上回る

 USDAによると、2009年上半期の米国の牛肉輸出量は前年同期を2.9%上回る38万8千トンとなった。相手国別に見ると、最大の輸出先であるメキシコ向けは前年同期を15.6%下回る12万5千トン、2位のカナダ向けは12.0%下回る7万9千トンとなり、世界的な景気後退の影響を受けて大幅に落ち込んだ。他方、昨年6月に輸入が再開された韓国向けについては、昨年上半期はほとんど輸出実績が無かったため、本年上半期は前年同期を大幅に上回る2万8千トンとなった。一方、日本向けについては、円に対するドル安傾向を背景に、前年同期を12.6%上回る5万5千トンとなった。このように、2009年上半期の輸出量は、景気後退の影響を受けつつも、一部の国の牛肉輸入再開やドル安傾向などによる輸出増加によって、かろうじて前年を上回ったといえる。

図2 国別牛肉輸出量の推移

韓国向けは昨年6月に輸入再開したものの低調

 昨年6月に輸入再開された韓国向けについては、昨年9月に2万トンを超える輸出量を記録したが、それ以降は減少傾向で推移している。本年6月には4千トン程度まで落ち込んでおり、期待されていた程の輸出量の伸びは認められない。輸出が伸び悩んでいる要因としては、韓国内の景気減退に伴う外食需要の低迷、米ドルに対する韓国ウォン安などが挙げられる。このほかに、韓国ウォンは米国ドルと比べ豪州ドルに対して為替レートが安定しており、米国産牛肉の競合相手である豪州産牛肉の方が輸入に有利であることも要因として考えられる。また、韓国における米国産牛肉の在庫が増加傾向にあることなどから、米国産牛肉に対する否定的なイメージがいまだに韓国の消費者に残っていることも推測される。

図3 米国産牛肉の韓国向け輸出量の推移

EU向け輸出拡大に期待

 米EU間のホルモンを投与された肉牛から生産された牛肉の貿易をめぐる紛争に関し、2009年5月に暫定合意が結ばれた。この中で、EUは米国とカナダに対し、「高級牛肉」に関する無税の関税割当(当初の3カ年:2万トン、4年目:4万5千トン)を新設したところである。このため、米国の牛肉関係者の間では、今回の関税割当を他の市場と比べ高値で取り引きできる高級市場への参入チャンスとして捉え、今後EU域内において新たな市場が開拓できるのではないかと、期待が高まっている。

 なお、これに関係するEUの理事会規則および委員会規則は2009年7月13日付で公布され、8月1日付で施行され、関税割当年度は、毎年7月1日から翌年の6月30日までとされている。


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