需給動向 海外

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EU27の09年の豚枝肉生産量は前年比2.2%減の見込み


◇絵でみる需給動向◇


飼養頭数の減少が続いていたポーランドでは下げ止まりの兆しも

 欧州の調査機関であるGIRA社の分析によれば、09年のEU域内における豚枝肉生産量は、07年から1.6%減少した08年からさらに2.2%減の21.9百万トンと見込まれている。これは、07年から顕著となった飼料、燃料などの生産資材の高騰と08年後半以降の経済危機による消費の冷え込みにより、域内の養豚経営が打撃を受け、飼養頭数が減少した結果であるが、その影響は加盟国一様ではなく、特に04年以降にEUに加盟した新規加盟国(以下「EU12」とする。)でより深刻な見通しとなっている。

 表1は、EU27における豚肉の生産量および域内消費量の推移を示したものであるが、EU15では、09年の生産量は前年比1.3%減の18.6百万トンと見込まれているに対し、EU12における09年の生産量は同7.2%減の3.4百万トンとより大きな減少率が見込まれている。

表1 EU27における豚肉の生産量および域内消費量の推移

 EU12の中で最大の豚肉生産国であるポーランドでも、09年の豚枝肉生産量は同5.5%減の1.8百万トンと大きな減少が見込まれている。しかしながら、GIRAは、ポーランドの生産は09年後半に再び上昇に転じると見込んでいる。これは、09年4月時点の飼養頭数調査で繁殖母豚の飼養頭数が安定化傾向を示していることや(表2)、国外から積極的に子豚を導入していることを総合的に判断しているものであり、飼養頭数の大幅な減少が続いていたポーランド養豚が回復基調に転じつつあることは注目される。
表2 ポーランドにおける豚飼養頭数の推移

EU27の09年の域内消費量は前年比1.8%減の見込み

 08年後半からの経済危機による豚肉需要の冷え込みを背景に、EU27の09年における域内消費量は前年比1.8%減の20.5百万トンと見込まれている(表1)。前述のようにEU27の豚肉生産量減少が見込まれるものの、域内消費量も同時に減少すると見込まれていることから、09年における豚肉生産量から域内消費量を除いた域外輸出が可能な豚肉は枝肉換算で1.4百万トンとなり、過去2年とほぼ同水準となっている。

 一方、08年においてEU産豚肉の最大の輸出先であったロシアは、経済危機による需要の冷え込みと通貨(ルーブル)の為替レートの下落による購買力の低下により、貿易環境が悪化しているほか、国際市場においてはカナダ、米国、ブラジルなどの主要な豚肉輸出国との競争が激化しているもようである。このため、EUの輸出業者は、従来の顧客をつなぎとめるために薄利となっても取引に応じざるを得ない環境下にあると伝えられている。

  注: 09年前半におけるルーブルの対ユーロの為替レートは、06年平均と比較し約2割下落。

 実際、英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)の資料によれば、09年上期のEU産豚肉の域外輸出量は、輸出補助金が措置され好調であった08年上期と比較すると25%減となっていることを示している(図1)。これは、主要輸出先であるロシアおよび中国との取引が08年上期と比較し大きく減少していることが影響しているものであるが、我が国や韓国向けの輸出も2割程度減少しており、豚肉需要の冷え込みが世界規模で生じていることがうかがえる。

図1 EU産豚肉の域外輸出量の推移

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