需給動向 海外

◆米 国◆

生産者団体、政府、生乳需給改善への追加対策を決定


◇絵でみる需給動向◇


生乳生産量は減少に転じたものの、乳製品在庫は依然として増加傾向

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2009年6月の生乳生産量は前年同月を0.2%下回る721万8千トンとなった。生乳生産量が前年同月比マイナスに転じたのは4カ月ぶりであり、本年4月より生乳生産者団体が行ってきた乳用牛とう汰(後述)の効果がようやく見え始めてきたといえる。

 しかしながら、2009年7月1日現在における乳用後継牛頭数を見ると、390万頭と前年並みであったことから、今後の生乳生産動向については、1頭当たり乳量の伸びを加味すれば、再び増加に転じる可能性もある。

 一方、2009年6月の乳製品民間在庫については、バターが前年同月を3.1%上回る12万791トン、脱脂粉乳が同40.9%上回る8万8090トンとなっており、依然として在庫の減少傾向は認められない状況にある。

乳用後継牛頭数と1頭当たり乳量の推移

生産者団体は本年2回目となる乳用牛とう汰事業を実施

 このような中、米国の生乳生産者団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)は、7月10日、生乳需給の引き締めを図るため、本年2回目(通算第8回目)となる酪農協共同基金(Cooperative Working Together :CWT)を通じた乳用牛とう汰事業を行うことを発表した。事業募集の結果、募集締め切りが7月24日までと短期間であったにもかかわらず、294戸の酪農家が事業対象として暫定的に認定され、乳用牛8万6710頭、生乳生産量約18億ポンド(約81万6千トン)が削除されることとなった。これは、事業規模としては過去2番目の大きさである。

 CWTを活用した乳用牛とう汰事業は、本年4月から7月にかけて過去最大となる通算第7回目の事業が実施されたところである。従って、第7回目、8回目のとう汰事業を合わせると、生産者団体は今年に入ってから、乳用牛18万7750頭、生乳生産量約38億ポンド(約170万6千トン)を市場から取り除くことになる。

 なお、NMPFのコザック会長は「乳価に悪影響を与えている生乳需給バランスの改善を図るため、本年後半においてもCWTを実施できるよう準備している」と発言し、乳価の動向いかんでは、今後追加的な乳牛とう汰を実施する可能性があることを示唆している。

米国農務省は輸出補助金の継続、乳製品買い上げ価格の引き上げを決定

 USDAも、乳価低迷に苦しむ酪農経営の現状にかんがみ、7月に入り生乳需給対策を次々と発表した。1つ目の対策は、次年度以降の乳製品輸出奨励事業(DEIP)の継続である。USDAは7月6日、乳製品への輸出補助金を2009年7月から2010年6月の事業年度においても継続することを発表した。DEIPについては、本年5月、EUの輸出補助金への対抗措置として約5年ぶりに再開されたが、事業期間が本年6月までとなっていたことから、同事業の7月以降の継続について、NMPFからUSDAに対して要請がなされていたところである。前回のDEIPについては、脱脂粉乳20,025トン、バター1,862トン、チーズ152トンの契約が成立している。

 もう1つの対策は、政府の乳製品の買入価格の引き上げである。USDAは7月31日、酪農家の緊急的な支援対策として、現行の乳製品価格支持制度(Dairy Product Price Support Program :DPPSP注)を通じて行っている商品金融公社(CCC)の乳製品買入価格を引き上げると発表した。政府は、今回の引き上げが最終的には生産者乳価の引き上げにつながり、酪農家全体で2億4千3百万ドルの収入増の効果をもたらすと試算している。

 具体的な買入価格については、脱脂粉乳についてポンド当たり0.8ドルを0.92ドルへ、チェダーチーズ(ブロック)について同1.13ドルを1.31ドルへ、チェダーチーズ(バレル)について同1.10ドルを1.28ドルへ引き上げる内容となっており、同価格による買入対象期間は8月1日から10月31日までの3カ月間としている。

 なお、本年1月〜7月までで、CCCは脱脂粉乳73,644トン、バター2,104トンを買い入れているが、今回の買入価格の引き上げにより、追加的に、脱脂粉乳68,000トン、チーズ34,000トンの買い入れが可能になると試算している。

  注: 乳製品価格支持制度(DPPSP)は、政府(商品金融公社)が脱脂粉乳、
     バター、チェダーチーズの買い入れを通じて、加工原料乳価格を間接的に
     支持水準以上に維持する仕組みである。2008年農業法において、加工原
     料乳の支持価格を廃止して主要乳製品の支持価格を直接定める制度に
     変更された。

2008/2009DEIPの入札結果および
2009/2010DEIPの募集数量
CCの買入実績(2009年1月〜7月)

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