需給動向 海外

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EUの子豚市場は堅調に推移


◇絵でみる需給動向◇


09年のEUにおける子豚平均取引価格は例年になく高値で推移

 EU域内の子豚(離乳豚)の取引価格は通常、春先のピークから低下傾向で推移し、秋口に再び上昇基調に転ずるという季節変動を繰り返すが、昨年来のEU域内における豚飼養頭数減少に伴う子豚の供給の不足を受け、09年の子豚平均取引価格は例年になく高値で推移している状況にある(図1)。

 イギリスの農業・園芸開発委員会(AHDB)によると、この堅調な子豚相場の要因として、前述のように子豚の供給量自体が減少していることに加え、09年の豚枝肉卸売価格は好調であった08年には及ばないものの、購入飼料価格が08年と比較し大幅に低下しているため、肥育農家が子豚の購入により多くの資金を充てることが可能になっていることを挙げている。

図1 EUにおける子豚平均取引価格の推移

デンマーク産子豚の国外への輸出は一貫して増加

 EUの主要な豚肉輸出国であるデンマークでは、子豚の輸出頭数の増加が顕著となっている。図2は、07年以降のデンマーク産子豚の輸出頭数の推移を示したものであるが、輸出頭数が増加の一途をたどり、09年第1四半期だけで160万頭を超える子豚が国外に輸出されていることがわかる。デンマークの家畜排せつ物に関する厳格な規則が、同国内での肥育コストを引き上げているため、自国内で肥育するよりもドイツに子豚を輸出して肥育するほうが低コストで豚肉を生産できることに加え、子豚の取引価格もドイツが相対的に有利注であるため、デンマークからドイツへの離乳豚の輸出が増加している。

 なお、デンマーク国内から相当数の離乳豚が国外に輸出され、国内にとどまる肥育豚が減少していることは、デンマーク統計局が取りまとめた用途別の豚飼養頭数の推移からも確認することができる(表)。

 既報(畜産の情報「2009年8月号」)のとおり、世界的な豚肉需要の冷え込みを背景として、09年第1四半期のデンマークの豚肉輸出量が前年と比較して減少していることから、デンマーク国内でと畜される肥育豚の減少が直ちに同国産豚肉の需給に影響することはないとみられる。しかしながら、デンマークの豚生体市場がこれまで以上に隣国ドイツと密接に関係してきていることが将来のデンマーク産豚肉の需給に何らかの影響を与える可能性も否定できないことから、今後の動向を注視する必要があろう。

  注: 欧州委員会が公表している09年6月時点のデンマークおよびドイツにおける
     子豚1頭あたりの平均取引価格はそれぞれ、
     41.61ユーロ(5,659円:1ユーロ=136円)、59.10ユーロ(同8,038円)。

図2 デンマーク産離乳豚の輸出頭数の推移
表 デンマークの豚飼養頭数の推移

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