国内トピックス

牛乳が日本を元気にする。
〜MILK JAPAN(ミルクジャパン)運動スタート〜


1.「牛乳に相談だ。」キャンペーン

 牛乳は、戦後におけるわが国の食生活を支えてきた代表的な食品です。食の洋風化や学校給食の普及などを背景に、高度経済成長期以降、牛乳の消費は飛躍的に増加してきました。しかしながら、順調に消費が伸びてきた牛乳ですが、少子高齢化や食の多様化、加えて他飲料の競合などにより、平成6年を境に減少の一途をたどるようになり、ピーク時に比べて約100万キロリットルも消費量が減少しています。

 こうしたことを踏まえ、平成17年度から5年間の計画で、全国の酪農家からの拠出金を財源に、生産者組織として独自に、牛乳消費拡大活動「牛乳に相談だ。」キャンペーンに取り組むことにしました。

 本キャンペーンでは、当初、中長期的な牛乳消費維持・拡大の観点から、特に減少傾向が顕著であった中高生をメインターゲットに設定しました。さらに、4年目以降は、牛乳小売価格値上げに伴い、中高生に加え、実購買者である主婦層に対して牛乳の価値をアピールするなどの拡充・強化を図ってきました。この結果、ターゲットの中高生はもとより国民各層の認知度は高まり、青地に白い文字のロゴマークとサウンドロゴは、知らない人はいないほどの有名なキャンペーンとなりました。

 しかしながら、この5年間においても、牛乳消費の減少に歯止めがかからず、キャンペーンの認知浸透と牛乳に対する好意形成を、実際の飲用促進につなげることはできず、消費者に「伝える」ことには成功したが、「動かす(牛乳飲用を実際に促進する)」ことはできなかったと評価せざるを得ませんでした。

2.「伝える」から「動かす」ための新たな運動「MILK JAPAN」

(1)基本戦略とその背景

 景気の低迷、少子高齢化、競合飲料商品の多様化など、直近の牛乳消費をめぐる情勢は厳しいものがありますが、牛乳市場は、日本酪農にとって、最も重要なマーケットです。

 このため、牛乳消費の安定的な維持・拡大を目指した活動を粘り強く続けることが不可欠であることから、牛乳消費の急激なマイナストレンドの解消を目的に、「伝える」から「動かす」ために、次期戦略として、22年10月より3年間の計画で、新たに「MILK JAPAN」をスタートさせることになりました。

 この「MILK JAPAN」の基本戦略は、次の3点です。ひとつは、キャンペーンの主要なターゲットを育ち盛りのお子さんをもつ若いお母さんとしたことです。2つ目に、マーケティング戦略として、直接飲用はもちろんそれ以外の利用機会の拡大を図ることとし、3つ目は、コミュニケーション戦略として、体験共有を位置付けました。

 特に、コミュニケーション展開として、若いお母さんの牛乳に対する価値意識と行動変化を促すため、酪農に触れる機会を設けて、さまざまな体験を生み出すことを最も重要視しました。加えて、その場に、酪農家が一緒になって参加することで、生産現場の現状や思いを伝え、消費者と酪農家が一体になった運動を目指しています。

(2)具体的な取り組み内容

 スタートにあたり、10日から17日にかけて全国9か所でのキックオフイベント、9〜11日に全国約250牧場で開催されたオープンファームデイを皮切りに、様々な施策を一斉にスタートさせました。

 具体的には、親子で楽しめる絵本「みんなのミルクジャパン」の製作・配布、早朝TV子ども番組「ミルクチャポン」の放映(関東地区TBS)、若い母親層の情報収集・情報交換の場として活用されているケータイサイトでの「milkjapan.net」展開、全国の牧場やイベント会場での酪農体験、スーパーなどの小売店頭でのPOP掲出や牛乳レシピ紹介などに取り組んでいます。

 これらの各種施策により「新しい牛乳体験」を提供し、お母さんと子ども達、お母さんとお母さん、そして、酪農家と消費者のコミュニケーションを強め、豊かな結びつきや絆を創り出していきます。

 この運動は、「牛乳が日本を元気にする。」をスローガンに、牛乳を通じて、子どもが元気に、母親が元気に、そして地域を、日本を元気にしていく、酪農家と母親による草の根運動として位置付けています。

 本キャンペーンは、スタートしたばかりですが、近年の急激な消費減退を食い止めることが求められているため、全国の指定団体や酪農家の方々とともに「MILK JAPAN」運動に積極的に取り組んでいきたいと思っています。

執筆者

中島靖勝(なかしま やすかつ)

社団法人 中央酪農会議 酪農理解促進室長
昭和57年 九州大学経済学部卒業
昭和57年 全国農業協同組合連合会(全農)入会
平成20年 全農酪農部総合課長
平成22年 社団法人 中央酪農会議

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