需給動向 海外

◆米 国◆

急騰する肥育牛価格


◇絵でみる需給動向◇


1月以降大幅な値上がり

 米国農務省(USDA)が4月22日に公表した「Cold Storage」によると、3月末の牛肉在庫量は前年同月比8.3%減の17万7千トン(製品重量ベース)と、昨年8月以降8カ月連続で前年を下回った。これは、輸入量(枝肉重量ベース)が、昨年11月から2月まで前年同月比30.6%〜16.5%減と前年を大幅に下回る一方、輸出量は同19.4%〜28.9%増と大幅に上回って推移したことに加え、牛肉生産量は、1月が前年同月比1.6%減の94万5千トン、2月は同1.5%減の88万7千トン、3月も1頭当たりの枝肉重量の減少により同3.1%増の100万3千トンにとどまるなど、需給がタイトになったことを反映している。

 このような供給減から、肥育牛価格(チョイス級、1,100〜1,300ポンド、ネブラスカ)は、1月以降大幅な伸びを示しており、1月の100ポンド当たり83.5ドル(キログラム当たり約175円:1ドル=95円)から3月は前年同月比13.8%高の同92.9ドル(同約195円)と急騰した。

 また、卸売価格(チョイス級、600〜900ポンド、カットアウトバリュー)も急騰しており、3月は100ポンド当たり155.7ドル(キログラム当たり約326円)と前年同月を14.6%上回った。

図1 牛肉卸売価格と在庫量の推移
資料:USDA「Cold Storage」,「Livestock, Dairy, and Poultry
Outlook」

供給量は引き続き減少の見込み

 USDAによると、3月のフィードロット(収容能力1,000頭以上規模)への導入頭数は、前年同月比3.1%増の185万7千頭となった。体重別に見ると、体重の軽い素牛の導入が大幅に増加し、1頭当たり600ポンド未満は前年同月比29.5%増の39万5千頭、600ポンド以上層は同2.7%減の146万2千頭となった。また、フィードロットからの出荷頭数は前年同月比4.3%増の190万2千頭となり、昨年11月から5カ月連続で増加している。

 この結果、4月1日現在のフィードロット飼養頭数は、3月の導入頭数が前年を上回ったものの、出荷頭数が増加していることから前年同月比3.5%減の1076万9千頭となった。

 また、肥育農家は肥育牛価格が高騰していることから肥育牛の前倒し出荷を進めており、これにより枝肉重量の軽い牛が増加し、肥育期間が短くなるため格付け等級の低い牛肉が増えると懸念される。

 このような状況を反映し、フィードロットへの導入頭数については、短期的には体重の軽い素牛の増加が見込まれる一方、長期的には、牛群再構築のため未経産牛が後継牛として保留される結果、減少することも予想される。 

  なお、USDAは、2010年の牛肉生産量は前年比0.8%減の1167万8千トンと予測している。

図2 体重別フィードロット導入頭数の推移
資料:USDA/NASS「Cattle on Feed」

肥育素牛価格も高騰

 肥育牛価格高騰の影響を受け、肥育素牛(ミディアム、600〜650ポンド、オクラホマシティ市場)の価格も2010年1月以降前年を上回って推移し、3月は前年同月比10.4%高の100ポンド当たり114ドル(キログラム当たり約239円)と大幅に上昇した。また、飼料価格は前年を下回って推移しているものの、肥育素牛価格の上昇により、肥育農家のコスト圧迫が懸念される。

 繁殖肉牛農家はこれまで、2007年の干ばつや、2008年の飼料穀物価格・エネルギー価格の高騰を受けた生産コストの増加、世界経済の低迷による需要減退などにより、経営の縮小を余儀なくされてきたが、今回は久方ぶりに肥育素牛価格上昇の恩恵を享受している。この傾向が続く場合、繁殖用雌牛の保留が増加し、減少局面にあるキャトルサイクルは、数年後には底を打つものと思われ、牛肉産業の縮小に歯止めが掛かると期待される。

図3 肥育素牛と肥育牛価格の推移
資料:USDA「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」



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