需給解説

加工乳・乳飲料等の生産実態調査の結果について

酪農乳業部

 当機構では、加工乳・乳飲料等の生産実態を把握するために、「加工乳・乳飲料等の生産実態調査」を毎年度実施している。21年度は株式会社インテージリサーチに委託し、20年度の生産実態を調査したので、この結果の概要を紹介する。本調査は加工乳・乳飲料等を生産している全国145社を対象とし、「加工乳」「乳飲料」「はっ酵乳」「生クリーム等(「クリーム」及び「乳等を主要原料とする食品」をいう。)」の4品目について、アイテムごとの成分、生産量などに関し、郵送と電子媒体を併用して調査を行ったものである。

平成20年度の調査概況

 平成20年度の加工乳・乳飲料等の生産量は、大手3社では、加工乳の微増、乳飲料の減少となっている。

 大手3社では、加工乳低脂肪タイプが増加、濃厚タイプが減少、乳飲料のすべてのタイプで減少となっている。農協プラント系(以下、「農プラ系」という。)では、加工乳、乳飲料とも減少しているが、特に加工乳の減少幅が大きい。中小系では、加工乳、乳飲料とも減少している。

 はっ酵乳の生産量は、ハードタイプの増加が顕著である。他のプレーン、ドリンク、フローズンタイプは減少しているが、全体の生産量としては増加となっている。

 生クリーム等の生産量は、前年度に比べ、乳脂肪率18%未満の製品は、増加している。

1.生産シェア

(1)加工乳・乳飲料

 加工乳では、中小系が53.1%とシェアの過半数を占めている。色物乳飲料と白物乳飲料では大手3社のシェアが高く、特に白物乳飲料では大きくシェアを伸ばしている(図1)。

図1 加工乳・乳飲料の生産シェア(平成20年度)

(2)はっ酵乳

 はっ酵乳注3全体の生産シェアは乳業系が83.4%で、前年度から0.5ポイント低下している。「フローズン等」タイプでは、乳業系と非乳業系が逆転した。乳業系が93.2%と大半を占めているが、これはもともとの生産量が少ない中、乳業系は前年度並みとなった一方で、非乳業系の生産量が1,025klから23klへと減少したためである(図2)。

図2 はっ酵乳の生産シェア(平成20年度)

(3)生クリーム等

 生クリーム等全体の生産比率では、乳業系が7.8ポイント低下したものの、75.9%を占めている。乳脂肪率18%以上の製品では、前年度と比べ大きな変化は見られないが、18%未満の製品では非乳業系の生産シェアが若干回復し、61.7%で10.4ポイント上昇している(図3)。

図3 生クリーム等の生産シェア(平成20年度)

2.成分

(1)加工乳

 「低脂肪」タイプの平均は、乳脂肪率0.9%、無脂乳固形分率9.2%、「濃厚」タイプの平均は、乳脂肪率4.1%、無脂乳固形分率8.9%である。「その他」(「低脂肪」「濃厚」タイプ以外のもの)の平均は、乳脂肪率3.2%、無脂乳固形分率8.6%である。なお大手3社は「その他」の生産がなかった(図4)。

図4 加工乳の成分(平成20年度)

(2)乳飲料

 前年同様「色物乳飲料」より「白物乳飲料」の方が、乳脂肪率、無脂乳固形分率ともに高い傾向が見られる。「色物乳飲料」の乳脂肪率は平均で1.1%、「白物乳飲料」では1.5%、無脂乳固形分率は「色物乳飲料」が平均で4.1%に対し「白物乳飲料」は8.6%となっている。

 企業区分別に加工乳との比較をすると、大手3社の「加工乳(平均)」の乳脂肪率は「白物乳飲料」と比べて非常に高くなっている(図5)。

図5 白物乳飲料と加工乳(平均)の成分(平成20年度)

3.乳脂肪率ごとの生産量

(1)加工乳

 乳脂肪率ごとに生産量を見ると、前年度より低下したものの、「低脂肪」タイプの製品が全体の67.8%を占めている。企業区分別に見ると、全体的には前年度同様に、農プラ系、中小系では「低脂肪」タイプの製品が多く、大手3社では、「濃厚」タイプが多い傾向が続いているが、大手3社の「低脂肪」または中小系の「濃厚」タイプが増加傾向を示している。農プラ系では「低脂肪」「濃厚」とも減少した(図6)。

図6 乳脂肪率ごとの生産量(加工乳)

 原材料使用割合の推移を見ると、前年度までは生乳の使用割合の減少傾向が続いていたが、20年度は1.3ポイント上昇し、26.5%となっている(図7)。

図7 原材料使用割合の推移(加工乳)

 加工乳の生産量は、全体的には減少傾向にあり、今後も減少するとの見方が多かった。

(2)乳飲料

 乳飲料全体では、乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が全体の45.7%を占め主力となっている。同区分の製品は「色物乳飲料」では、全体の53.9%を占めている。

 「白物乳飲料」では乳脂肪率0.5〜1.0%が全体の生産量の32.1%を占めている。

 企業区分別に見ると、「白物乳飲料」全体で、大手3社では、乳脂肪率1.5〜2.0%、農プラ系及び中小系では、乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が主力となっている(図8)。

図8 乳脂肪率ごとの生産量(白物乳飲料)

 「白物乳飲料」の原材料使用割合の推移を見ると、前年度増加した生乳はまた2.7ポイント減少となった(図9)。

図9 原材料使用割合の推移(白物乳飲料)

 乳飲料の生産量は、大手3社、農プラ系、中小系で、「色物乳飲料」のコーヒータイプがそれぞれ64.7%、62.4%、63.2%を占めている。

(3)はっ酵乳

 乳脂肪率ごとの生産量では、乳脂肪率3.0〜3.5%の製品が全体の31.5%と最も多く、特に乳業系だけでは36.9%を占めている。タイプ別に見ると、ドリンクタイプの乳脂肪率は1.0%未満の製品が多く、ソフトタイプは0.5%未満、プレーンタイプは3.0〜3.5%に集中している(図10)。

図10 乳脂肪率ごとの生産量(はっ酵乳)

 はっ酵乳の生産量は、前年度比3.2%増加しているが、特にハードタイプの増加が30.1ポイント上昇している。

(4)生クリーム等

 乳脂肪率ごとの生産量を見ると、乳脂肪率18%以上では、42.0〜48.0%の割合が最も高く、48.6%を占めている(図11)。乳脂肪率18%未満では、0%の製品(植物油脂を使用した製品等)が44.7%を占めている。

図11 乳脂肪率ごとの生産量(生クリーム等)

注1 本調査で企業区分は次のとおりとする。大手3社は明治乳業、森永乳業、日本ミルクコミュニティをいう。農プラ系は、主に酪農生産者団体が出資する乳業会社、中小系は大手3社・農プラ系を除くその他の乳業会社をいう。

注2 乳飲料には大きく分けると、牛乳をベースとして牛乳の栄養分や風味をそのままにカルシウムや鉄、ビタミン、ミネラルなどの栄養分を強化した白い乳飲料「白物乳飲料」と、コーヒーや果汁などの入った色のついているもの「色物乳飲料」がある。本調査では風味にかかわらず、白いものを白物乳飲料、色のついているものを色物乳飲料に区分している。

注3 はっ酵乳の区分は次のとおりとする。「ハード」は寒天やゼラチン等で固形化したもの、「ソフト」は果肉等を加えた流動性のあるもの、「プレーン」は牛乳・乳製品をはっ酵させたもの、「ドリンク」はプレーンヨーグルトを液状化したもの、「フローズン等」はフローズンヨーグルトや上記以外のもの。

注4 本調査で、乳業系・非乳業系に区分する場合、乳業系は牛乳処理施設を持っている会社、非乳業系は牛乳処理施設を持っていない会社とする。


元のページに戻る