需給動向 海外

◆豪 州◆

2009/10年度の酪農家の収益は大幅な赤字が見込まれるものの、
生乳生産は回復基調


◇絵でみる需給動向◇


2月以降減産幅が縮小

 デイリー・オーストラリア(DA)によると、2010年3月の生乳生産量は前年同月比0.3%減の64万キロリットルとなり、また、2009/10年度(7月〜6月)の3月までについては、前年同期比5.8%減の715万キロリットルとなった。これは、豪州の生乳生産量の6割程度を占めるビクトリア(VIC)州において、2月以降生乳生産は回復基調にあり、3月は前年同月比0.8%増と14カ月ぶりに増産となったことが影響している。

図13 州別生乳生産量(7月〜3月)
資料:DA

酪農家の半数近くにおいて現金支出が収入を上回る見込み

 こうした中、豪州農業資源経済局(ABARE)は、2009/10年度の農業経営に関する調査「ファームサーベイ」を公表した。これによると、2009/10年度は酪農家の半数近くにおいて現金支出が収入を上回り、現金所得が赤字となる厳しい経営となる見込みである。

州により大きく異なる農家収益

 2008/09年度の酪農家1戸当たりの平均農家収益(=現金所得+流動資産の評価額の変化−減価償却費−家族労働費)は、国際乳製品価格の高騰に伴う乳価の大幅な上昇により過去最高の水準となった2007/08年度に比べ大幅に減少するも6,700豪ドル(約54万円:1豪ドル=81円)の黒字となった。しかし、2009/10年度については、一転して44,000豪ドル(約356万円)の赤字となる見込みである。ただし、州により生乳生産状況が大きく異なるため、収益性に違いが生じている。

 平均農家収益について、州別に見てみると、生産量が前年度に比べ増加しているクイーンズランド(QLD)州では、27,000豪ドル(約219万円)の黒字、ニューサウスウェールズ(NSW)州では9,000豪ドル (約73万円)程度の赤字にとどまると見込まれている。一方、生乳減産の著しいVIC州、タスマニア(TAS)州では、それぞれ72,000豪ドル(約583万円)、38,000豪ドル(約308万円)の赤字が見込まれている。

 この要因について、①2007/08年度、2008/09年度の設備投資(かんがい施設、搾乳施設やトラクターなど)による支払利息の増加、②加工用仕向けが主体である両州は、飲用向けの割合が比較的高いほかの州と比べ低乳価となること、③2009年初頭の低乳価に対応し乳牛飼養頭数を削減したこと、④生産コスト削減のため購入飼料の利用を減らした結果1頭当たり泌乳量が減少していること、⑤かんがい用水の利用可能量に制限があること、などが挙げられる。

表4 州別酪農家1戸当たりの経営状況の推移


 


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