需給動向 海外

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バター、脱脂粉乳、ホエイパウダーなどの卸売価格が4月、5月に急騰


◇絵でみる需給動向◇


域内乳製品市況は当面上昇基調で推移する見込み

 EUの乳製品卸売価格は、2009年末よりどの品目も低下基調で推移していたが、2010年3月より上昇に転じ、4月時点においては、バターでは100キログラム当たり307ユーロ程度(約38,682:1ユーロ=126円)、脱脂粉乳(食用)では同226.5ユーロ程度(約28,539円)、ホエイパウダーでは同73ユーロ程度(約9,198円)までそれぞれ急騰している。さらに、5月時点の速報値では、バターでは同360ユーロ(約45,360円、前月比17.3%高)、脱脂粉乳(食用)では同250ユーロ(約31,500、前月比10.4%高)、ホエイパウダーでは同75ユーロ(約9,450円、前月比3%高)と卸売価格上昇の勢いが収まる気配はない。急騰の背景として複数の当地関係者は、

  • 新興国を中心とした輸出市場の好況
  • 国際乳製品市場のひっ迫
  • 域内の生乳生産の伸び悩み
  • バター、脱脂粉乳の介入買入在庫の市場放出回避
といった要素を挙げている。

 介入買入在庫の市場への放出が具体化していない現時点においては、いずれの要素も当面変化がないと見込まれることから、域内乳製品市況は当面上昇基調で推移するとみられる。

図10 バターの卸売価格の推移
資料:農畜産業振興機構調べ
注1:オランダのバター卸売価格を指標とした。
2:2010年5月は暫定値。
図11 脱脂粉乳の卸売価格の推移
資料:農畜産業振興機構調べ
注1:ドイツの脱脂粉乳卸売価格(食用)を指標とした。
2:2010年5月は暫定値。
図12 ホエイパウダーの卸売価格の推移
資料:農畜産業振興機構調べ
注1:オランダのホエイパウダー卸売価格を指標とした。
2:2010年5月は暫定値。

2010年2月までの域内乳製品の生産量は飲用乳およびクリームを除き前年水準を下回る状況

 また、EU27における乳製品生産動向を見ると、2009年9月以降、単月の生乳生産量が前年同月を1〜2%程度下回る状況が続いていることもあり、2010年2月までの時点では飲用乳およびクリームを除く全ての品目で前年同月を下回った。チーズ生産に仕向けられる生乳が相対的に増加している影響でバターと脱脂粉乳において前年とのかい離が顕著となっており、これが最近の供給量のひっ迫の一因になっていると考えられる。

表3 EU27における乳製品の生産動向

関係者の関心はバターおよび脱脂粉乳の介入買入在庫放出に集まっているもよう

 このような中で、関係者の関心はバターおよび脱脂粉乳の介入買入在庫放出に集まっている。既報の通り、2010年5月1日より介入買入在庫の一部が生活困窮者への食料支援の枠組みで処理されることとなっているが、現在の域内市場との兼ね合いからその放出がずれ込むのではないかとの憶測が流れた。結局、当地乳製品貿易団体より、ずれ込むとしても域内市場動向とは一切関係ないとの見解が示されたが、このような憶測が流れることからみても、関係者の関心の高さをうかがい知ることができる。

 最近のバターおよび脱脂粉乳の価格高騰を受け、欧州委員会に対する残りの介入買入在庫(バター:約8万トン、脱脂粉乳:約26万トン)の放出への圧力が高まるとみられるが、欧州委員会側は昨年来、介入買入在庫の放出は市場に悪影響を及ぼさないよう慎重に対処すると繰り返し言及しており、今後の対応が注目される。

注:乳製品の介入買入在庫の一部を生活困窮者への食料支援制度で処理へ(EU)

http://lin.alic.go.jp/alic/week/2009/eu/eu20091111.htm


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