海外トピックス


豪州乳業最大手によるワーナンブール社買収をめぐる動き


買収を巡りMGCとWCBの対立が深まる

 ワーナンブール・チーズ&バター・ファクトリー社(以下、「WCB」という。)は4月3日、豪州乳業最大手のマレー・ゴールバン酪農協(以下、「MGC」という。)による買収を阻止する目的で、MGCの生産者乳価は業界の指標価格になるものとはほど遠く、また、2003/04年度(7月〜6月)以降におけるWCBの生産者乳価はMGCよりも高いなどとする旨の公開状を現地紙に掲載した。

 MGCによるWCBの買収提案については、昨年12月にWCBがこれを拒否したものの、MGCはその後もWCBの株式の取得を進めるなど、買収に意欲を示している (海外駐在員情報「豪州乳業最大手マレー・ゴールバン、ワーナンブール買収に意欲」参照)。

 これに対しMGCは4月13日、同公開状は同社に対する不当な非難であり、誤った情報を多く含むとして、これに反論する公開状を現地紙に掲載した。この中で、MGCの乳価は、わずかであるがWCBよりも常に高いことなどに言及し、また、MGCの乳価は他社の乳価設定の指標となっていることを強調した。

MGCはチーズ工場閉鎖に伴う代替製造拠点の確保が狙い

 豪州では生乳生産量が減少する中、主要乳製品の中でより付加価値の高いチーズへ生産がシフトする傾向にある。MGCは今年2月、ビクトリア州北部の4工場で行っていたチーズ生産について、近年の干ばつの影響から同地域では十分な生乳確保が困難であるとして、このうちリーチヴィルに所有する工場(年間製造能力約3万トン)の閉鎖を発表した。業界関係者によると、閉鎖による減産分をほかの工場で代替する必要があるが、最も経済的な手段として、より安定的な降雨が見込める同州南部に所有する3工場のうちいずれかを増強する案があるとしている。しかし、これらの工場における生乳確保もすでに限界に来ていることから、チーズ製造を増やす場合、脱脂粉乳やバターを減産しなければならない。

 南部の2009年7月〜2010年2月における生乳生産量は、前年同期比7%減となるなど北部と同様に減少している。

 こうした中、MGCにとって、南部において近代的な設備で粉乳、バター、チーズなどを製造し、乳製品の品質の高さには定評があるWCBを買収することは、新たなチーズ製造拠点の確保という観点からも有益との判断があるとされる。

MGCは、WCBの全株式の約1割を取得

 現地報道によると、WCBの定款では、1株主当たりの株式取得の上限は、全株式の10%未満とされるが、同上限は2010年5月以降、15%未満に引き上げられ、さらに2011年5月以降はこの制限が撤廃されることになっている。MGCはWCBの全株式のうち9.99%を購入したが、5月以降、15%まで購入するとみられている。今回の買収を巡る動きが決着するには長い道のりが必要と思われるが、業界関係者は引き続き両社の動向を注視していくものとみられる。


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