需給動向 海外

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8月26日付の介入買入在庫放出に係る入札では応札ゼロという結果に


◇絵でみる需給動向◇


 2010年6月以降、原則2週間ごとに開催されている乳業管理委員会にあわせ、バターおよび脱脂粉乳の介入買入在庫の放出に係る入札が行われているが、8月26日に実施された入札では、バターおよび脱脂粉乳とも応札がなく入札そのものが成立しないという異常事態となった。(表7)これまでの入札結果から、当面は市場価格に準じる水準でないと落札できる見込みがないという相場観が醸成されたことに加え、在庫の製造時期の関係からいずれ買手市場となる時期が来るとの期待感もあり、関係業者が現時点での応札を見送ったものと考えられる。

  一方、9月9日に実施された通算で第6回目となる入札においては、1,700トンと数量にしては少ないものの、脱脂粉乳で初めて落札となった。脱脂粉乳の卸売価格が2010年5月をピークに徐々に低下しており、入札のハードルがこれまでより低くなった可能性も考えられる。

表7 介入買入在庫放出に係る入札の結果
単位:ユーロ/トン
注:バター、脱脂粉乳の市場価格はそれぞれ、オランダブラン ドバター、ドイツ食品グレードの当該月の値を指標とした。

介入買入在庫を域外への食料援助に仕向けるとのうわさも

  このような中、当地関係者の間では深刻な洪水被害に見舞われているパキスタンへの食料援助の一環でバターおよび脱脂分乳の介入買入在庫が放出されるのではとのうわさが広がっている。欧州委員会は、「域内」の生活困窮者に対する食料支援制度の下で乳製品を含む介入買入在庫の処分を毎年行っているが、既にバター51,148トンおよび脱脂粉乳65,290トンの介入買入在庫を2010年中に処分することを決定しており、類似の手法でさらなる処分が行われるのではとの憶測が広がった形だ。しかしながら、このうわさの信ぴょう性について、当地乳製品貿易団体である欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)事務局は否定的な見解を示している。その理由としてEUCOLAIT事務局は、欧州委員会による域外への食料援助は非政府組織(NGO)を通じて行われており、食料調達の決定権はNGO側にある(EU産食品の購入を条件づける制度にはなっていない)との欧州委員会担当者のコメントを紹介している。このように本件は現時点では憶測の域を出ないが、このようなうわさが広がること自体、乳製品の介入買入在庫に対する関係者の関心の高さをうかがわせるものとなっている。

8月の卸売価格はバターで前月比0.5%安、脱脂粉乳で同4%安という状況

  バターの8月の卸売価格は、100キログラム当たり376ユーロ(約40,984円:1ユーロ=109円)と前月とほぼ同水準(前月比0.5%安)となった。介入買入在庫がほぼ解消した状態となり堅調な相場が継続している状況となっている。(図8)

  一方、脱脂粉乳の8月の卸売価格は100キログラム当たり222ユーロ(約23,754円)と前月から4%低下した。脱脂粉乳の卸売価格は2010年5月をピークに徐々に低下している傾向にあるが、2010年に行われた介入買入在庫の放出に係る入札では8月までいずれも不成立となったこともあり、2010年8月時点において前年比30%増の水準を維持している状況にある。(図9)前述のとおり、9月の入札では脱脂粉乳が少量(1,700トン)ではあるものの初めて放出されることとなったところであるが、今後は欧州委員会側が19万トンを超える脱脂粉乳の介入買入在庫の処分をどのように行うこととなるか注目される。

図8 バターの卸売価格の推移
資料:ZMB
注:オランダのブランドバターの卸売価格を指標とした。
図9 脱脂粉乳の卸売価格の推移
資料:ZMB
注:ドイツの脱脂粉乳(食品グレード)の卸売価格を指標とした。

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