需給動向 海外

◆E U◆

2010年上期における域外輸出量は前年同期比11.1%増と堅調に推移


◇絵でみる需給動向◇


ロシア、フィリピン向けなどで輸出量の伸びが顕著

  欧州委員会が取りまとめた2010年上期の豚肉製品輸出量は、前年同期比11.1%増の125万トンと域外輸出の好調ぶりを示す結果となった。表3は域外向け輸出量を各国別に示したものであるが、主要域外輸出先であるロシア、中国およびわが国でともに前年同期比で1割を超える伸びを示しているほか、フィリピンでは既に2009年の年間輸出量を大幅に上回っていることが読み取れる。

  欧州の調査会社であるGIRAは、この現象について、ユーロの対ドル為替レートの低下を一番の理由に掲げている。ユーロの米ドルに対する為替レートは、2009年末の時点では1.5程度であったものが2010年上期には1.3弱となっており、これはユーロの米ドルに対する相対的価値が15%低下したことを意味する。加えて、2010年上期の米国における豚肉価格が高水準で推移した結果、EU産豚肉の米ドル換算での競争力が大幅に増加することとなったと分析している。なお、主要豚肉生産国であるデンマークはユーロ圏には属していないが、デンマーククローネの為替レートはユーロに連動して推移しており、デンマーク産豚肉についても上記の分析は当てはまる。
表3 EU 域外への豚肉製品輸出量の推移
資料:欧州委員会
注:対象となる豚肉製品は、生鮮豚肉、冷凍豚肉、ラード、生体など。

ロシアなどでの小麦の不作による2010年下期の豚肉生産への影響を懸念する声も

  このように、豚肉の域外輸出が活発になる中、ロシアやウクライナで顕在化した小麦の不作がEU域内における豚肉生産にもたらす影響を心配する声も聞かれる。欧州家畜・食肉取引業連盟(UECBV)は8月末に「How the Global Wheat Shortage May Impact the Pig Industry」という報告書を取りまとめ、この中で、今後EUの飼料産業は飼料原料価格の高騰を配合飼料価格に反映させざるを得ず、現時点で推計される価格上昇幅は1トン当たり40ユーロ(約4,360円:1ユーロ=109円)から50ユーロ(約5,450円)程度と言及されており、豚枝肉卸売価格が現状の水準のまま推移すれば、2010年第4四半期には域内豚肉生産者は赤字となる可能性があると警告している。また、同報告書では、欧州配合飼料工業連盟(FEFAC)会長が、介入買入在庫として保管されている500万トン以上の穀物(大半が大麦)の放出とトウモロコシ類に課される輸入関税の適用停止など、飼料の円滑な供給につながる措置の導入を欧州委員会に求める発言を行ったことも紹介している。養豚、養鶏部門は配合飼料への依存度が高いことから目下の飼料原料価格高騰の影響が心配されており、今後の動向が注目される。


元のページに戻る