需給動向 海外

◆米 国◆

乾牧草の価格高騰などにより酪農家の収益性は低下


◇絵でみる需給動向◇


2011年4月の生乳生産量は14カ月連続で前年同月を上回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が5月18日に公表した「Milk Production」によると、2011年4月の生乳生産量は前年同月比1.5%増の755万8千トンとなり、14カ月連続で前年同月を上回ることとなった。これは、一頭当たり乳量が着実に増加する中、生産者が昨年後半より搾乳牛飼養頭数を増やしてきた結果である。また、地域別では、全米の約2割のシェアを有するカリフォルニア州が全米の生乳生産伸び率を上回るペースで生産を増やしてきている。同州における生乳生産の内訳をみると、他州と比較して搾乳牛飼養頭数よりも一頭当たり生乳生産の伸び率が大きいことから、同州の生産者が堅調な乳価を踏まえて、飼料の多給等により生乳生産を伸ばしているものと推測される。

表6 生乳生産に係るカリフォルニア州と他州との比較

乳価は好調であるが、飼料価格の高騰により酪農家の5月の収益性は低下

 酪農家の収益性は手取り乳価と生産コストのバランスで決定される。図1は、酪農家の収益性を図る指標として、手取り乳価から飼料費を控除した金額の推移を示したものである。酪農家の収益性は2008年の世界金融危機を契機に大きく落ち込み、その後、回復傾向にあったが、昨年後半からのトウモロコシ価格高騰により低下傾向に転じた。今年の2月からは乳価が上昇したため、収益性は改善傾向にあったが、トウモロコシ価格のさらなる上昇、乾牧草価格の上昇により、収益性は再度低下傾向に転じている。

図6 酪農家の収益性(乳価−飼料費)の推移
資料:USDA/NASS 「Agricultural Prices」

乾牧草の収穫面積は減少傾向、乾牧草価格は上昇傾向

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が3月31日に公表した「Prospective Plantings」によると、2011年の乾牧草収穫面積は前年比1.5%減の58,973千エーカーとなっている。これは、1994年以来最低の数値であるが、減少理由としては、米国において牛群が縮小傾向にあり乾牧草の需要が低下していることや、好調なトウモロコシ価格を反映してこれまで乾牧草地帯であったところにトウモロコシが作付されていること、などが挙げられている。2011年後半から2012年前半にかけて乾牧草の供給減少が見込まれる中、産地であるテキサス、オクラホマなど南部地域において深刻な干ばつ被害が起きていることから、乾牧草の価格は今年1月より上昇し、5月の1トン当たり乾牧草価格は前年同月比45.7%高の169ドルとなっている。

 USDAは、現在の飼料価格高騰下においても乳価が堅調なことから生産者は増産を志向し、2011年下期における生乳生産は前年同期比1.2%増の43,862千トンになると見込んでいる。トウモロコシや乾牧草の価格動向が、今後の生乳生産にどのような影響を与えるのか、注目されるところである。

図7 乾牧草収穫面積の推移
資料:USDA/ NASS 「Acreage」、2011年の数値は「Prospective Plantings」であり、農家の意向調査結果。

 


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