調査・報告 専門調査

地域に密着した「石垣牛」のブランド化戦略

九州大学大学院農学研究院 教授 福田晋




【要約】

 温暖な気候と豊富な草資源を活かし、国内でも屈指の素牛供給地である沖縄県石垣島を中心とした八重山地区。ここは近年、繁殖肥育一貫経営により、肥育産地としても大きな可能性を秘めてきている。当地域で取り組まれている「石垣牛」ブランド化の手法や、地域資源を最大限活用する取り組みなどの成果について考察するとともに、今後の課題を明らかにする。

1.はじめに

 沖縄がわが国黒毛和種の主要な肥育素牛供給地帯であることは周知のことである。中でも八重山地区はその中枢となる地域である。当地域の八重山家畜市場の子牛上場頭数は全国でも10本の指に入り、一大肥育素牛供給基地となっており、九州、東北地方を中心に全国各地に購買されている。豊富な草地基盤と温暖な気象条件は大規模草地畜産の展開を可能にし、草地依存型繁殖経営が多数立地している。

遠くに見える平場の水田と山地の放牧地

 一方、素牛供給地帯の陰で見逃されがちであるが、牛肉産業という視点からは、肥育素牛に付加価値をつけて肉として供給するという展開方向を志向する途がある。現時点では肥育経営は繁殖経営と比べて戸数も少なく、小規模であるが、繁殖肥育一貫経営の育成によって八重山地区は肥育産地としても大きな可能性を秘めた地域でもある。

 本稿では、JAと肥育部会が二人三脚で「石垣牛」ブランドを形成してきたプロセスを明らかにし、どのような点が地域特性を活かしたユニークなものになっているかについて考察してみたい。

 以下、まず初めに石垣牛ブランド化の経緯を時系列的に振り返る。次に、その担い手としてのJAおきなわ八重山地区畜産振興センターの肥育部会の役割について述べる。第3に、石垣牛の定義とブランド化の要となる商標登録について述べ、第4に流通構造について検討を加える。そして、第5に地域資源を活かした肥育生産構造について触れ、ブランド化の成果について明らかにする。そして、最後に地域に密着した「石垣牛」ブランド化戦略を総括して、今後の課題について触れてみたい。

育成中の「石垣牛」

2.八重山地区の農業と畜産の概要

 平成20年度の沖縄県の農業産出額は920億円となっており、畜産部門は354億円で約38%を占めている。畜産部門の構成比は、肉用牛141億円(40%)、豚113億円(32%)、その他畜産100億円(28%)となっている。一方、18年度における八重山地区の農業産出額は121億で、畜産部門は77億円で63.6%を占め、そのうち肉用牛は72億円で全体の59.5%を占めている。

 八重山地区における肉用牛飼養動向を図1で見ると、飼養戸数は7年に1,003戸とピークを迎えているが、12年には932戸に減少し、18年の807戸以降ほぼ横ばいで推移している。しかし、この間1戸当り飼養頭数は昭和55年の14.4頭から平成19年の44.6頭まで一貫して増加している。

図1 八重山地区における肉用牛飼養の動向
資料:JA沖縄資料より作成

 飼養戸数は減少しながら1戸当り飼養規模拡大が進んだことにより、全体の飼養頭数も昭和55年の12,516頭から平成19年の35,930頭まで一貫して増頭が進んできた。

3.石垣牛ブランド化の経緯

 現在のJA肥育部会はその前身が平成6年度までさかのぼる。低コスト肥育と沖縄県内及び地元での流通販売等の検討が行われ、石垣島和牛改良組合肥育部会を八重山地区の肥育生産者で設立し、和牛の試食会、横浜市場において枝肉共励会を開催したことがスタートである。8年度からは愛知食肉市場で共励会を始め、それ以降の愛知市場への進出の礎となっている。この和牛改良組合は11年度に解散し、現在のJA石垣牛肥育部会を発足させている。地域一貫体制の確立と出荷体制の見直しを目指してJA内に部会を作るという点が狙いであった。この時期が「石垣牛」ブランド化のスタート期である。

 石垣牛のブランド化にとって大きな転機となったのは、12年度の沖縄サミットにおいて石垣牛が使用されたことである。石垣牛が各国首脳から賞賛され、マスコミがこぞって取り上げたことで石垣牛の名前が一躍広がってきた。これを契機に13年度には沖縄本島で初めて石垣牛の共励会を開催し、14年度には商標登録「石垣牛」(肉類)を取得し、ブランド化の一歩を踏み出した。おりしも、13年度に国内でBSEが発生し、その影響を受けて大規模肥育農家の廃業やJAの肥育センターである石垣畜産センターが廃業に追い込まれる(15年度)。図2に示すように、13年度時点で石垣牛の出荷実績は621頭であったが、17年度には235頭でボトムを迎える。しかし、17年度にJAの肥育事業がJA八重山肥育センターで再開され、肥育部会の肥育頭数も増加し始め18年度以降出荷実績も増加傾向にある(図2)。この第2期はブランド化に向けての再編期ととらえることができる。

図2 石垣牛の出荷頭数実績
資料:JA沖縄資料より作成

 第3期が20年度以降現在までの時期である。20年度にはJAが念願の地域団体商標「石垣牛」(地域ブランド)を取得し、地域と一体となった商品展開が可能となった。

 この地域団体商標登録によって「石垣牛」の名称を独占的に使用する権利を得たことになり、石垣市が県内初となる農林水産戦略品目肉用牛(子牛、肥育牛)の拠点産地として認定されたこととあわせてマーケティング戦略の発端となり、ブランド化の第3期は発展期といえる。さらに、21年度からは畜産センターと部会によって、JA配合飼料への統一と貴重な地域資源である稲わら利用を柱とする飼料給与マニュアルを作成し、肥育センターとすべての部会員が飼料統一に至っている。これは地域団体商標登録によるマーケティング戦略だけでなく飼養体系自体も統一されたことで名実ともに石垣牛ブランドの構築に至ったことを物語っている。これらのブランド化に向けた取組により22年度は628頭と、13年度の621頭を超えている。

4.JA沖縄八重山畜産振興センター畜産部と肥育部会

 肥育事業を統括し、畜産経営の営農指導に当たり、資材調達から販売委託まで一貫して石垣牛に関わっているのがJAおきなわ八重山地区畜産振興センター畜産部である(以降、「振興センター」と称す)。振興センターは、肥育部会だけでなく、肉用牛ヘルパー組合、子牛市場管理、和牛改良組合の事務所も設置しており、繁殖部門も含めた八重山地区肉用牛部門振興の文字通り要となっている。

 肥育部会の会員条件は、①組合の正組合員であり2年以上肥育を行い、継続的に肥育を続けることを目的として肥育牛を通年飼養していること、②JAの肥育事業及び枝肉販売事業に賛同し、JA石垣牛定義を厳守し、販売出荷牛すべてをJA窓口を流通し販売を行うこと、③石垣牛を守っていくことから部会の取り決め等に賛同できること、とされている。部会のメンバーは現在22名であり、設立当初の40名程度からすると半減している。しかも、この中で毎月定期的に出荷している農家は半数程度である。いずれも繁殖との一貫経営を行っていることが特徴である。元来、繁殖地帯であったため繁殖部門が主体で徐々に自家保留して肥育を拡大してきた部分一貫経営から、肥育経営からスタートして繁殖部門を導入した経営もある。いずれにしろ繁殖・肥育両部門を経営していることは、肥育成績をフィードバックして繁殖雌牛の育種価を検討して、肥育成績の良い雌牛系統を揃えることができる。

5.石垣牛の定義と商標登録

 はじめに、石垣牛の定義について確認しておこう。そこでは、出荷者条件と対象条件が明記されている。出荷者条件としては以下の3点が挙げられている。①飼養者は、振興センターを通じ適正な飼養管理のもと定期的に出荷している者とする②飼養者は、JAおきなわの供給する配合・単味飼料を利用し、振興センターの指導の下で意欲的に肥育経営を営む者とする。③JAおきなわの供給以外の配合・単味飼料を利用する者は、振興センターの指定された様式にて、明確に記入し提出すること。飼料については、統一することを推奨しているが、JA推奨の飼料を利用していない場合でも、その給与内容が証明できれば良いこととなっている。しかし、後述するように、肥育部会では配合飼料の統一を22年1月に始めている。

 次に対象条件として、①「石垣牛」とは八重山群島内において生産、育成された登記書及び生産履歴証明書を有する肥育素牛を、郡内において生後20カ月以上肥育した純粋の黒毛和種の去勢、及び雌牛のことをいう。また②牛副生物(内臓・皮)については個体識別番号が確認、管理できるもの、③その他の二次加工品(ハンバーグ、ギョーザ、ウインナー)については石垣牛として確認、管理のできるもの、とされている。

 これらの出荷者条件、対象条件に加えて規格及び品質表示については、特選(歩留等級A、B、肉質等級5、4)と銘産(歩留等級A、B、肉質等級3、2)に区分してラベルも区別している。このラベルは14年に石垣牛の商標を登録したことによって作成されているが、ラベルはあくまで商品への貼付、広告・宣伝には利用できても、「石垣牛」のブランドを文字として利用することはできなかった。一方で、石垣産黒牛であって個人や任意組織が石垣牛を名乗るケースはあとを絶たず、何らかの明白なシグナルを発信する必要があった。そこで、20年には念願の地域団体商標登録を取得しており、文字通りJAの「石垣牛」ブランドが取得され、JAは「石垣牛」の商標を独占的に使用する特許を与えられた。

 石垣牛の商標ラベルは、振興センターが取管理し、11の取扱卸売業者に販売される。そして、石垣牛が小売店で販売際される場合、ラベルが商品数に応じて小売店に販売されることになる。

図 「石垣牛」特選のラベル

 現時点では、石垣牛の商標は地元石垣では取扱飲食店、小売店の店頭に掲示され、地元の観光ガイド資料、パンフレットにも説明付きで掲載されており、狭いエリアだけにその集中的なシグナル発信は目立っている。また、販促ラベルには通し番号を付しており、小売店の特定ができ、いわゆるトレーサビリティーシステムとなっている。したがって、肥育部会員以外の「石垣牛」ブランドを名乗る事例は極めて少なくなっている。

 ところで、上位の格付け品(肉質4,5等級)と下位の格付け品(肉質2,3等級)との価格差は産地での取引段階で明白である。石垣牛の定義によると、A2以上は石垣牛に該当し、現状では部会員から出荷されるほぼすべての肥育牛はA2以上に格付けされており、すべてが石垣牛となっているといってもよい。全国の牛肉ブランドによっては4等級以上に限定するものもある中で、卸業者は下位の格付品の販売に苦労するわけである。今後の「石垣牛」ブランドの拡大を展望する際の課題でもある。

6.石垣牛の流通構造

 沖縄県の肥育はすでに昭和50〜60年代に行われていたが、生体出荷がほとんどすべてであり、個々の農家レベルで行われていた。ピークは平成2、3年ころであったと見られている。図2にあるように、13年の石垣牛の出荷は621頭となっているが、この時期は約80%が県外出荷であり、そのほとんどが生体出荷である。枝肉販売についても那覇の食肉センター及び鹿児島や宮崎の食肉センターでと畜し、枝肉を名古屋食肉市場へ搬入して販売する形態が主流であった。すなわち、付加価値はほとんど地元に残らない流通構造であった。

 BSE発生直後に枝肉価格が暴落すると、JAの預託事業で経営を行っている部会員の中には餌代や労賃も償えず、経営継続ができない事例が出始めた。そこで16年には県外販売を中止し、県内での販売促進を心がけた。22年現在では、首都圏向けなど振興センターが認める事例や共励会以外はすべての肥育牛を県内でと畜している。図2でも述べたが、BSE発生以降、振興センターと部会の努力により石垣牛の肥育牛出荷は13年のレベルにV字型に回復した。それ以上に重要なことは県内でのと畜を可能として、八重山地区内を主体に県内の枝肉流通販売構造を構築したことである。これは肥育農家の隆盛はもとより、卸売、小売、飲食業など牛肉産業の活性化にも大きく寄与したといえる。

 現在の石垣牛の流通構造は以下の通りである。肥育農家は毎週火・水曜に八重山食肉センターで行われると畜に合わせて肥育牛を出荷する(一部、那覇食肉センターにも出荷していたが、21年はすべて地元でと畜)。と畜された枝肉はセンター内でJAおきなわと売買契約書を締結済みの購買者との相対取引が行われる。売買成立後、石垣牛ラベル(伝票を発行し、1枚2円で販売)、登録証、生産履歴書、給餌証明書、認定証を発行する。その後小売業者、外食業者等からラベルの注文を受け、販売される。

 島内の販売に関わって注目すべきは2点ある。まず、観光客が石垣島を訪問する際の起点となる石垣空港にあるタウンガイドでの「石垣牛」の宣伝である。情報誌の中にはグルメコーナーがあり、「石垣牛」を取り扱う焼肉屋、居酒屋、小売店舗などの広告・宣伝が掲載されているが、それだけではなく「石垣牛」の定義が明示されている。ほとんどの観光客が空港で手にするタウンガイドに「石垣牛」の情報がこれほど満載されているケースは他の地域に例を見ない特徴である。効果絶大であるといえよう。さらに第2に、牛肉料理としての「石垣牛にぎり」の存在である。石垣牛を取り扱っている多くの飲食店で「石垣牛にぎり」を目にすることができる。その食べ方はもちろん、普及程度も特筆すべきものである。新しい郷土料理として定着している。この2つの事象は地域密着型マーケティングの典型であり、独自ブランド形成に貢献するであろう。

島内に出荷される「石垣牛」

7.石垣牛ブランドの実質化

1)飼料給与マニュアルの統一

 21年時点での部会員の飼料給与状況を見ると、JA系統配合飼料(システム前期・後期)利用12戸、おきなわ和牛後期利用2戸、自家配合飼料利用2戸、系統外配合飼料利用6戸となっていた。取引頭数も増加し、上物率も高くなっているが、取引頭数の増加に伴って下位等級の数も増えつつある。今後も枝肉重量を増やし、上物率を上げるべくJA配合飼料の給与統一と地元産稲わらの飼料を柱とする飼料給与マニュアルを作成した。これによりすべての会員が飼料マニュアルのもとに配合飼料を統一し、後述するように地元産稲わらを給与するという独自体系を確立し、石垣牛ブランドは給餌体系からみても実質的にブランド化を図ることが可能となった。

2)地域資源へのこだわり

 昨今の肥育牛経営を取り巻く環境は必ずしも好ましいものではない。飼料価格高騰、素牛価格高騰に加えて、景気低迷による枝肉価格の低迷は、肥育経営に3重苦をもたらしている。とりわけ、配合飼料高は今後穀物のバイオ燃料への利用転換を考慮すると中長期的に構造的傾向と捉えるべきである。そのような状況の中で、稲わらを使用したいという肥育農家の狙いと地域の貴重な資源である稲わらを利用して耕畜連携を図るプロジェクトがスタートしている。

 一部農家同士の稲わら流通はあるが、耕種サイドと畜産サイドの組織的流通取引は行われていない。島内は2期作が行われているが、11月収穫の秋収穫に焦点を絞り、商流としては、稲作農家がJAに稲わらを販売し(圃場渡し)、JAが肥育センターで利用する。一方、物流はJAが稲作農家の圃場でロールにしてJA肥育センターの倉庫に運搬する。

 収量と品質の確保を図ることは課題であるが、稲作農家の販売代金収入増大、畜産サイドにとっては島内稲わら利用、肥育への稲わら有効活用、コスト低減といったメリットを活かす仕組みづくりが望まれる。

8.ブランド化の成果

 以上の農協畜産センターと部会、肥育農家が一体となった石垣牛の成果は、どのように把握できるであろうか。石垣牛の出荷実績が13年度のレベルに回復し、従来の生体・県外出荷構造から枝肉・域内出荷構造の転換したことはすでに述べてきたことであるが、特筆すべき成果である。

 一方、石垣牛の平均取引価格自体は18年度の1頭当たり82.3万円から下落傾向にあり21年度は同73.2万円と景気の低迷もあって上昇傾向は認められない。しかし、時系列ではなく、県内の他の地区と比べると異なる傾向が認められる。それを端的に示すのが、農協の肥育センターの肥育牛の出荷実績である。農協の肥育センターは県内に7つあるが、八重山肥育センターは石垣牛部会の肥育農家と同様に統一配合飼料の給与を行い、肥育マニュアルに沿った肥育を22年1月から開始している。表1は、22年6月時点の各肥育センターの出荷実績を示したものである。八重山肥育センターの格付け割合はA5が21.5%、A4が45.2%、合計66.7%と全センターの平均値47.2%に比べてきわめて高い上物率を示している。とりわけ、A5割合の高さが特筆される。

表1 JA肥育センターの出荷実績(平成22年6月末)
(単位:頭、kg、%)
飼料:JA沖縄資料より作成

9.むすびにかえて
−地域密着型ブランド構築と今後の課題−

 タイトルを“地域に密着した「石垣牛」ブランド化戦略”としているが、これには2つの意味が込められている。まず、ブランド化の手法である。地元JAと部会が中心となって、地域の畜産流通業、食品産業と連携して地元消費者のみならず観光地という地域特性を活かして観光客をターゲットとした新しいマーケティングとブランド化を展開している。県外出荷を抑制してでも地元の足固めをするという戦略は、今一度見直されるべきものである。

 第2に、地域資源を見直しながら飼料給与マニュアルを構築したことである。飼料給与マニュアルにはJAおきなわ独自の配合飼料があり、稲わら、さとうきび鞘頭部という地域独自の資源も利用されている。そして、肥育部会のメンバーでこのマニュアルに沿った給餌体系が統一されたことは特筆されるべきことである。

 ブランド化の成果と飼料の統一は今後一層成果として現れてくるであろう。しかしながら、今後の「石垣牛」ブランド発展に向けて課題も残されている。以下の3点を指摘して結びとしたい。

1)石垣牛のブランド担い手の拡大

 現在の部会員は22名と設立当初からほぼ半減しているが、それだけでなく高齢化が進んでいる。平均年齢は48歳であるが、70代が2名、40〜60歳代が15名、30歳代が4名という構造である。このように、石垣牛の担い手が量だけでなく若手の補充という質的側面も不足していることは、今後の石垣牛のブランド維持・拡大にとって大きな課題を投げかけている。もちろん、1戸当たりの飼養頭数拡大は進んでいるが、底辺の拡大は今後の産地発展に欠かせない。島内の繁殖農家のみならず、新規参入による若い担い手の確保についても検討すべきであろう。

2)流通チャネルの拡大

 地元卸売業者と小売業者、外食店舗との連携により、地元石垣市民と観光客に着実に消費の輪を広げてきた石垣牛であるが、これまでのブランド化戦略に加えて新たな販売戦略に踏み出している。

 JAおきなわと首都圏の(株)ミーコンパニオンとの連携で「おきなわ和牛展示即売会」の取組みを19年から行ってきた。そして、22年に開催された展示即売会で「石垣牛」が初めて出品された。現在、ミートコンパニオンを通じて毎月36頭のおきなわ和牛が首都圏に流通している実績があるが、これに石垣牛も5〜6頭出荷するという構想を持っている。地元の足固めができた段階で大消費地圏に進出する足がかりをつかんだと言える。

3)産地食肉センターの整備

 現在のと畜が八重山食肉センターと那覇食肉センターを主体に行われていることは前述した通りである。しかし、石垣牛の生産拡大とともに枝肉出荷という産地販売戦略にとって基盤となる八重山食肉センターの能力は量、質ともに限界がある。

早期の整備を望む「八重山食肉センター」

 すなわち、1日あたり12〜13頭/回のと畜処理能力は、おのずと那覇食肉センターへの依存を強めざるを得ない。これは出荷される肥育牛にとってロスはあるものの、メリットをもたらすものではない。また、食肉処理工場という視点からは衛生基準が大きく劣っている。食肉処理施設の安全性・衛生面での確保は国内市場で信頼を確保するためにも必要なことであるが、国内出荷だけでなく、アジアに近い立地を活かして将来的にアジア市場などへの輸出などを見越した場合、国際的に衛生基準を満たす施設に向けた整備が必要である。

謝辞:本稿の執筆に当って、JAおきなわ八重山地区畜産振興センター畜産部の又吉部長を始めとして関係職員の皆様、JA石垣牛肥育部の仲大盛吉幸部会長には大変お世話になった。記して感謝の意を述べたい。


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