需給動向 海外

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1月の豚枝肉卸売価格、2カ月ぶりに下落


◇絵でみる需給動向◇


ダイオキシン混入問題により相場は下落

 欧州委員会によると、EU27における1月の豚枝肉卸売価格は、ドイツにおいてダイオキシンが混入された汚染飼料が流通し、養豚農家などで使用されていた問題が発覚した影響などにより、100キログラム当たり135.32ユーロ(約15,291円、1ユーロ=113円)と2カ月ぶりに前月を下回った。同価格は、過去3カ月間前年同月を上回り、かつ、上昇傾向で推移していたため、今後も堅調に推移するのではと期待されていただけに、飼料価格の高騰に苦しむ欧州の養豚農家にとっては芳しくない結果となった。(図4)

図4 EUにおける豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

 ドイツにおけるダイオキシン混入問題は、昨年12月、ドイツのバイオガスプラントで発生した脂肪酸をオランダのトレーダーを通じてドイツの飼料原料取扱業者が購入し、さらに同原料を購入した配合飼料メーカー(25社)がドイツ国内の養豚農家を含む畜産農家へ販売したが、同脂肪酸にはダイオキシンが含まれていたことが明るみとなり、社会問題となったものである。(注1)

 これを受け、ドイツ衛生当局は、関連農場の封鎖や畜産物流通の停止、「混入されたダイオキシンの濃度が低いため、たとえ汚染された食肉を摂取したとしても健康への被害はない」との声明を発表するなど事態の鎮静化を図ったものの、消費者への風評被害は収まらなかったと考えられる。

価格の下落はドイツ、オランダで顕著に

 図5は、主要加盟国別の週単位の同価格の推移を示したものであるが、ダイオキシン問題が顕在化した昨年12月以降、著しく下落している様子が観察される。特に、当該国のドイツ、ドイツと隣国であり、ドイツへ子豚を多く輸出しているなど関係の深いオランダにおいてその影響は顕著となっている。EU全体の下落についても、養豚主要国であるドイツおよびオランダでの値下がりによるところが大きいと考えられる。(図5)

図5 主要加盟国における豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

欧州委、目下の養豚危機に対応するため豚肉の民間在庫補助発動を表明

 以上のような状況を踏まえ、欧州委員会は、1月27日、危機に直面している豚肉産業への対応が同月24日に開催された農相理事会において主要議題の1つとして議論されたことを受け、豚肉の民間在庫補助を発動すると表明した(注2)。

 EUの豚肉産業は、ダイオキシン問題に加え、昨年来の飼料原料価格高騰による生産コストの増大といういわばダブルパンチに見舞われている状態となっており、前議長国であったベルギー代表からの民間在庫補助の早期発動の要請に欧州委員会が応えた形となった。これにより、域内市場に流通する一定量の豚肉が隔離されることになるため、同価格の上昇が期待されている。

 一方、EUにとって4番目の豚肉輸出先である韓国は、口蹄疫が大規模に発生し、生体豚殺処分により豚肉供給不足に陥ったため、2月1日から6月末までの時限的措置として冷凍豚肉6万トンに係る関税を無税とする決定を行った。韓国は、米国やEUからの豚肉輸入を増やすことで国内の需要を満たそうとしているが、最近意見交換を行った欧州の食肉関係者によると、韓国向けの輸出が増加することで、欧州の豚肉相場が上向くのではと期待しているとのことであった。

 今後、民間在庫補助や輸出需要などにより、どの程度豚肉卸売価格が回復するか、注視して参りたい。

(注1)海外駐在員情報「独衛生当局、畜産物のダイオキシン問題の現状と対応を発表」
(2011年1月13日)参照 
http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_000295.html

(注2)域内の豚肉市場が低迷した場合、豚肉を一定期間保管する者に対し保管に要する経費を交付する制度。最近では2007年10月から12月までEU全域で発動されたほか、2008年12月に発生したアイルランド産豚肉のダイオキシン混入事件を受け、事件に無関係な同国産豚肉を本制度を用いて一時的に市場隔離した。

 


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