需給動向 海外

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好調な輸出を背景に、豚肉卸売価格は再び上昇


◇絵でみる需給動向◇


2011年1〜5月の豚肉輸出量は前年同期比30.8%増

 欧州委員会によると、EUの2011年1〜5月における域外向け豚肉輸出量(生体、内臓などを含む)は122万9000トン(製品重量ベース、前年同期比30.8%増)と、前年同期と比べ大幅に増加した。ユーロの為替レート低下により、国際市場におけるEU産豚肉の相対的な競争力が向上したことが輸出増加の要因と考えられる。最大輸出先のロシア向けは34万1695トン(同7.9%増)に増加した。同国は、2008年に発生した世界的な金融危機による景気後退からの回復に伴い豚肉消費量が増加し、輸入需要も高まっている。また、主要輸出先の韓国向けについては、同国の大規模な口蹄疫発生による供給不足で輸入需要が増加したことから前年同期と比べ大幅増加の9万8438トン(同127%増)となった。そのほかの輸出先へも全体的に増加傾向となっており、日本向けは10万831トン(同13.0%増)となった。

図3 豚肉の域外輸出量(1〜5月)
資料:欧州委員会

7月の豚枝肉卸売価格は再び上昇

 EUにおける7月の豚枝肉卸売価格は前月比0.9%高の100キログラム当たり157.03ユーロ(約1万7744円、1ユーロ=113円)となり、6月の下落から再び上昇に転じた。価格上昇の要因として好調な域外輸出が挙げられるほか、域内における夏季のバーベキュー需要も影響したと考えられる。EUでは、2010年末に発生したダイオキシン汚染飼料混入問題による価格下落を受け、2月に民間在庫補助が発動され、豚肉14万1218トンが市場から隔離された。このうち、5月に2万8175トン、6月に5万2873トン、7月に2万4873トンが放出され、残りの3万5297トンについては、8月に放出される予定である。在庫放出による一時的な需給緩和を受け、6月の豚枝肉卸売価格は前月からやや下落していた。

図4 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

飼料価格の高騰続き、養豚経営を圧迫

 豚肉価格が堅調に推移する一方で、英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)は、飼料価格の高騰によりEUの養豚経営は厳しい状況にあるとみている。EUにおける飼料価格の高騰は、世界的な穀物価格の高騰を背景に、原料となる大麦やトウモロコシ価格が前年の約2倍の水準にまで上昇していることが要因と考えられる。2011年6月の豚飼料価格は1トン当たり297.89ユーロ(約3万3661円)と、前年同月と比較して40.3%上昇しており、生産コストに占める飼料費の割合は5割とすると、飼料価格の上昇により、生産コストは全体で一年前と比べ2割増加したことになる。6月の豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり155.57ユーロ(約1万7579円)と前年同月を3.2%上回っているものの、生産コストの大幅な増加に追い付いておらず、養豚経営は収益性の低下に直面している。

図5 豚飼料価格の推移
資料:欧州委員会

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