需給動向 海外

◆中国の畜産物需給◆

鶏肉小売価格は安定して推移し、
生産・輸出も拡大の見込み


1.旺盛な需要を国内生産がカバー

 米国農務省(USDA)によると、2012年の中国の鶏肉生産量は、前年比4.6%増の1373万トンとなる見込みとなった。同様に、輸出量は同5.2%増の44万5000トン、消費量も同3.9%増の1351万8000トンに、いずれも増加する見込みであるものの、輸入量については、同2.1%減の23万3000トンとなる。これは、2010年に米国産鶏肉に対して課せられる2つの追加関税※が、未だに色濃く影響を及ぼしているためであると考えられる。

 ※・相殺関税(2010年8月公告第52号:税率4.0%〜30.3%)
  ・アンチ・ダンピング関税(2010年9月公告第51号:税率50.3%〜105.4%)

表15 中国の鶏肉需給の推移
資料 : USDA 「Poultry and Products semi-annual」 2012年3月公表
注1:モミジ(鶏の足)を除く
 2:2012年は予測値

2.小売価格は安定して推移

 中国商務部によると、中国国内における鶏肉の小売価格は、2010年7月半ばより上昇を続け、2011年9月第5週以降、2012年6月第1週までの36週間連続でキログラム当たり18.50元を割ることなく推移している(2012年1月第3週と2月第1・2週には、キログラム当たり18.69元(243円:1元=13円)をマーク)。これは、2012年2月以降、供給過剰を起因として下落を続ける豚肉の卸売価格とは対照的な動きを示しており、この点からも、近時における国内産鶏肉の生産と供給の安定がうかがえる。

図18 鶏肉の小売市場価格の推移(月別)
資料:中国商務部

3.日本・香港向けの鶏肉調製品輸出が好調

 2012年1〜4月期における鶏肉調製品の輸出量は、前年同期比7.4%増の8万1000トンとなった。輸出国別にみると、主要輸出先である日本や香港は、引き続いて増加の傾向を示すのに対し、英国、オランダ及び韓国は、前年と比べて減少している。

 日本は鶏肉調整品を主に中国とタイから輸入している。本年7月には、競合輸入元であるタイの生鮮鶏肉が、8年ぶりにEUへの輸出が解禁されたため、今後、タイ産鶏肉の価格上昇などが想定される。このため、日本の鶏肉調整品輸入に変化が生じることも考えられることから、引き続き、中国産を含めた鶏肉調整品の輸出動向について注目する必要がある。
 
図19 鶏肉調製品の輸出量の推移(月別)
資料:GTI社「World Trade Atlas」
 注:HSコード160232
表16 鶏肉調製品の国別輸出量
資料:GTI社「World Trade Atlas」
 注:HSコード160232

4.モミジの減少傾向に拍車がかかる

 2012年1〜4月期における冷凍鶏肉の輸入量は、骨付き肉が前年同期比163.9%増の1万3000トンと大幅な増加を示しているのに対し、手羽やモミジは、それぞれ前年割れしている状況にある(手羽:同8.1%減・モミジ同60.0%減)。内訳を見ると、骨付き肉では、ブラジルが同約11.2倍と大きく増加しているため、今後も最近の米国産の減少を補っていくとみられる。これに対し、モミジでは、ブラジルが同72.1%減と大きく落ち込んでいる一方、米国が同約4.9倍の大幅な増加を示しているものの、上述の米国産鶏肉に対する追加関税を考慮すると、2012年のモミジの輸入量は、ある程度限定的なものにとどまるものと考えられる。

表17 冷凍鶏肉(骨付き肉)の国別輸入量
資料:GTI社「World Trade Atlas」
 注:HSコード02071411
表18 冷凍鶏肉(手羽)の国別輸入量
資料:GTI社「World Trade Atlas」
 注:HSコード02071421
表19 冷凍鶏肉(モミジ)の国別輸入量
資料:GTI社「World Trade Atlas」
 注:HSコード02071422
図20 冷凍鶏肉の輸入量の推移(月別)
資料:GTI社「World Trade Atlas」
 注:HSコード020714

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