需給動向 海外

◆タ イ◆


国内価格が回復半ばの中、旺盛な生産意欲に輸出価格が応える

◇絵でみる需給動向◇


卸売価格は、回復基調にあるも依然前年割れ

 タイ農業・協同組合省によると、タイ国内における2012年1〜6月期のブロイラー処理羽数は、前年同期比6.5%増の5億463万羽となった。これは、2010年後半からの国内価格の上昇に加え、2011年以降、鶏肉調製品の輸出価格が高水準で推移していることを背景に増産意欲が高まったためと思われる。特に、6月には前年同月比13.7%増の9181万羽となり、今後も、7月のEU向け生鮮鶏肉の輸出の解禁に伴う輸出拡大などを見据えて、大手インテグレーターを中心に生産体制が強化されていくものとみられる。
 
 タイ商務省が発表する卸売価格は、2011年7月以降横ばいで推移していたが、2012年に入って一時的に下落し、3月には1キログラム当たり26.3バーツ(79円:1バーツ=3円)となった。これは前年同月比では44.8%の低下となり、養鶏経営に対する影響が懸念される状況であったが、その後、2011年後半と同レベルまで回復した(6月:39.1バーツ(117円))。
 現在、大豆かすをはじめとした国内飼料価格が上昇傾向にあるとともに、2013年1月からタイにおける日額最低賃金が全国一律300バーツに引き上げられることなど、コスト面においても課題が多い。今後、EU向け生鮮鶏肉の輸出解禁などを踏まえ、増羽基調で推移していくのか、タイの鶏肉生産に注目が集まる。

図5 ブロイラー処理羽数と市場価格(卸売・小売)の推移(月別)
資料:・処理羽数;タイ農業・協同組合省
    ・価格(卸売・小売);タイ商務省

国内消費は安定、小売価格も徐々に回復

 国内消費は、2008年以降80万トン程度で推移しているが、2012年1〜6月期も前年並みで推移しており、2012年においても、年間では80万トン前後と見込まれる。

 バンコク市内における小売価格は、堅調な生産を背景に、2012年に入り軟調となり、3月には、前年同月比21.9%安の1キログラム当たり53.9バーツ(162円)まで下落したものの、6月は同11.0%安の63.5バーツ(191円)にまで値を戻した。今後、小売価格は、生産体制の強化に伴う安定供給を背景に、安定的に推移していくものと考えられるが、大手インテグレーターをはじめとした積極的な増産に伴う供給過剰により、再度の値崩れが生じる懸念もある。

表4 タイの鶏肉需給の推移
資料:機構調べ(生産量及び国内消費量)、タイブロイラー加工輸出協会(輸出量)
注1:生産量は、ブライラー処理羽数を基礎とした推計
  2:国内消費量は、生産量−輸出量で算出

日本向け輸出量の回復とともに輸出価格も大幅に上昇

 タイ財務省によると、2012年1〜6月期における鶏肉調製品の輸出量は、前年同期比11.0%増の22万2251トンとなった。内訳を見ると、日本向けが同14.3%増の9万9074トンとなり、全体の44.6%を占めた。EU向けは、英国が同7.0%増の6万9625トン、オランダ向けが同4.0%減の1万4918トン、ドイツ向けが同38.1%増の9841トンとなり、EU向けシェアは全体の42.5%となった。今後、EU向け生鮮鶏肉輸出の解禁(※)により、輸出量や国別輸出シェアなどにどのような影響が現れるか注目される。また、現地では、イランにおける生鮮鶏肉の輸入再開の計画やフィリピンにおける生鮮鶏肉輸入の解禁、さらにはタイ政府における日本や韓国との生鮮鶏肉解禁に向けた取組みがたびたび報じられるなど、輸出拡大の機運も高まりを見せている。

(※)現地ブロイラー関係団体によると、解禁対象は2012年7月1日以降に孵化したものとなり、7月2日より輸出が再開された。年間総輸出量は同12%増の51万7000トン、輸出額は3.1%増の640億バーツ(1920億円)の見込みと発表。

 鶏肉調製品の輸出価格は、2011年7月(1トン当たり14万3661バーツ(43万983円))以降、高水準で推移したが、2012年に入り卸売価格に連動して下落し始め、日本向け輸出が1万5000トンを割った4月には、同13万2185バーツ(39万6555円)まで下落した。その後、EU向け生鮮鶏肉輸出の解禁を見据えて輸出価格も回復し、6月は前月比6.4%高の同14万4210バーツ(43万2360円)となった。今後、EU向け生鮮鶏肉輸出が本格化することによって、EU市場における鶏肉価格相場に変化が生じる可能性があり、タイの鶏肉調製品の輸出価格にどのような影響が出るか注目される。

図6 鶏肉調製品の輸出量と輸出価格の推移(月別)
資料:タイ財務省

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