需給動向 海外

◆中国の畜産物需給◆

堅調な国内需要を増産と輸出縮小でカバー、
小売価格は安定して推移


1.鶏肉生産・需要、共に堅調

 米国農務省(USDA)によると、2012年の中国の処理羽数は、前年比4.4%増の103億5000万羽、鶏肉生産量は同3.8%増の1370万トン、輸入量は同0.8%増の24万トンといずれも増加を見込む一方で、輸出量は同5.4%減の40万トンに減少し、国内仕向け量は4.0%増の1354万トン(1351万8000トン:同3.9%増)となる見込んでいる。

 このことから、小売価格が安定的に推移する中で、国内需要が堅調であるのに対し、飼料価格の上昇などによる国内生産の増加率の低下(当初見込み:4.0%増→3.8%増)を、輸入量の拡大と輸出量の縮減で補完する構造が伺える。なお、現地報道によると、米国企業が来年半ば(2013年6、7月頃)に、2億5000万ドルをかけて安徽省に飼料工場を含めた国内最大級のブロイラー生産施設を新設すると発表したこともあり、2013年度後半には再び国内生産の増加に弾みがつくことが想定される。

表10 中国の鶏肉需給の推移
資料 : USDA 「Poultry and Products Annual」 2012年9月公表
注1 :モミジ(鶏の足)を除く
 2 :2012年は予測値

2.小売価格は安定して推移

 中国商務部によると、鶏肉の小売価格は、2011年9月第4週以降およそ1年に渡り、1キログラム当たり18.5元から19元(241円から247円:1元=13円)の間で安定的に推移しているが、今後、国慶節等の需要期を控え、価格は上昇していくものと考えられる。しかし、中長期的に見ると、中国経済の成長は鈍化が見込まれていることから、場合によっては、所得の減少や将来への不安感などを背景に、低所得層における鶏肉消費の縮小や中所得層における、豚肉から鶏肉への消費のシフトといった、中国国民の食肉に対する需要/消費に変化が生じることも想定される。今後、中国の鶏肉の需給動向を把握するには、豚肉価格の動向や中国経済全体の動向も併せて注視していくことが肝要となる。

図13 鶏肉の小売市場価格の推移(月別)
資料:中国商務部

3.鶏肉調製品の輸出は、日本・香港向けに集約が進む

 2012年1〜8月期における鶏肉調製品の輸出量は、前年同期比4.4%増の17万1000トンとなった。輸出国別にみると、オランダ、韓国、英国は減少しているのに対し、日本、香港は引き続き増加傾向を示しており、両国への集約化が伺える。

 日本は、鶏肉調製品を主に中国とタイから輸入しているが、タイにおいては、堅調な国内需要やEUへの生鮮品の輸出解禁等を踏まえた供給力の増強が進んでいるのに対し、中国は上述のとおり、国内需要が堅調であり、輸出余力に乏しい。今後、更なる国内消費の拡大や大規模な疾病の発生などにより、日本向け輸出量に影響が及ぶことも懸念される。その場合、代替としてタイ産の輸入が増加するなど、日本の鶏肉調製品輸入に影響が出ることが想定されることから、生産量のみならず収益性や疾病の発生状況、輸出量等についても注視していく必要がある。
表11 鶏肉調製品の国別輸出量
資料:GTI社「World Trade Atlas」
  注:HSコード160232
図14 鶏肉調製品の輸出量の推移(月別)
資料:GTI社「World Trade Atlas」
  注:HSコード160232

4.輸入は、モミジの減少傾向に拍車がかかる

 2012年1〜8月期における中国の冷凍鶏肉の輸入量は、骨付き肉が前年同期比109.9%増の2万9000トンと大幅な増加を示したのに対し、モミジは、同21.8%減の10万2000トンと前年割れの状況となっている。内訳を見ると、骨付き肉では、ブラジル産が同約6.7倍と大きく増加して、全体の86.4%を占める状況となり、これまで主流であった米国産をはじめとした他国産を引き離す状況となっている。今後、米国産に代わってブラジル産が、どれだけ輸入量を伸ばすかが注目される。これに対し、モミジでは、ブラジル産が同55.4%減と大きく落ち込む一方、米国産が同527.3%の大幅な増加となり、今後もブラジル産の減少を米国産が補っていくものと考えられるが、合計量では2011年に続き減少するものと予想される。
表12 冷凍鶏肉(骨付き肉)の輸入
資料:GTI社「World Trade Atlas」
  注:HSコード02071411
表13 冷凍鶏肉(手羽)の輸入
資料:GTI社「World Trade Atlas」
  注:HSコード02071421
表14 冷凍鶏肉(モミジ)の国別輸入量
資料:GTI社「World Trade Atlas」 
  注:HSコード02071422
図15 冷凍鶏肉の輸入量の推移(月別)
資料:GTI社「World Trade Atlas」
  注:HSコード020714


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