需給動向 海外

生乳生産量は30カ月連続で前年同月を上回るも、
今後の生産量は低迷


◆米 国◆


◇絵でみる需給動向◇


生乳生産量は30カ月連続で前年同月を上回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が8月17日に公表した「Milk Production」によると、2012年7月の搾乳牛飼養頭数は、2010年9月以降前年を上回る水準で推移し、7月は922万7千頭(前年同月比0.3%増)とわずかに増加した。生乳生産量は753万トン(同0.7%増)となり、2010年2月から30カ月連続で前年同月を上回った。また、ひと月の1頭当たり乳量も2011年8月以降前年同月を上回っており、816キロ(同0.4%増)となった。

 しかしながら、対前月で比較すると、5〜7月の搾乳牛飼養頭数は3カ月連続で前月を下回る水準で推移しており、農家の増頭意欲は減退傾向にある。これは、昨年末から乳価が下落傾向にあることや、2012年6月下旬から発生した干ばつの影響による飼料不足の懸念から飼料価格が高騰していることが挙げられる。

7月の搾乳牛と畜頭数は大幅に増加し、今後の生乳生産量に影響

 干ばつの発生を受けて、トウモロコシのシカゴ相場は7月に入ってブッシェル当たり7ドルを突破し、中旬には8ドルを超え過去最高値を記録した。飼料価格高騰と干ばつによる飼料不足を懸念した生産者は搾乳牛のと畜頭数を増加させ、7月のと畜頭数は前年比13%増(図12の第1〜4週に該当する週の合計で比較)の21万8千頭となった。
図12 搾乳牛と畜頭数の推移
資料:USDA/NASS 「Market News 」
  注:横軸の月・週は、2012年を基準にしたものであり、2011年については歴の関係上不一致の週がある。

 酪農家の収益性を、手取り乳価と飼料費のバランスを基に推定すると、その差額は図13のとおり2011年11月から2012年5月まで急速に低下している。その後7月までは横ばい傾向で推移しているが、7月の収益性は前年同月の4割程度となっている。

 この背景には、オセアニア地域の生産量が高水準になると見込まれており、特にニュージーランド産乳製品との価格競争が厳しさを増していることがある。

 今後トウモロコシをはじめとする飼料穀物の収穫量が確定し、飼料向け穀物の需給ひっ迫が明らかになれば、飼料穀物価格の高値が長引き、搾乳牛のと畜の増加が続くと見込まれ、今後の生乳生産量に大きな影響を与えるものとみられる。

 と畜頭数の増加および飼料価格の高騰を受けて、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は8月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」で、2012年および2013年の搾乳牛飼養頭数予測を下方修正し、2012年は前年比0.2%増の921万5千頭とほぼ前年並を維持しつつも、2013年については同1.1%減の911万頭とした。また、2012年の生乳生産量は前年比1.9%増の9071万8千トン、2013年は同0.6%減の9021万9千トンとした。今後は、干ばつの影響による乾草の減収、穀物価格の高騰により、飼料不足が懸念されることから、1頭当たり乳量の減少が予想される。前述のとおり、飼料費の上昇が見込まれる中、小規模酪農家の中には経営の継続が困難になるものもでてくるとみられる。

図13 酪農家の収益性(乳価−飼料費)の推移
資料:USDA/NASS 「Agricultural Prices 」
  注:飼料費は、乳価の算定基礎となるタンパク質含量16%飼料の価格を「Agricultural Prices 」の
    公表数値より試算したもの

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