海外情報  畜産の情報 2012年9月号

デンマークにおける「脂肪税」の導入と
畜産物への影響

調査情報部 宅間 淳

  

【要約】

 デンマークでは、食品中の飽和脂肪酸に課税する世界で初めての制度、「脂肪税」が2011年10月より導入された。飽和脂肪酸は、乳製品や食肉などの畜産物に多く含まれることから、課税による畜産物の販売価格の上昇が想定され、それに伴う消費の減退、生産段階への影響が懸念された。このため、施行前より国内外の食品業界および畜産業界から多くの反対意見が示され、注目を集めていた。

 今回、同税施行後の状況について、税務当局、食品製造業者、農業団体に聞き取り調査を行ったので、その概要を報告する。

 現段階では、食品製造業、外食産業などに少なからず影響はみられたものの、畜産業における影響は確認されなかった。しかし、食品に対する課税は他のEU加盟国においても検討されており、各国の動向について今後とも注視していく必要がある。

1.はじめに

 2011年10月1日、デンマークにおいて「脂肪税」が施行された。脂肪税とは、食品に含まれる飽和脂肪酸に対して課税する制度である。脂肪酸は脂肪を構成する化合物であるため、飽和脂肪酸を含む食品は多岐にわたる。特に、乳製品や食肉などの畜産物は、原料自体に脂肪を含むことから、その影響が懸念された。

 なお、同税は食品中の脂肪に対して課される世界で初めての税制であったことから、施行時には国際的な耳目を集め、様々なメディアに取り上げられた。当機構でも、同税に関する情報をホームページ上に掲載したところ、大きな反響を得たところである。

 こうした中、同国に限らず他のEU加盟国においても、食品に対する税制を検討する動きが見られたため、同税が畜産に与える影響に関し、実態を把握することとした。

 今般、これらの状況を踏まえ、脂肪税施行後のデンマーク国内の状況について現地調査を行ったので、その概要を報告する。

2.制度の概要

1)課税対象と税率

 本税の対象となるのは、食肉、乳製品、食用油やマーガリンなどの食用油脂であり、それらに代わって利用される食品も含まれる。これらの食品のうち、飽和脂肪酸含有量が重量当たり2.3%を超える場合に課税の対象となる。

 また、対象となる食品は、デンマーク国内で製造されたもの、輸入された食品である。

 なお、家畜飼料のような食用以外の品目(ノンフード)、デンマーク国外への輸出品は課税対象とならない。

 税率は、食品中の飽和脂肪酸1キログラム当たり16デンマーククローネ(208円:1デンマーククローネ=13円)である。

2)納税対象者と納税手続き

 納税対象者は、課税対象物の取り扱い事業者であり、次の4者を対象にしている。(1)デンマーク国内の食品製造業者、(2)EU域内で製造された食品を販売する業者、(3)EU域外から食品を輸入する業者、(4)EU域内の業者で、同国内で食品を販売する業者(通販など含む)、である。

 これらの納税対象者は、事業を開始するに当たって、税務当局に「事業者登録」を行う必要がある。なお、年間売上5万デンマーククローネ(付加価値税込、65万円)未満の小規模事業者については、納税および登録の対象外となる。

 納税対象者は、納税額を毎月算出し、納税する。納税額算出には、食品データベース(www.foodcomp.dk)の飽和脂肪酸含有量を用いるか、個別に精密な分析を行い、そのデータを利用することも可能である。

 なお、食肉については、部位、カットにより極めて大きな差が生じることから、スライスレベルで税額を決定することができる。
表1 概要一覧
資料:デンマーク税務省(SKAT)
図1 概念図 〜脂肪税の納税対象者の分類〜
資料:デンマーク税務省(SKAT)
図2 概念図 〜豚肉が小売店に至るまで〜
資料:デンマーク税務省(SKAT)および聞き取りにより作成

3)税制導入の目的と経緯

(1)脂肪税の目的

 脂肪税について定めた法律の法案提出時の趣旨説明文によると、導入の目的は以下のとおりである。

 本法案の目的は、食習慣の向上を促進し、それによって国民の健康を増進することにある。

 これは、食品に重量当たり2.3パーセントを超える飽和脂肪酸が含まれている場合、飽和脂肪酸1キログラム当たり16クローネを課税し、飽和脂肪酸の摂取量を減少させることで行う。食品には、飽和脂肪酸の含有量が高いものと、低いものがある。推奨される食生活では、毎日の食事のなかに一定量の脂肪分を含めることとされているが、この脂肪分を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸の方が健康に良い効果をもたらす。

 飽和脂肪酸の含有量が高い典型的な食品は、乳製品、肉製品、脂肪品、油であり、一方で穀物製品、果実、青果の飽和脂肪酸含有量は低い、もしくは全く含まない。
※デンマーク法律文書「Lov om afgift af mættet fedt i visse fødevarer (Fedtafgiftsloven)」
  (邦訳:一部食品中の飽和脂肪酸の課税に関する法案(脂肪税法))の添付文書序論(抜粋)を機構にて邦訳

 つまり、最終的な目的は、「食習慣の向上を促進し、それによって国民の健康を増進すること」である。この目的に沿った国民の消費選択を促すための手法として、飽和脂肪酸を多く含む食品がその他の食品よりも価格が高くなるよう、食品中の飽和脂肪酸に対して課税することとしている。

(2)税制導入の背景と経緯

 2009年、デンマーク政府は財政改革の一環として、「健康に悪影響を与える食品による財源確保」などを掲げた「スプリング・パッケージ(Spring Package) 2.0」を提案し、2010年には議会を通過した。「スプリング・パッケージ2.0」は、多額の公債と債務利払いおよび政府最終消費支出により、不均衡状態にあったデンマークの財政を、2015年までに強化することを目的にした税制改革である。特に、労働力の供給を増加させることで長期的な財政状況の健全化を目指したものであり、(1)所得階層全般に及ぶ所得税の減税、(2)消費税収入の気候変動と環境対策への活用、(3)不健康な食品やタバコなどに対する課税などが主な内容であった。この内容に沿って、タバコやアルコール飲料の増税が実施された。しかし、同案に対応した「不健康な食品」に対する課税の具体策として提出された脂肪税は、消費者および食品業界からの強い反対をうけ、成立は見送られることになった。特に、食品業界からは、飽和脂肪酸の含有量計測などの対応が困難であるとの理由から反対があった。

 また、産業界のみならず社会的な影響として、廉価な加工食品の利用が多い低所得者層への負担増を指摘する声もあがった。加工食品は、消費段階で飽和脂肪酸含有量を調整することはできず、製造段階でのコスト増がそのまま販売価格へ転嫁されることが懸念されたからである。

 当然、課税対象となる食品を生産する畜産業界からも反発が起きた。酪農業界では、デンマークの組合企業、アーラ・フーズ社が牛乳・乳製品の消費減退を招くことにより、1億2500万ユーロ(約120億円:1ユーロ=97円)の損失が生じると発表した。欧州酪農協会(EDA)からは、輸入乳製品も脂肪税の課税対象であり、EU域内の市場に不均衡を生じさせる可能性があることから、欧州レベルで議論すべきであるとの反対意見が表明された。

 また、食肉産業界からは、カットの方法などを考慮せず、畜種や部位により一律的に課税する手法に対し、不合理かつ不公平であるとの意見が示された。

 さらに、デンマーク農業理事会からも、脂肪税導入が雇用の減少や対象食品の生産抑制による経済的損失、子供の成長に必要な牛乳やチーズなどの消費減による健康への影響を招く懸念があるとコメントを発表した。

 このように、関係する業界組織から多数の反対意見が示されたものの、政府は導入に踏み切った。これは、2011年10月、EUの食品ラベルに係る規則改正により、食品ラベルに飽和脂肪酸の含有量の表示が義務づけられたことが転機となった。EU域内で統一された食品表示が制度化されたことにより、国内外の食品に対して公平に課税することが可能となったため、食品業界などの理解を得て、導入にこぎ着けることができた。

 なお、本税の目的は上述のとおりであるが、報道などによれば、財政難に苦しむ政府が財源確保を意図しているなどとも伝えられた。

3.脂肪税施行後のデンマークの状況

1)行政の視点

 デンマーク税務省(SKAT)担当官によれば、ほぼ当初の見込み通り税収が得られており、制度として大きな課題は発生していない。

 同省がとりまとめた資料によれば、施行された2011年10月には導入前の買いだめの影響もあり、若干の消費量の落ち込みがあったものの、翌月からはほぼ従前の消費量に回復した。施行後4カ月間で当初見込み税収の91%を達成しており、導入前の試算と大きな乖離(かいり)はみられない。なお、計画では脂肪税導入により、年間14億デンマーククローネ(182億円)の税収増を見込んでいる。

 直近の税収実績を見る限り、政府予測値よりも若干の税収減が見受けられるものの、その要因が消費者の商品選択によるものかについては、施行して間もないことから現段階では判断できない。

 しかし、同省は消費者の購買行動は必ずや健康的な製品を選ぶように変化するものとみており、その変化はしわ寄せを受けるとされる貧困層にも波及すると考えている。中長期的には、脂肪税により飽和脂肪酸の少ない食品を選ぶ傾向が強まるなど、国民全体の消費行動の改善に貢献すると見ている。
表2 脂肪税による税収額の推移
資料:デンマーク税務省(SKAT)
表3 脂肪税導入による価格変化
資料:デンマーク税務省(SKAT)
 

2)流通業者の視点

 小売段階などへの影響については、パンの製造・販売業のアンデルセン社と外食産業団体であるホレスタ(Horesta)からの聞き取り調査を行った。

(1)小売業への影響

 パン製造販売業のアンデルセン社は、広島県に本社を置く日系企業である。創業者がデンマークにおいてデニッシュペストリーの製法を学んだ同社は、その製法をもとにしたベーカリーを日本国内で展開している。現在は、デンマークの首都、コペンハーゲンにも3店舗を営業している。

 脂肪税の影響について、アンデルセンデンマーク社長の豊島(てしま)氏によると以下のとおりである。

○増税分の小売価格への転嫁

 日本において物品に対する増税が課せられた場合、課税分を小売価格へ単純に上乗せすることは難しい。値上げ前に、まず企業努力として、生産段階のコスト削減や、原料調達先の変更などにより仕入れコストの削減を図るなどの対応がとられるだろう。しかし、現地で確認したところ、増税によりかさんだ原料仕入れコストとほぼ同額をパンなどの小売価格に反映していた。

 この背景として、デンマークでは、バスの乗車賃など公共料金をはじめとして、日常生活に関わる物価が毎年のように値上げされているという事実がある。その範囲は、主食であるパンなど、食料品についても例外ではない。値上げの要因は、燃料費の高騰など様々であり、消費者サイドでは値上げが実施される理由について判別し難い状態になっている。

 また、流通・販売段階においても、費用が上がれば販売価格を上げるということが通常の判断となっており、小売価格の値上げについてもためらうことはない。

 この傾向は、ベーカリーでも同様であり、大手メーカーに続きアンデルセン社でも販売価格の改定を行った。

○価格改定に伴う消費者行動の変化

 脂肪税施行により、バターやマーガリンなどの原料が10%程度値上げされたため、同社では原料費増の相当額分の値上げを行った。バターなどの配合量が多いスイーツ系商品への値上げが他商品と比べやや大きかったこともあり、感覚的ではあるが、同商品の販売量がやや減少し、全体としては若干の客単価減少に繋がった。しかし、スイーツと比較して上げ幅は少ないものの、値上げを行ったペストリーなどの定番商品には、買い控えなどの影響は見られなかった。

 このため、消費者の購買行動に変化を及ぼしたのは、商品選択の変化によるものか、価格の上昇によるものかは判別しかねる段階にあるといえる。


定番商品のペストリー

通常のペストリーを小型にしたもの
(アンデルセン社が開発)
低カロリー志向をうけて好評を博している
○小売店としての今後の見通し

 デンマークは充実した福祉制度を備えるとともに、高額な消費税(付加価値税)や所得税を課すことで知られているが、これらの税制において今以上の増税は見込めないというのが国内世論の見方である。このため、税収の増加を目指す政府は、懲罰的な意味を含ませた制度導入などの手法を探っており、脂肪税の導入もこの一環であると考えられている。さらに、脂肪税のほか、砂糖を含んだ菓子などへの増税(注)も既に実施されている。食品業界としては厳しい立場におかれつつあり、これ以上税率が高くならないよう働きかけていくとのことである。

 また、デンマーク国民の志向として、従前より低脂肪の製品、オーガニックの製品を好む傾向がある。このことから、脂肪税が健康的な食品選択を促進するというよりも、既にある大きな流れの中でその傾向が強まるのではないかとの見方もある。

(注)2012年1月1日より、チョコレートや清涼飲料水など、砂糖を含んだ食品に対して増税が行われた。具体的には、板チョコレート(100グラム)で、0.75デンマーククローネ(10円)、清涼飲料水(500ミリリットル)で0.31デンマーククローネ(4円)の値上げとなった。

デンマークのスーパーマーケットから

 現地で訪れたスーパーマーケットで、日本には無い食品表示を見かけた。デンマークが食品中の脂肪分などを気にかけている具体例として、スーパーで見かけた食品表示を紹介したい。

(2)外食産業における動向

 ホレスタ(Horesta)は、デンマーク国内のホテル、レストラン、観光などを営む約2,100の企業を会員とする組織である。会員企業で、70億デンマーククローネ(910億円)の人件費を支出しており、外食関連企業の従事者の75%を占めている。

 同組織によると、デンマークにおけるレストランなどの外食産業では、総コストのうち人件費が48%、食材コストが30%を占めており、また、食材コストが1%増加した場合、収益は8%減少すると試算している。食材コストの増加に直結する脂肪税は、会員企業に大きな影響を及ぼすことから、ホレスタでは2011年12月に会員に対し脂肪税に関するアンケート調査を行った。概要は次の通りである。

○コストの増加状況

 脂肪税導入による食材コストの増加については、回答者のうち87%が「上昇した」と回答している。要因として脂肪税の影響も考えられるが、同国における恒常的なコスト増とみなすこともでき、全てが増税の影響によるものと見なすのは難しい。アンケート結果で明らかにされていることは、税務申告に係る手間と管理コストの増加である。施行により、納税額の増加以外で対応を要する事項として、38%の企業が「管理と計算に時間を要する」と答えている。他に、30%以上の回答を得たのは「新規メニューの開発」と「食材の変更」である。

○利用食材の変化

 飽和脂肪酸を含む食材の利用量についての項目では、回答者のうち63%が「特に減らさない」とし、26%が「わずかながら減らす」と回答している。課税対象となる食材を減らそうとした場合、食材自体、もしくは食材の利用量の変更が必要となり、メニューの変更を迫られることになる。このため、代替品の利用などについて、検討はしたものの実際にそこまでの対応は行われていないことがわかる。

○管理コストの増加が課題

 以上より、ホレスタでは、脂肪税の導入によって管理コストが増加することが最大の課題であるととらえている。

 なお、コストの増加分は、価格に税率分を転嫁することでは完全には補完できず、会員企業では0.7〜1.0%程度の収益減が起きるだろうと予測している。

 また、アンケート調査の範囲外で、(1)食肉に対する課税額が各畜種の平均的な飽和脂肪酸含有量から計算されること、(2)料理などに飽和脂肪酸含有量を表示することが義務化されていないこと、などを理由に不公平な税制であると問題にしている。特に、前者については、食肉のカットが小さくなればなるほど飽和脂肪酸含有量が減少していくため、外食産業が利用する卸売業者よりも、精肉設備を持つスーパーマーケットの方が課税額が少なく済む点について、公平性に欠けるとしている。

3)畜産物生産者の視点

 畜産業への影響について、デンマーク農業理事会からの聞き取り調査を行った。
デンマーク農業理事会(以下「農業理事会」という)は、農業・畜産の品目ごとの組合組織の代表者で構成されており、同国における農業分野の中央組織である。農業関係機関との連携を図るとともに、各種の調査活動や、農業生産者への情報提供、諸外国への情報発信などを担っている。

(1)生産者への影響
 
 一般的には、川下で増税が行われると、収益性の確保を目的に食肉および乳製品の「製造者」であるパッカーなどはコスト圧縮を図るため、「原料調達元」である畜産農家に対して、肉豚や生乳価格を買いたたくことなどが考えられる。しかし、現状としてデンマークにおいて、このような事象は発生しておらず、畜産農家への影響は見られていない。

 これは、同国における畜産物の流通形態に関係している。

 デンマークにおいて、畜産物流通の大宗を占める企業は、乳製品(アーラ・フーズ)、食肉(ダニッシュクラウン)ともに組合企業ともいわれる協同組合が元になっている。これらの企業が、畜産農家が出荷した生産物を購入し、加工して製造業者に卸すか、もしくは製品化し、食品製造業者あるいは小売店に販売している。

 組合企業は、農業生産者の出資によって設立されている。このため、生産者が著しく不利益を被るような取引を行わないことから、生産者価格の低下などの事態は免れている。

(2)生産者団体の立場

 農業理事会としては、この制度は不公平なものであり、引き続き撤廃を求めていく姿勢である。同理事会は不公平である点として、次の2点をあげている。

 一つ目は、部位やカットの方法により飽和脂肪酸の含有量が異なるにもかかわらず、それを適正に評価する仕組みがないこと、二つ目は、消費者の手元に至る途中段階で課税されることから、最終的には消費者が過大な税額の負担を求められていることである。(例えば、消費者が小売店で買う食肉は100グラム当たり5グラムの飽和脂肪酸しか含んでいないが、登録事業者が納税する段階の製品が100グラム当たり10グラムの飽和脂肪酸を含んでいた場合、「飽和脂肪酸10グラム」に応じて納税することとなる。その結果、消費者は実際に購入する製品分以上の過大な税額を負担することになる。)

 また、デンマークではタバコやアルコールなどの嗜好品に対しても課税している。農業理事会としては、食品をこのような嗜好(しこう)品と同列に扱い、「不健康」なものとして課税すること自体が誤っていると主張しており、この点からも反対を表明している。

(3)今後の脂肪税を巡る動向

 農業理事会は、畜産物の消費動向についての情報収集を行っている。スーパーマーケットチェーンが実施した調査によると、これまで高価格良品質の製品を購入していた消費者が、飽和脂肪酸は同程度であるものの低価格の製品を選ぶ傾向にあるという結果が出ている。しかし、理事会が独自に行った調査では、乳製品の販売量が以前より5%程度増加したとのデータもあり、矛盾した結果となっている。精緻な影響把握にはまだデータが不足しており、施行から1年間程度の蓄積が必要であると考えられている。

 なお、施行されたばかりの制度であるが、2012年内に改正が予定されているとのことである。登録事業者同士の連携が可能になるなどの改正が見込まれているものの、食肉分野にとって有利な改正は行われないものと見られている。

4.まとめ

 税務当局の担当者が話していたとおり、国民が自身の健康のため、政府の意に沿った食品選択を実践するには、食生活をはじめとした生活習慣を変化させることが必要である。

 脂肪税施行後、極めて短期的には課税対象の食品の消費が落ち込む傾向をみせたが、2カ月程度で消費は施行前のレベルまで回復している。このことから、「不健康」と分類された食品に対し、増税により価格面での障壁を設けても、それが継続的に「健康」と評価された食品への選択に繋がるかは、データの蓄積に時間を要するとともに詳細な分析が待たれる。

 今回の調査では、畜産業に対する直接の影響は確認されていない。しかし、政府としてはほぼ当初の想定通りの税収増が達成されたようにみえる。では、その税収の原資であり、脂肪税として増加したコストはどこから捻出されているか。結論から言えば、消費者が食品の購入をとおして負担しているといえ、高率な消費税と定例的に生活必需品の値上げが実施される環境であるからこそ受け入れられたものである。

 施行から半年が経過したのみであり、統計への反映や具体的な評価には時間が足らず、消費実態に関しての定量的な分析を行うことはかなわなかったが、デンマークの畜産業を取り巻く懸念事項の一つとして把握することができたと考えている。

 食品に対する課税は、本稿で取り上げた脂肪税に限らず他のEU加盟国においても動きが見られる。具体的には、ハンガリーで栄養ドリンク、ポテトチップスなどに適用される国民健康製品税が導入されており、イギリスでも、乳製品への課税が検討されているとの報道がある。ユーロ圏の経済不振が続く中、肥満や健康への関心を後ろ盾として、食品分野を新しい財源として注目しているものと思われる。しかし、このような動きは、畜産物が脂肪を過剰に含んだ食品であり、健康へ悪影響を及ぼすという誤った印象を消費者に与えかねず、今後の動向を注視していく必要があろう。



 
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