需給動向 国内

◆豚 肉◆

大規模層の生産者への集約が進み、1戸当たり飼養頭数が増加


◇絵でみる需給動向◇


 後継者不足や飼料価格高騰に伴う中小規模生産者の廃業などにより、豚の飼養戸数減少は歯止めがかからない状況にある。農林水産省が平成25年7月2日に公表した「畜産統計」によると、2月1日現在の豚の飼養戸数は、前年をやや下回る5,570戸(前年比4.6%減)となった。飼養頭数が昭和35年の調査開始当初から5倍程度に増加し、その後は若干減少するものの下げ止まって推移している中、37年には100万戸を超えていた豚肉生産者が、約50年の間で0.6パーセント程度にまで集約されたこととなる。

 飼養戸数を肥育豚飼養頭数規模別に見ると、小規模層(300頭未満、以下同じ)は1,460戸(同1.4%減)と前年からわずかに減少したものの、大規模層(2,000頭以上、以下同じ)は1,030戸(同4.4%増)と、前年からやや増加した。

 総飼養頭数は968万5000頭(同0.5%減)と、前年からわずかな減少に留まり、子取り用めす豚の飼養頭数は前年並の90万頭となった。肥育豚飼養頭数を規模別に見ると、小規模層が23万6000頭(同7.9%減)と減少したものの、大規模層は658万3000頭(同3.0%増)とやや増加した。

 この結果、1戸当たり飼養頭数は1,739頭(同71.8頭増)と増加が続いている。以上により、養豚業界は、小規模生産者の廃業が進むのと並行して、経営の合理化、効率化による大規模生産者への集約が進展していることが読み取れる(図5、表2)。
図5 豚の飼養戸数・頭数の推移
資料:農林水産省「畜産統計」
注 1:数値は各年2月1日現在
  2:平成22年は世界農林業センサスの調査年のためデータなし。
表2 豚の飼養頭数規模別飼養動向
資料:農林水産省「畜産統計」
  注:数値は各年2月1日現在

飼養戸数は全ての地域で減少、飼養頭数は北海道、東海、中国で増加

 地域別に見ると、飼養戸数は全ての地域で前年を下回った。中でも、東北、近畿、中国、四国においては、8パーセントを超える減少となっている。一方、飼養頭数は、北海道、東海および中国で前年に比べて増加したものの、その他の地域では減少した。

 なお、地域別の飼養頭数割合は、関東・東山および九州で全国の約6割を占めており、中でも鹿児島、宮崎、千葉、群馬の上位4県で、全国の約4割を占めるという、特定地域集中型の産業構造に変わりはない。
表3 豚の地域別飼養動向

資料:農林水産省「畜産統計」
  注:数値は各年2月1日現在

5月の冷蔵豚肉輸入量、2万6000トン強の水準に増加

 以上のように、飼養頭数は前年並み、国内生産量は前年並みまたは微増で推移している中、夏場の需要期を前に、豚肉輸入量の動向に注目が集まっている。5月の冷蔵品豚肉輸入量は、前年同月を19.4ポイント上回る2万6353トンと大幅に増加した(財務省「貿易統計」)。単月ベースで2万6000トン台という輸入量は、過去に例を見ない高い水準となる。一方、冷凍品は、税関当局による通関審査の厳格化および前年同月の輸入量が多かったことなどの反動により、同21.7パーセント減の3万9613トンと大幅に減少した。この結果、冷蔵冷凍合計では同9.2パーセント減の6万5966トンと、前年をかなりの程度下回った。

 冷蔵品が大幅に増加した要因としては、前述の冷凍豚肉の輸入量減少に伴う加工用部位(うで、もも)の代替需要としての影響が大きかったと推測される。これにより、市中では、冷蔵品のうち、加工用部位とコンビネーションで輸入されているロースなど高級部位を中心に、荷余り感が生じることとなった。国産相場が、5月には500円を超える水準で推移していたものの、例年相場が上昇する6月に入り一転下落に転じたのは、こうした影響が大きいと考えられる。

                                      (畜産需給部 藤原 琢也)


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