需給動向 海外

◆米 国◆

経営の大幅な縮小は回避も、生産量は減少見込み


◇絵でみる需給動向◇


12月の飼養頭数は前年同月並み、経営の大幅な縮小は起こらず

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が12月28日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、2012年12月1日現在の豚飼養頭数は前年同月とほぼ変わらず6635万頭となった。うち、子取用めす豚頭数は同0.2%増の581万7000頭となった。

 飼料穀物価格の高騰が響き、2012年の養豚経営は収益が悪化した。一部関係者からは頭数減を予測する声も聞かれたが、結果的に前年の水準を維持した。米国の養豚は飼養頭数の6割程度がコーンベルト地帯で飼養されており、ここで生産者は養豚業と穀物生産の複合経営を行っている場合が多い。このような経営形態により、飼料穀物価格高騰の影響をある程度吸収でき、経営規模の大幅な縮小を回避できたとみられる。加えて、養豚経営者は豚舎や機械、種豚導入に多額の投資をしており、仮に収益が悪化しても経営を維持せざるを得ない状況にある。

 なお、9〜11月の1腹当たり産子頭数は10.15頭となったが、これは同期間における過去最高頭数である。
表4 豚飼養頭数の推移(12月1日現在)
資料:USDA/NASS 「Quarterly Hogs and Pigs」
 注:2012年と2013年を比較

2013年の生産量は減少見通し

 飼料穀物価格の高騰の影響による養豚経営の大幅な縮小は起こっていないものの、2013年3〜5月の分娩見込み頭数は減少するとみられる。これは、生産者が母豚頭数を維持しつつも種付頭数を減らすなどの対応を取ることで、飼料費を減らし生産コストの抑制に取組んでいるためと考えられる。

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が12月17日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2013年の豚肉生産量は、第1四半期:前年同期比2.5%減、第2四半期:同2.2%減、第3四半期:同1.5%減と、各四半期とも減産し、通年でも前年比1.7%減の1033万トンとの見通しを示した。

10月の豚肉輸出量はわずかに増加、2013年も2012年の水準を維持か

 米国産豚肉輸出はおおむね好調である。USDA/ERSによると、2012年10月の豚肉輸出量は、前年同月比2.2%増の22万4000トンとなった。2012年1〜10月の輸出量は、メキシコ向けが前年同期比15.6%増、カナダ向けが同17.4%増、ロシア向けが同44.9%増となり、日本、韓国向け輸出量の減少分を相殺した。結果、2012年1〜10月の輸出量は203万7000トンに達し、同7.1%増となった。8月および9月の輸出量は前年同月の水準を下回ったが、通年での輸出は堅調であった。

 輸出増加の要因は、北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国であるメキシコおよびカナダ向けのほか、ロシア向け輸出が堅調に伸ばしていることがある。特にロシア向けの増加は、2012年8月にWTOに加盟したことで、南米産などを優遇していた豚肉の国別輸入枠が廃止されたことによるものとみられる。なお、中国(香港含む)向けも輸出量は前年同期に比べ大幅に増加しているが、EU産の輸入が増加しており、8月以降前月を大幅に下回る水準で推移している。
表5 米国産豚肉輸出量(1〜10月)
資料:USDA/ERS
 好調な豚肉輸出を反映し、USDA/ERSは2012年の豚肉輸出量を前年比5.0%増の247万1000トンと見込んでいる。2013年の輸出量も、前年をわずかに下回る247万トンと予測され、輸出は引き続き好調であると見込まれている。米国における豚肉消費の拡大が見込みにくい中、堅調な輸出が生産者の生産意欲を維持する一要因となると考えられる。


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