需給動向 海外

◆飼 料◆

米国農務省、トウモロコシ、先月の予測値が据え置かれる


◇絵でみる需給動向◇


◇米 国◇

米国農務省、トウモロコシ、先月の予測値が据え置かれる

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は12月11日、12月の世界農産物需給推計の月次報告を公表した。米国における2012/13穀物年度(9月〜翌8月)のトウモロコシは、生産者平均販売価格以外全て前回の予測値に据え置かれ、大豆は消費量の増加が見込まれることから、在庫量は下方修正された。なお、米国のトウモロコシおよび大豆は既に収穫を終了しており、12月は作況調査が行われないことから、生産量などの生産に係る数値の変更はない。

 トウモロコシの生産者平均販売価格は、価格高の影響により消費量が減退するとみられ、前月予測値から上値、下値ともに下方修正され680〜800セントと予測された。

干ばつによる減産に加え、輸送面でも懸念

 6月中旬以降、深刻さを増した干ばつは、10月に入り東部コーンベルト地帯では多少緩和されたが、サウスダコタ州、ネブラスカ州などの中西部からテキサス州にかけての地域では一向に改善の兆しが見えない状況が続いている。長引く干ばつはトウモロコシなどの収穫作業には好都合だったが、土壌水分量が極めて低い状態が続いており、今後、十分な降雪がなければ2013/14年度のトウモロコシ生産に影響を与えることになる。また、ネブラスカ州では、かんがい率が65%程度に達しているため、2012/13年度の干ばつの影響は他州に比べ小さかったが、冬季間の降雪量が平年を大幅に下回るようであれば、翌年のかんがい用水の確保に支障が出かねない。

 2012年の干ばつは、トウモロコシの生産だけでなく、物流にも影響を及ぼしている。ミシシッピ川は、コーンベルト地帯を含む米国内陸部各州とメキシコ湾岸の港湾を結ぶ物流の大動脈であり、内陸からトウモロコシなどの農産物を船舶で輸送し、帰りの便で肥料などの農業資材を輸送している。ミシシッピ川の水位は、記録的な水準まで低下しており、11月上旬の段階で既に90隻以上の船が通行不能になっている。このような状況を受け、米国水路協議会は、11月30日、連邦政府に対してミシシッピ川の航行確保のための緊急対策を求める声明を発表した。声明の中で、同協議会は、現在の状況が続けば、2012年12月中旬にはミシシッピ川を利用した全ての水運が困難になるとし、そうなれば12月中旬から翌1月末までの間に少なくとも農産物700万トン、石化製品130万トン、原油70万トン、石炭380万トンなどの輸送に支障を生じるとしている。同協議会は、政府に対し、ミズーリ川からミシシッピ川への流入水量制限を停止することと、イリノイ州テーベス・グランドタワー間の川底にある岩礁の破壊を求めている。現在まで、これについて政府は、否定的であることから、乾燥状態が長引けばトウモロコシの輸送は、貨車輸送により北西海岸から船積みせざるを得なくなり、物流コストが高くなる可能性がある。
表12 米国におけるトウモロコシの需給見通し(2012年12月11日米国農務省公表)
資料:USDA/WAOB「World Agricultural Supply and Demand Estimates」
  注:年度は、各年9〜翌8月

◇世 界◇

トウモロコシ、中国で記録的な増産が見込まれるも世界全体では前年を下回る

 2012/13年度における世界のトウモロコシ生産量は、中国でトウモロコシ価格優位性によって転作が進んだことや夏場の天候に恵まれたことなどから、記録的な増産が見込まれるものの、干ばつの影響による米国の減産が予測されることから、前年度比3.7%減の8億4909万トンと予測された。

 輸入量は、欧州で増加が見込まれるものの、世界的なトウモロコシ消費国である中国などで減少が予測されることから、同3.5%減の9532万トンと予測された。

 一方、輸出量は、増産が見込まれるアルゼンチンおよびカナダ、ロシアで増加が見込まれるものの、主要輸出国である米国、ブラジル、ウクライナで減少が見込まれることから、同19%減の9125万トンと大幅に落ち込むものとみられる。

 消費量は、飼料向けの増加が見込まれる中国や欧州などで増加が予測され、特に中国では食用向けなども増加が見込まれる一方、トウモロコシ価格高騰により世界的に消費量の減少が予測されることから、同1.7%減の8億6252万トンと見込まれる。

 なお、期末在庫は、主要生産国である米国およびブラジルで減少が見込まれることから同10.2%減の1億1761万トンと予測された。
表13 主要国におけるトウモロコシの需給見通し(2012年12月11日米国農務省公表)

資料:USDA/WAOB「World Agricultural Supply and Demand Estimates」
  注:年度は、世界各国の穀物年度

南米の増産により、輸出量は増加見通し

 2012/13年度における世界の大豆生産量は、主要生産国である米国や欧州で減産となるものの、南米で前年を大幅に上回る増産が見込まれることから、前年度比11.7%増の2億6772万トンと増産の見通しとなった。

 輸入量は、中国の輸入量の増加により、同3.5%増の9631万トンと予測された。

 一方、輸出量は、不作の米国に代わり南米の増産が見込まれており、輸出向けが増加することから、同9.3%増の9885万トンと予測された。

 消費量は、主に中国で前年を上回ることが見込まれることから、同2.0%増の2億6125万トンと予測された。

 なお、期末在庫は、同7.0%増の5993万トンと予測された。
表14 主要国における大豆の需給見通し(2012年12月11日米国農務省公表)
資料:USDA/WAOB「World Agricultural Supply and Demand Estimates」
  注:年度は、世界各国の穀物年度

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