需給動向 海外

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豚枝肉価格は下落基調にあるものの、依然として高い水準


◇絵でみる需給動向◇

2012年11月の豚枝肉卸売価格、前年同月比13.3%高

 欧州委員会によると、EUにおける11月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり181.04ユーロ(19,552円:1ユーロ=108円)と前月から4.3%下落、前年同月比で13.3%高となった。8月から高騰した豚枝肉価格は、11月現在、前年同月と比べ23.2ユーロ(2,506円)高と依然として高い水準にある。

 EUの豚と畜頭数は、前年同月と比較し8月は約6%減、9月は約10%減となっており、供給不足が価格高騰の原因と考えられる。10月以降、と畜頭数は回復傾向にあるものの、未だ供給は不足感を残している。

 11月の豚枝肉卸売価格の下落は、EUの主要な生産国のほぼ全域で起きている。特にドイツ、スペイン、フランスでは価格下落の影響が大きい。

 なかでもフランスは、養豚農家の負債が農業分野で最も大きく、フランス農業省によると、2010年の養豚農家1戸当たりの負債額は33万2000ユーロ(約3586万円)あり、このうち約35%に相当する11万5000ユーロ(約1240万円)が短期借入金となっている。飼料価格高騰の影響で生産コストが増加する中、価格下落が継続した場合、資金繰りのさらなる悪化が懸念される。このような短期的な収益性の悪化と2013年1月から導入される妊娠豚のストール飼い禁止に向けた設備投資に苦しむ養豚農家の要請に応え、11月中旬、同国の農業相と食料相が養豚農家の代表らと会合をもち、養豚経営の改善に向けたアクションプランを話し合った。この会合の結果、農業省にフランス養豚業界の近代化と競争力強化を検討する作業部会が設置されることとなった。

図6 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

輸出量は堅調なものの好調な域外輸出にかげり

 欧州委員会によると、2012年の第1〜3四半期までの内臓肉などを含む豚肉の域外輸出量は前年同期比0.9%増(206万450トン)となった。しかし、内臓を除いた可食部位は、同0.3%減(137万5989トン)となっており、好調であった輸出にかげりが見え始めた。

 前年と比較し、最大の輸出先であるロシア向けは、減少がもっとも大きく、同8.1%減(61万1931トン)となった。特に、豚肉(冷蔵・冷凍)では、同15%減となった。ロシアには依然として堅調な豚肉需要があるものの、チリなど南米諸国からの輸入も多く、EU産のシェアが縮小されつつある。2011年はユーロ安の後押しを受け、高い競争力をもったEU圏の豚肉であるが、2012年に入り域内価格が高騰したことにより、価格優位性が失われつつあるものとみられる。なお、ロシアのWTO加盟で、国別の特別枠が撤廃されるとともに、関税率が引き下げられることから、今後、ロシア市場ではいっそう激しい輸出国間の競争が見込まれる。

 なお、2012年に最も輸出が伸びたのは、中国向けであり前年同期比53.4%増の21万6562トンとなった。一方、香港向けは同30.6%減の16万1416トンとなったものの、両者を合わせると、EUの輸出全量の18.3%を占めており、ロシアに次ぐ第2位の輸出先国となっている。中国・香港向けで特徴的なのは、内臓肉などの輸出量が多いことであり、EUからの内臓肉などの輸出全量の25.9%を中国・香港向けが占めている。
表3 EU域外への豚肉等輸出量(2012年第3四半期累計:1〜9月)
資料:欧州委員会


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