調査・報告  畜産の情報 2014年5月号

平成24年度乳製品の流通実態調査の結果について

畜産需給部 乳製品課



【要約】

 当機構では、平成24年度における乳製品の需給動向を把握するため、乳業メーカー等に対し、販売先の業種や、その用途についての実態調査を実施した。本稿では、このうち、生乳・乳製品の需給上、特に重要な品目とされるバターと脱脂粉乳について報告する。

 本調査の結果、輸入バターは乳業メーカーや加工油脂メーカーで消費されやすい傾向があること、脱脂粉乳は特に乳業メーカーの社内消費が減少し、脱脂濃縮乳に置き換えが進んでいる状況などが明らかとなった。

1.調査対象および回収率

 調査対象は、乳製品の供給者である乳業メーカー、需要者である食品製造業や外食業、ホテル業であり、調査対象数は1,151社、有効回収数は268社(有効回収率23.3%)であった。 ただし、大手乳業4社などからは回答を得ており、出回り量ベースでは9割程度のカバー率となっている。

2.平成24年度における乳製品の需給

 平成24年度のバターおよび脱脂粉乳の生産量は、いずれも前年度比では増加したが、過去20年間では2番目に低い水準となっている。このため、乳業メーカーは需要者に対して計画販売により、抑制的な供給をせざるを得なかった。バターおよび脱脂粉乳の概要については以下の通りである。

(1)バター

 24年度のバターの需給は、生産量が消費量を下回ったことから、23年度から引き続き逼迫基調で推移した。24年度の生産量は7万100トン(前年度比11.2%増)、大口需要者向け価格(農林水産省)は、年度平均で1キログラム当たり1,207円(同8.1%高)となった。バターについては、供給不足が見込まれたこともあり、当機構がカレントアクセスおよび追加輸入により、9,400トンを輸入し、市場に放出した。

(2)脱脂粉乳

 24年度の脱脂粉乳の需給は、生産量が消費量をわずかに上回った。24年度の生産量は14万1400トン(同4.8%増)、大口需要者向販売価格(農林水産省)は、年度平均で25キログラム当たり1万5526円(同3.8%高)となった。

3.流通経路と業種別・用途別消費量

(1)バター

 平成24年度における国内のバターの推定出回り量7万5300トン(機構調べ)の流通経路と業種別消費量の推計を行った結果は、次の通りである。

1)流通経路

 流通経路を見ると、推定出回り量※7万5300トンのうち、国産が6万5100トン(推定出回り量に対する構成比86.5%)、輸入が1万200トン(同13.5%)となっている。

 このうち、乳業メーカー(社内消費)が9400トン(同12.5%)、乳業メーカーからの社外販売が6万300トン(同80.1%)、機構から一次卸への売渡しが5200トン(同6.9%)、業務用メーカーへの売渡しが400トン(同0.5%)となっている(図1、表1)。

 乳業メーカーなどから需要者にバターが供給される流通経路において、一次卸を通じての販売は5万4800トン(同72.8%)と大きなシェアを占めており、卸売業者が流通に果たす役割は大きい。

※推定出回り量=前年度末在庫量+当年度生産量+当年度輸入量−当年度末在庫量
  推定出回り量=推定消費量
図1 バターの流通ルート(24年度)
注1:供給者(緑色):推定出回り量75,300トン=(1)65,900トン(乳業メーカーの自社製造+
    在庫取り崩し等)+(2)9,400トン(機構の輸入放出)
   需要者(ピンク色):推定消費量75,300トン=(3)9,400トン(乳業メーカー社内消費)+
   (4)48,200トン(業務用バター需要者)+(5)17,700トン(家庭用小売業)
注2:( )内%は推定出回り量(推定消費量)に対する構成比率
注3:乳業のうち、バターを生産していないメーカー。
2)業種別消費量

 業種別消費量について見ると、業務用が4万8200トン(推定消費量に対する構成比64.0%)と最も多く、小売業向け家庭用は1万7700トン(同23.5%)である(表1)。業務用では、菓子メーカーが1万9400トン(同25.8%)で最も多くなっている。

 国産バターと輸入バターの業種別消費量の内訳を見ると、国産バターは、小売業向け家庭用が全体の27.0パーセントで最も多く、次いで、菓子メーカーが26.0パーセントとなっている。  一方、輸入バターは、菓子メーカーが全体の24.5パーセントで最も多く、次いで、乳業メーカー(社内消費)が22.5パーセントとなっている。

 国産バターは、小売業向け家庭用含め各業種で幅広く使用されているが、輸入バターは業務用向けのバラバターが中心となっている。輸入バターは、乳業メーカー(社内消費)、業務用の乳業・アイスクリームメーカー、加工油脂メーカーで比較的消費傾向が高い。
表1 バターの業種別消費量の内訳(24年度)
3)業種別消費量の変化(23年度との比較)

 業種別消費量は、7万5300トンと前年度比で3.6パーセント減少した(表2)。

 このうち、業務用については、同9.7パーセント減となった。これは、バター価格が上昇したこと、乳業メーカーが計画販売により抑制的な供給をせざるを得なかったこと、原材料をバターから輸入調製品や植物油脂へ切り替えたことなどが要因として挙げられる。

 本調査では24年度の小売業向け家庭用は、前年度比11.3%パーセント増の1万7700トンとなった。22年度以前は概ね2万トン前後で推移していたものの、23年度に大幅に減少し、24年度も以前の水準には戻しきれていない。
表2 バターの業種別消費量の推移
4)用途別消費量

 推定消費量7万5300トンの用途について見ると、菓子・デザート類が1万9700トン(構成比26.2%)と最も多く、次いで、小売業向け家庭用が1万7700トン(同23.5%)、以下、外食・ホテル業が8400トン(同11.2%)等の順となっており、特定の用途に偏ることなく、多様な食品の原材料として使用している(図2)。
図2 バターの用途別消費割合(24年度)

(2)脱脂粉乳

 24年度における国内の脱脂粉乳の推定出回り量14万200トン(機構調べ)の流通経路と業種別消費量の推計を行った結果は次のとおりである。

1)流通経路

 流通経路を見ると、推定出回り量14万200トンのうち、国産が13万9900トン、輸入が300トンとなっている(図3、表1)。

 また、乳業メーカー(社内消費)が5万4700トン(推定出回り量に対する構成比39.0%)、社外販売が8万5500トン(同61.0%)となっている。

 バターの流通経路と比較すると、小売業向け家庭用の消費量が非常に少なく、乳業メーカー(社内消費)の割合が高い。また、卸売業者を経由せず、需要者に直接販売される割合も高くなっている。
図3 脱脂粉乳の流通経路(24年度)
注1:供給者(緑色):推定出回り量140,200トン=(1)乳業メーカーの自社製造+在庫取り
    需要者(ピンク色):推定消費量140,200トン=(2)54,700トン(乳業メーカー社内消費)+
    (3)84,700トン(業務用脱脂粉乳需要者)+(4)800トン(家庭用小売業)
注2:( )内%は推定出回り量(推定消費量)に対する構成比率
注3:乳業のうち、脱脂粉乳を生産していないメーカー。
2)業種別消費量

 業種別消費量について見ると、乳業メーカー(社内消費)が5万4700トン(推定消費量に対する構成比39.0%)で最も多く、次いで、乳業・アイスクリームメーカーが3万1500トン(同22.5%)、はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーが3万100トン(同21.5%)となっている。
表3 脱脂粉乳の業種別消費量の内訳(24年度)
3)業種別消費量の変化(23年度との比較)

 業種別消費量は、14万200トンと前年度比で4.0パーセント減少した(表4)。これは、国内価格の上昇などから、脱脂粉乳から輸入調製品等へ需要が移行したためと考えられる。

 このうち、消費量が増加したのは、ヨーグルトの生産が堅調なはっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーのみであった。

 消費量におけるシェアが大きい乳業メーカー(社内消費)の減少は、無脂乳固形分について、ホエイや輸入調製品、脱脂濃縮乳に需要が移行したためとみられる。
表4 脱脂粉乳の業種別消費量の推移
注1:23年度の推計値は、今回の調査結果を基に算定しているため、
   前回調査における推計値とは異なる場合がある。
注2:24年度の調査よりパンメーカーと菓子メーカーを区別して推計している。
4)用途別消費量

 用途別消費量14万200トンの内訳について見ると、はっ酵乳・乳酸菌飲料が6万8100トン(構成比48.6%)、次いで、乳飲料が2万3200トン(同16.5%)となっており、これらの品目で全体の約3分の2を占めている(図4、表5)。
図4 脱脂粉乳の用途別消費割合(24年度)
 バターが多様な食品の原料として使用されているのに対し、脱脂粉乳は、はっ酵乳・乳酸菌飲料、乳飲料、アイスクリーム類で大半(73.2%)が消費される。

 はっ酵乳・乳酸菌飲料や乳飲料の需要は、消費者の健康志向を背景に、近年、堅調に推移しているが、24年度はこれらの品目における脱脂粉乳の消費量は減少し(表5)、一方で脱脂濃縮乳の消費量が増加した(表6)。食味や風味などの面で脱脂濃縮乳の品質が優れていると言われていることも、置き換えが進んだ一因と考えられる。
表5 脱脂粉乳の用途別消費量の推移
表6 脱脂濃縮乳の用途別消費量の推移

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