需給動向 海外

◆N Z◆

生乳生産の増加が続く一方、乳製品価格は依然低水準


生乳生産が本格化、前年を上回る水準

 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2014年8〜10月の生乳生産量は、744万1000トン(前年同期比4.8%増)と前年をかなりの程度上回った(図32)。ニュージーランド(NZ)は牧草の生育に即した季節搾乳体系であるが、本格的に搾乳が開始された8月以降、生乳生産量は3カ月連続で前年同月実績を5%程度上回り、安定的に推移している。特に北島は、春先は暖かい日が続き、土壌に水分も行き渡っており、牧草の状態は良好とみられている。また、南島も、主要酪農地域である中部や南部で、気温の低い時期が続いたものの、おおむね牧草の生育は良く、生乳生産に大きな影響はなかったとみられている。

図32 生乳生産量の推移
資料:DCANZ
  注:年度は6月〜翌5月

 この結果、1年で最も生乳生産が増加する10月は、好調であった前年度をさらに上回る生産量を記録し、2014/15年度(6月〜翌5月:生乳生産年度)の10月までの累計でも、前年同期を4.9%上回っており、当面、生乳生産は増加傾向が続くとみられている。

乳製品輸出量、品目により異なる傾向

 2014年9〜10月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が5万7934トン(前年同期比7.2%減)、全粉乳が19万867トン(同13.3%減)、バターが8万2238トン(同27.0%増)、チーズが4万511トン(同13.4%増)と、品目により異なる傾向となっている(図33)。バターについては、中東・北アフリカからの需要が堅調であること、チーズについては、主要輸出先である日本、豪州に加え、中国向けが増加傾向にあることから、いずれも前年を上回った。一方、脱脂粉乳、全粉乳については、チーズとは対照的に最大の輸出先である中国の需要が弱まっていることから、前年を下回って推移している。

 なお、2014/15年度(7月〜翌6月:会計年度)の10月までの輸出量の累計では、年度当初は粉乳類も好調であったことから、すべての品目において、前年同期を上回っている。

図33 乳製品輸出量の推移
資料:Statistics NZ

国際価格、低水準も全粉乳を除き上昇

 2014年12月2日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均取引価格は1トン当たり2423米ドル(29万円:1米ドル=119円、前年比49.4%安、前回比5.4%高)、全粉乳は同2229米ドル(27万円、前年比55.7%安、前回比7.1%安)となった(図34)。全粉乳価格は、11月前半の取引終了時点では上昇に転じており、底を打ったという見方も出ていたが、その後再び下落している。一方、脱脂粉乳、バター、チーズについては、わずかながら上昇したものの、依然低水準である。現地報道によると、長期的には乳製品価格は再び上昇するとみられているものの、2014/15年度(7月〜翌6月)中は低水準で推移するという見方もあり、当面は現在の価格水準を維持するとみられている。なお、こうした乳製品国際価格の推移を受け、生産者乳価も2008/09年度以来の低水準(乳固形分1キログラム当たり4.7NZドル(447円:1NZドル=95円)前後)となっている。

図34 GDTの乳製品価格の推移
資料:GDT

酪農団体、適切な飼養管理を喚起

 乳製品国際価格および生産者乳価が低水準で推移する中、NZの酪農団体であるデーリーNZは、酪農家に対し、生産コストの低減に向けた適切な飼養管理の実施を呼びかけている。デーリーNZは、2015/16年度(6月〜翌5月)も低い乳価が継続することを想定すべきとして、多くの酪農家が1頭当たり乳量を増加させるために恒常的に給与している濃厚飼料について、牧草が不足した場合に限って使用することや、過剰に投入されている傾向があるリン酸系肥料の使用を抑制することが必要としている。デーリーNZは、より多く生乳を生産することが、必ずしも収益の改善につながらないとしており、この呼びかけにより、今後、生乳生産の増加が抑制される可能性もある。

(調査情報部 根本 悠)

元のページに戻る