需給動向 海外

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出荷量は増加基調、乳価は19カ月連続前年割れ


生乳出荷量は11カ月連続前年超え

欧州委員会によると、2016年2月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比5.2%増(うるう年調整後。以下同じ)の1218万トンとなった(図27)。前年同月は生乳クオータ制度の廃止直前であり、割当量を超過した場合の課徴金を抑えるため出荷量を絞っていた時期とみられるが、2015年4月の同制度廃止以降、出荷量は増加基調で推移し、11カ月連続で前年同月を上回っている。

加盟国別に見ると、EU最大の生乳生産国であるドイツは、前年同月比6.5%増となり、増加量は最大の25万トン増となった。次いで増加量が多かったのはオランダで、同17.5%増の21万トン増となった。

生乳取引価格は19カ月連続前年割れ

欧州委員会によると、2016年3月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比9.3%安の100キログラム当たり28.58ユーロ(1キログラム当たり36.30円:1ユーロ=127円)となり、前月に続き生乳クオータ制度廃止以降の最安値を更新した(図28)。同価格が28ユーロ台となるのは、EUの酪農危機と言われた2010年5月以来となる。同制度廃止以降続く増産基調の中、乳製品国際需給のだぶつき感から、価格低迷は長期化している。

脱脂粉乳の公的買入、限度数量に達し入札買入を実施

EUの乳製品卸売価格は、乳価同様に下落しており、2015年7月、6年ぶりに脱脂粉乳の公的買入が開始された。

脱脂粉乳の公的買入は、各加盟国の買入機関が脱脂粉乳の製造業者または取扱業者の申請に基づき、公的買入価格(100キログラム当たり169.80ユーロ(2万1565円))で、限度数量の10万9000トン(EU全体、暦年ベース)まで買い入れる。限度数量に達した後は、月2回、入札により公的買入価格を超えない価格での買い入れが行われる。

公的買入は、開始以降、毎週連続して実施され、2015年末までの6カ月間で4万280トンが買い入れられた(表5)。しかしながら、脱脂粉乳の卸売価格は、2016年1月の第1週に公的買入開始以降の最安値を更新し、1週当たりの買入申請量は、過去最高となる6360トンを記録した。その後も度々、買入申請量の記録は更新され、3月14日の週に1万3748トンを記録し、3月末には限度数量に達して申請は打ち切られ、最初の入札が4月19日に行われた。2日後の21日に公表された結果によると、2万2623トンが買い入れられた。落札価格は公表されていないが、ほぼ公的買入価格であったとみられている。

ホーガン農業・農村開発担当欧州委員が、3月14日の農業理事会で公表した特別追加支援措置としての公的買入の限度数量の引き上げは4月20日から適用されており、入札による公的買入れはこの1回のみとなり、これ以降は、公的買入価格で、限度数量の21万8000トンまで買入れが行われることとなる。しかし、引き続き乳製品需給は停滞しており、買入数量は、今年の秋頃には再度上限に達するとの見方もある。

なお、公的買入は、バターも対象品目となっているが、同卸売価格は、前年同期を20%程度下回っているものの、公的買入価格の同221.75ユーロ(2万8162円)を上回っていることから、現在のところ公的買入への申請は行われていない。

(調査情報部 大内田 一弘)


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