タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○鶏肉国内価格が大幅に上昇



 タイ国内の鶏肉価格は、 今年に入り急激な上昇をみせている。 95年8月現在の小

売価格は、 1キロ当たり50バーツ (1バーツ=約4円) を超えており、 ここ数年で

最高の水準となった。 また、 小売価格のみならず、 卸売価格、 農家出荷価格及びひ

な価格も上昇している。 このような価格上昇の要因は、 飼料価格の高騰による生産

コストの上昇、 また、 供給量が大きく減少している豚肉に代わって、 鶏肉の消費が

大きく伸びていることが挙げられる。 

関係者は、 生産量の現状維持を志向

 タイの鶏肉処理量は、 ここ数カ月、 平均して毎月5千2百〜4百万羽の水準で推 移している。 これは、 前年同期とほぼ同じ水準であるが、 かつては、 7千万羽を超 える処理を行っていただけに、 この数字は低い水準といえる。 国内の養鶏企業の中 には、 鶏肉価格の上昇に反応して、 生産拡大を図る動きもあるが、 かつて、 価格の 暴落による生産調整を何度となく繰り返してきただけに、 現在の生産量が適正水準 との見方もある。 また、 飼料価格が上昇しており、 生産拡大はさらなるコスト高を 招くため、 鶏肉業界全体としては、 現状を維持したい考えである。

飼料原料の関税割当数量を拡大

 このような中で、 タイ商務省の食糧政策委員会は、 補助飼料原料の中心となる大 豆ミールの来年度の関税割当数量を83万トンとすることを発表した。 当初、 政府は、 来年度の国内需要量を112万6千トンと予測し、 それに基づき割当数量を65万トン に設定することを予定していた。 しかしながら、 養鶏業界や飼料業界からの度重な る割当数量の拡大要請と、 ここ数年、 飼料価格の高騰が畜産物や食料品の価格上昇 の一因となっていることを勘案して、 当初案に18万トン上乗せすることとした。 大 豆ミールの輸入は、 畜産物需要の高まりとともに年々増加し、 94年度の輸入量は90 万2千トンとなり、 今年も昨年に近い輸入量が見込まれている。 また、 飼料原料の 中心となるトウモロコシについては、 来年度の割当数量を55万トンに設定すること を予定している。 かつては、 主要輸出農産物であったトウモロコシも、 需要の高ま りを受けて輸入が増加しており、 今年は輸入量が輸出量を上回る状況となっている。

関税率そのものの引下げを要求

 政府による飼料原料の輸入拡大の発表にも関わらず、 国内の関係者からは、 この 数量でも国内需要を賄いきれず、 割当数量の枠外で、 高関税による輸入が行われる のは確実との見方が早くも出ている。 また、 関税率の引き下げが行われない限り飼 料価格の低下はそれほど期待できず、 鶏肉などの生産コストの引き下げは難しいと して、 割当数量の拡大よりも関税率そのものの見直しをすべきとの声も上がってい る。
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