米国の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○加工原料乳支持価格を引き上げへ



100ポンド当たり25セントの引き上げ

 米国農務省の商品金融公社 (CCC) は、 11月17日、 加工原料乳支持価格を96年1 月1日から引き上げると発表した。 これにより、 現在100ポンド当たり10ドル10セ ント (1キロ当たり約22. 3円) の支持価格は、 25セント引き上げられ、 同10ドル 35セント (約22. 8円) となる。

90年農業法に基づく措置

 現在、 加工原料乳の支持価格は、 90年農業法の規定により、 CCCによる翌年の乳 製品買い上げ見込み数量 (全乳固形分ベースの生乳換算) を基に毎年定められて いる。 当該見込み数量が、 35億ポンド (約159万トン) を上回る場合には、 現行の 支持価格は据え置き、 または100ポンド当たり10ドル10セントを下限とする引き下 げとなり、 逆に35億ポンド以下の場合は引き上げとなる。  今回、 CCCは、 96年の買い上げ数量を34億7千万ポンドと見込んだため、 支持価 格の引き上げが実施されることとなった。  乳製品の買い上げ見込み数量の推移 単位:百万ポンド  ─────────────────────────────────────────────                           91年 92年 93年 94年 95年 96年  ───────────────────────────────────────────── 買い上げ見込み数量(全乳固形分ベースの生乳換算) 6,400 6,200 4,600 6,500 6,400 3,470  買い上げ見込み数量(乳製品ベース) バター - 300 300 240 230 10  脱脂粉乳 - 380 205 490 540 470  チーズ - 95 60 60 35 8  ─────────────────────────────────────────────

旺盛な国内外の需要が背景

 CCCの買い上げ見込み数量が大きく減少した背景には、 チーズやバターを中心と する最近の旺盛な国内需要および輸出需要が挙げられる。 今夏以降は、 少量の脱 脂粉乳が買い上げられているに過ぎず、 チーズやバターについては、 現在、 政府 在庫が全く無い状態が続いている。  96年の買い上げも、 ほとんどが脱脂粉乳となり、 チーズとバターの買い上げは 引き続き非常に低水準にとどまるものと予想されている。

生乳生産者には皮肉な結果

 今回の支持価格の引き上げは、 実に15年ぶりのこととなる。 80年代には、 乳製 品の生産過剰からCCCの在庫が急増し、 支持価格は一貫して引き下げられた。 また、 90年以降は、 90年農業法に定める10ドル10セントの最低水準に張り付いたまま推 移してきた。  現在、 加工原料乳価格支持制度の廃止を含む、 酪農政策の抜本的な改革を求め る動きが強まっているが、 乳価の引き上げはもはや期待できないとして価格支持 制度の廃止の方向に賛成した一部の生産者にとっては、 何とも皮肉な結果になっ たといえよう。
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