APEC大阪会議、 貿易・投資自由化行動指針を採択



自由化の位置付け等をめぐって対立が表面化

 APEC非公式首脳会議が11月18・19日に大阪で開催され、 事前の閣僚会議で合意 された貿易・投資自由化のための行動指針を支持する大阪宣言を採択した。 今回 会議の主要なテーマは、 昨年のインドネシアでの首脳会議で採択された、 貿易・ 投資の自由化を謳った宣言 (ボゴール宣言) を実行に移すための行動指針を定め る点にあった。 しかしながら、 会議前の意見調整では、 ボゴール宣言の位置付け や行動指針の中の一般原則に柔軟性の原則をいかに組み込むかをめぐって対立が 表面化したことから、 その成り行きが大いに注目された。

自由化目標は 「自主的努力」 と宣言に明記

 結果的には、 議長国であるわが国の調整努力が奏功して合意づくりが進み、 大 阪宣言ではボゴール宣言による自由化目標が、 「自主的自由化への努力」 と明確 に位置付けられた。 また、 行動指針では、 そのプロセスについても各国・地域の 発展状況等に応じて柔軟な対応を行うことを認める旨の原則が確保された。 なお、 採択された行動指針のうち、 一般原則に盛り込まれた主要項目の骨子は次の通り である。 (1) 自由化、 円滑化プロセスは、 全ての障壁に対して適用する。 また、 その進 捗の全体としての同等性を確保するよう努める。 (包括性、 同等性の原則) (2) 参加国・地域は、 自由化、 円滑化を進めるうえで無差別の原則を適用し、 また適用するよう努力する。 (無差別の原則) (3) 参加国・地域で異なる経済発展段階、 多様な状況を考慮し、 そうした状況 から発生する問題については、 柔軟性をもって対処することができる。 (柔 軟性の原則) (4) 行動指針で規定される自由化、 円滑化の手段は、 世界貿易機関 (WTO) との 整合性をとる。 (WTO整合性の原則)

厳格性を求める米・豪と柔軟性を求める意見の対立

 ボゴール宣言では、 先進国は2010年までに、 又、 発展途上国は2020年までに貿 易・投資の自由化を行うことが謳われたことから、 今回の大阪会議の成り行きは、 わが国の農業関係者にとって大いに注目されるところであった。  大阪会議に至るまでの間の事前協議の中では、 「自由化宣言」 をルールと位置 付け例外のない厳格な適用を求める米国、 豪州などと、 農業分野で共通的問題を 抱えるわが国、 韓国、 中国などの、 柔軟性盛り込みを求める現実的主張の対立が 鮮明となった。

現実対応を尊重するアジア流解決への収斂

 こうした状況下で、 APECの 「制度化」 や内部亀裂の拡大を望まないアジア的潮 流へ全体的空気が収斂した結果、 最終的には現実対応型の宣言や行動指針がまと められるに至った。 なお、 その背景には、 各国が大阪に持ち寄った第一次の自由 化措置 (当初の措置) でも、 米国の内容が貧弱であったのに対して、 わが国が工 業製品697品目の関税引き下げの2年前倒し実施など、 また中国が96年に約4000 品目の関税引き下げを約束するなど、 「実行面」 でも現実派が厳格派を圧倒した 点も大きかったと考えられる。

畜産関連では検疫手続きの容易化を提示

 なお、 わが国は当初の措置において、 畜産関係では動物検疫の容易化措置及び 生産資材関係の規制緩和措置等を提示したが、 その主な内容は次の通りである。 (1) 動物検疫所の係留施設を整備することにより、 輸入手続きを迅速化する。 (2) 動物検疫の円滑な実施のため、 その仕組み等について、 関係諸国への周知 徹底を図る。 (3) 名古屋空港において、 最終国際便に対応した動物検疫官の適切な配置等に より、 輸入手続きの迅速化を図る。 (4) 単体飼料用外国産大麦について、 現行の加工 (はん砕、 ひき割り、 圧ぺん) による供給のほか、 丸粒のまま農家に供給し得るようにする。 (5) 動物用ワクチン等の検定について、 水素イオン濃度試験等の項目を廃止する。
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