再編・合理化が進む飲用牛乳業界 (イギリス)



かつてない規模の再編・合理化が進行

 イギリスでは、 生乳の飲用比率が約5割であり、 その約9割は家庭で消費され ている。 飲用比率が1〜2割前後にすぎない他のEU諸国と比較すると、 同国の飲 用比率は格段に高く、 このことが飲用牛乳メーカーの重要性を高めていた。 しか し、 昨今、 同国の飲用牛乳メーカーでは、 工場閉鎖も含めた、 かつてない大規模 な再編・合理化が進んでいる。  同国最大の飲用牛乳メーカーであるノーザンフーズは、 最近2工場の閉鎖と1 工場の売却を決めた。 また、 業界第6位のACCとの間で、 生乳集配所などの売却 と工場買収に合意した。  業界第2位のユニゲートも、 近く2工場を閉鎖すると予想されている。 このほ か、 中堅メーカーも、 前述のACCや、 スコットランドで5割のシェアを持つワイ ズマン (第7位) なども、 一部の工場閉鎖などを検討中と伝えられている。  業界第3位のデイリークレストも、 既に93年に飲用牛乳部門の3分の1以上を 売却し、 さらに昨年秋には主力の乳製品工場2つを閉鎖するなど、 思い切った合 理化を実施した。 しかしながら、 引き続き飲用部門の一層の合理化と付加価値製 品部門の強化が必要といわれている。  このような飲用牛乳メーカーの再編・合理化により、 一工場当たり処理規模の 拡大やメーカーごとの営業・販売地域の明確化などが、 大きく促進されることに なりそうだ。 イギリス飲用牛乳メーカー上位5社の概要 ────────────────────── メーカー名 集乳量   飲用部門 処理量 工場 平均 ────────────────────── Northern Foods 190 125 9 14 Unigate 150 90 9 10 Dairy Crest 130 60 3 20 MD Foods 65 55 4 14 Avanmore 65 45 2 23 合 計 1,365 668 −   − ──────────────────────  業界紙推定(単位:万トン、カ所、万トン/工場)

飲用乳消費の減少や流通の変化が要因

 このように、 最近の飲用牛乳メーカーの大規模な再編・合理化が進行する背景 には、 以下のような要因がある。 1) 飲用牛乳消費の減少 (94年には対前年比約4%減) によって、 飲用牛乳メー カーの処理能力が過剰となったこと。 2) 伝統的に飲用牛乳流通に重要な役割を果たしてきた宅配牛乳の急速な減少 (飲 用牛乳に占めるシェアは、 84年84%→94年50%弱) に伴う生乳集配拠点の統廃合 が必要となったこと。 3) 宅配牛乳の減少による瓶詰ラインの稼働率低下に加え、 スーパーがカートン容 器からプラスチックボトルへの転換を進めていることにより、 工場設備の変更が 必要となったこと。 4) 昨年11月の生乳流通自由化以後、 生産者に対する支払乳価が大きく上昇したこ とによって、 飲用牛乳メーカーの収益が低下したこと。
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