「EU・地中海自由貿易圏」 の創設構想に合意 (EU)



EUと地中海沿岸諸国の通商経済関係の強化

 EU15カ国とモロッコからトルコに至る地中海沿岸11カ国・1地域 (リビアを除 く) が参加して、 両地域間の政治、 経済、 社会・文化分野での協力問題を協議す る 「EU・地中海諸国会議 (外相級)」 が、 11月27日、 28日の2日間にわたり、 (EU 議長国である) スペインのバルセロナで開催された。  この会議の目的は、 政治経済的にも地勢学的にも関係が深い両地域間で、 それ ら多方面の分野で協力関係を強化する点にあったが、 中でも特に注目されるのは、 21世紀における自由貿易圏の創設構想である。 地中海沿岸諸国の中には、 EU加盟 の意志表示をしているものや、 個別にEUと一定の通商取り決めを結んでいるもの があるが、 この構想はこれらを含めて自由貿易圏として一括して取り扱おうとす るものである。 環太平洋圏で、 APECの枠組みによる自由化の流れが進行している 一方で、 EU・地中海自由貿易圏構想の今後の進展動向が注目される。

農産物については、 穏やかな 「自由化」 表現

 会議の結果採択された 「バルセロナ宣言」 では、 注目の通商分野で、 2010年ま でに自由貿易圏を創設する構想がうたわれた。 また、 それに向けて、 工業製品の 関税、 非関税障壁の引き下げや撤廃の段階的実施、 また知的所有権の保護や市場 経済の推進などの準備作業を進めることが合意された。  農産物分野では、 地中海沿岸諸国側が、 工業製品同様に自由化を進めることを 求めていた。 しかしながら、 安価な農産物の流入を警戒するEU農業国の反対が強 く、 「宣言」 ではその自由化表現は穏やかなものとなり、 双方の利益に配慮しつ つ徐々に進める主旨が盛り込まれた。  なお、 会議では今後、 「宣言」 のフォローアップのために双方の高級事務レベル 協議を定例化することが合意された。 また、 次回の外相級会議は、 97年前半に地 中海沿岸諸国側で開催されることが予定されている。
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