成長ホルモン等に関する会議が開催される (EU)



 EU委員会のフィッシュラー農業委員が提唱していた 「牛肉生産における成長促進

に関する科学会議」 が、 11月29日から3日間開催された。 会議では、 科学的な評価

に重点が置かれたが、 一方では、 農業者・消費者団体等の強いホルモン使用反対の

姿勢が、 改めて浮き彫りにされた。 

科学的評価を目的とした会議

 EUは、 88年以来、 ホルモン等成長促進物質の使用を、 一部治療目的以外、 全面的 に禁止している。 しかしながら、 EU域内でのホルモン不法使用問題や米国からの解 禁要求は、 当面の大きな懸案となってきた。 今回の会議は、 成長促進物質の使用に 関して科学的な評価を行い、 今後の政策判断のための共通の基礎をえるためのもの、 とされている。  会議には約80名の科学者が参加して、 1) 既存の及び新しい成長促進物質、 2) 健 康に対する危険性の評価、 3) 検査及び監視方法、 の3つの作業部会に分かれて、 科学的な知見の評価を行った。  このうち、 1) においては、 ステロイド (性腺) ホルモン、 成長ホルモン、 βア ゴニスト、 飼料添加用抗生物質といった既存の成長促進物質のほか、 生体内ホルモ ンの免疫学的調節、 光照射時間の制御、 遺伝子組み替えという新しい技術について も、 討議の対象となった。

見解の収束が困難で報告書は後日に

 最終日に予定されていた会議報告書及び結論の作成については、 科学者間の見解 にも幅があったこと、 結論が今後に及ぼすであろう大きな影響への配慮などから、 作業が難航し、 結局12月末まで延期された。 これに代えて発表された議長発表のポ イントは、 以下のとおりである。 1) ステロイドホルモンについては、 ヒトの健康に対する危険性はほとんどない。 2) βアゴニストについては、 ヒトの健康に対する危険性が大きい。 3) 成長促進物質の違法使用問題に対抗するため、 管理システムを強化する必要が ある。

科学者以外の参加者には反対意見が

 これを受けて行われた科学者以外の参加者との公開討論では、 科学的に無害との 保証が依然としてないこと、 環境・動物愛護などへの配慮が不十分なこと、 EUの牛 肉生産過剰などの経済的条件などを理由として、 ホルモン使用を認めることに対す る反対意見が相次いだ。 さらに、 成長促進物質をめぐっては科学的な事実と一般消 費者の認識との間のギャップが極めて大きく、 これを埋める努力が必要との指摘が 多くなされた。  EUの牛肉ホルモン問題については、 この科学会議の成果をもとに、 今後も関係団 体・業界などとの議論が続くことは確実で、 その決着までには多くの紆余曲折が予 想される。
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