新加盟3カ国の食品価格動向 (EU)



値下がり傾向ながら、 消費者は期待はずれ

 本年1月からEUに加盟したスウェーデン、 オーストリア及びフィンランドの3カ 国の食品価格は、 加盟前に比べて値下がり傾向にある。 しかし、 加盟前に消費者が 期待していたほどの成果はまだ表れておらず、 卸売段階では低下した食品価格が、 小売り価格には十分に反映されていないとして不満が高まっている。  この3カ国の食品価格 (全体平均) を、 加盟前の94年12月と加盟後の95年5月 (スウェーデン及びフィンランドは3月) の時点で比較したところ、 オーストリア 及びフィンランドはそれぞれ2. 4%及び4. 5%低下したが、 スウェーデンでは逆に 2. 4%の上昇となった。  国ごとの詳細な価格動向は次のとおりであった。

輸入価格の上昇等により、 全体では逆に値上がり (スウェーデン)

 果実、 野菜が10%を超える上昇となったことが、 食品全体の価格を押し上げる要 因となった。  当局は、 この要因について、 1) 輸入価格が上昇したことなどにより、 価格低下圧力が十分に作用しなかった、 2) 原料 (農産物) 価格は低下したのに製品 (食品) 価格に反映されなかったもの が多かった、 3) 食肉などについては、 94年秋に価格引き下げが行われ、 加盟前に価格の低下が 折り込み済みとなっていた、 ことなどを挙げている。  なお、 このような事情を反映し、 9月に行われた同国の欧州議会議員選挙では、 EU加盟に反対する勢力が議席を伸ばすという結果となった。

食肉卸売価格の低下が小売価格に反映せず (オーストリア)

 加盟後、 食品価格は全般的に低下したものの、 その低下額は消費者の期待を下回 るものであった。  主な畜産物の小売価格をみると、 牛乳、 クリーム、 バターなどの乳製品は平均で 約14%もの低下を示したが、 豚肉は約5%の低下にとどまり、 牛肉は逆に約5%上 昇した。 豚肉、 牛肉価格については、 卸売段階ではそれぞれ12%から23%と大きく 低下したにもかかわらず、 これが小売価格に反映されていないため、 消費者の不満 が高まった。 ただし、 隣接国などからの低価格農産物の流入により、 今後、 食品価 格は値下がりに向かうものとみられる。

制度改正により最も大きい低下率 (フィンランド)

 3カ国の中で、 全体として最も低下率が大きいが、 その要因としては、 加盟前に 存在していた農産物に対する各種の規制が取り除かれたこと、 食品の付加価値税 (VAT) が22%から17%へ引き下げられたことなどが挙げられている。
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