中国への肥育素牛輸出が実現へ (豪州)



中国使節団が訪豪し畜産関係者と会合

 中国では、 目覚ましい経済成長に伴って牛肉の需要が順調に拡大しており、 肉牛 産業が急速に成長しているが、 良質の素牛の供給が次第に不足ぎみとなりつつある。 こうした中で、 中国政府関係者と輸入業者などからなる使節団が、 11月、 豪州の主 要な畜産関係機関を訪問し、 両国間の生体牛取引に関する話し合いを行った。

豪州の検疫体制等を調査

 この使節団は、 主に豪州の家畜伝染病の発生状況や検疫体制などの調査を目的と したものである。 中国側はその調査結果に基づき、 生体牛輸入の認可に関する最終 決定を下すものとみられているが、 特に障害となるものは今のところ見当たらず、 まもなく認可されるというのが現地の一般的な見方となっている。

来年早々にも最初の輸出

 このような状況の下、 クィーンズランド州の家畜取引業者の一部には、 既に中国 向け生体牛輸出の準備を進めており、 素牛手当に着手しているところもある模様で ある。 業界関係者は、 「来年早々にもブリスベーン港から中国向けに2千頭の生体 牛が船積みされるだろう。 」 と述べている。  関係者によれば、 中国の肉牛肥育産業の歴史は浅く、 また牛肉消費形態が類型化 していないことなどから、 輸入される素牛について品種の指定やその他詳細な輸入 条件が付される可能性は低く、 当面は交雑種を中心に6〜12カ月齢の肉牛が輸出に 向けられる見込みである。  ただし、 今後は、 中国側の肥育実績などを踏まえて、 気候風土、 肥育方法に適し た品種の選定や取引体重、 月齢などの調達条件の整備が進められるものと思われる。  また、 中国国内の素牛需給がタイトになりつつある状況から、 生体牛取引に関し て、 価格面では問題なく合意に達するとみられている。

生体牛の輸出増加に期待膨らむ

 近年、 豪州は、 インドネシア、 フィリピンのフィードロット産業が拡大するのに 伴い、 それらの国々への生体牛輸出を増加させている。 これに加えて、 中国市場へ の参入が果たせれば、 生体牛輸出頭数は今後さらに増加することになるため、 肉牛 関係者は、 大きな期待を寄せている。  しかしながら、 一部には、 近年の急速な肥育素牛輸出の拡大が豪州の牛肉産業に 素牛の供給不足や、 と畜産業の空洞化をもたらすのではないかという懸念の声も聞 かれ、 この面からも今後の動向が注目されている。
元のページに戻る