フィリピンの食肉生産概要



経済発展に伴って増加する食肉消費

 フィリピン経済は長らく低迷していたが、 ここ数年間はめざましく発展しつつあ る。 ラモス大統領は長期開発計画 「フィリピン2000」 を掲げて経済開発に乗り出し ており、 一方、 政治的な安定に伴い、 外国からの投資も工業分野を中心に活発とな った。 このような経済的活況を背景に、 同国の食肉需要は、 着実に増加しつつある。

食肉生産の6割は豚肉

 同国の食肉生産の特徴は、 豚肉の生産量が食肉全体の6割を占めていることであ る。 豚肉の供給量 (生産量+輸入量) に対する輸入量の割合 (輸入依存度) はわず か0. 4%に過ぎず、 需要は国内生産によってほぼまかなわれている。 これに対して、 牛肉及び鶏肉の生産は、 豚肉のペースを上回って増加しているものの、 輸入依存度 がそれぞれ28%及び13%となっており、 国内生産が需要に追いつかないことを窺わ せている (表1)。 表1 食肉生産量の推移  ───────────────────────────────────────── 年次 牛肉 水牛肉 馬肉 豚肉 山羊肉 家禽肉 計 消費推計    ─────────────────────────────────────────  91  44,884  31,128  413  272,943   931  92,155 442,545 6.3  92  50,361  38,106  440  300,978  1,596  100,863 492,436 7.0  93  59,634  34,406  342  322,246  1,622 114,891 533,234 7.6  94  65,788  33,255  347  378,953  1,371 133,346 613,154 8.8  ───────────────────────────────────────── 注1:枝肉重量、単位は千トン 2:「消費推計」は、食肉生産量計を人口(7千万人)で除した値、kg/年・人 3:政府機関であるNMICによって検査され合格した数量である。 資料:農業省食肉検査所(NMIC) 表2 食肉輸入量(94年) ──────────────────────────────── 牛 肉 水牛肉 豚 肉 山羊肉 家禽肉 計 25,534 9,968 1,641 489 19,428 57,060 ──────────────────────────────── 注 :山羊肉は羊肉を含む、単位はトン 資料:農業省食肉検査所(NMIC)

急増する生体牛輸入

 牛肉生産の増加は、 繁殖率の関係等から、 鶏肉の場合よりも一般的に困難とされ るが、 フィリピンの場合、 両者はほぼ同率で増加しつつある。 それを可能としてい るのが急増する生体牛の輸入である。 これについては、 一部インドからの輸入があ るものの、 ほとんどは豪州からの輸入であり、 この点、 インドネシアの事情と類似 している (表3)。  表3 生体牛の輸入動向   ───────────────── 年次 肥育用 種畜用   ─────────────────     91 12,674   3,099 92 33,362 16,163 93 74,672 8,816 94 109,486 6,880 95 111,524 7,436   ─────────────────  注 :95年8月まで、単位は頭   資料:農業省畜産局(BAI)

飼料原料の調達が今後の課題

 豚肉及び鶏肉の生産には大量の穀物が必要とされることから、 同国の食肉生産に とって、 今後、 最大の課題となるのは、 飼料原料の調達である。 トウモロコシの生 産量は500万トン程あるが、 最近は食肉需要の増加に伴って不足気味である。 大豆 は食習慣がないのでほとんど作付けされておらず、 大豆ミールが輸入されている (95年、 1〜11月で約9万トン)。 また、 魚粉も、 国内生産量の約2倍の数量が輸入 されている (同期間で約2万トン)。 このような飼料原料の輸入の増加は、 今後も 工業化がますます優先される状況下で、 飼料原料を将来どのように調達していくの かという問題を提起している。 経済の発展途上における国内農業のあり方について、 厳しい選択に迫られる問題である。
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