農業法関連事項を含む予算調整法案に拒否権を発動 (米国)



変則審議となった95年農業法案

 95年農業法案は、 上下両院の農業委員会でそれぞれ審議が進められてきた。 しかし ながら、 下院で同法案の委員会通過が困難となったことなどから、 両院での審議は、 並行して審議されていた予算調整法案に95年農業法関連事項を盛り込んだ形で行うと いう、 変則的な方法がとられた。  その後、 それぞれの予算調整法案は、 10月下旬までに本会議で可決された。

酪農部門の改革は先送りに

 その後、 上院、 下院の予算調整法案の相違点を調整するため、 両院協議会が開かれ た。 このうち、 95年農業法関連事項では、 上院案が現行の価格支持制度の枠組みの維 持を基本とする一方で、 下院案がデカップリング政策への切り替えを重視した大胆な 改革を柱としており、 内容は互いに大きく異なっていた。 このため、 農業法関連の調 整作業はかなり難航した。  結果的には、 酪農などいくつかの調整困難な分野を切り離した上で、 その他の分野 についてはおおむね下院案に近い形の農業法関連事項を含む予算調整法案が成立し、 大統領に回付された*。  * 米国の立法手続きでは、 大統領の署名以前は法案としての位置づけにとどまる。

政策の隔たりに調整つかず

 酪農部門の審議が分離、 先送りされることになったのは、 両院の政策内容の大きな 隔たりについて、 最後まで調整がつかなかったためである。  それぞれの酪農政策を具体的にみると、 上院は、 加工原料乳価格支持制度における 政府の買い上げを、 バターと脱脂粉乳について廃止する (チーズについては継続) こ とと、 飲用規格乳の最低保証価格を定めるミルクマーケティングオーダー制度の基本 的な維持を提案した。 これに対し、 下院は、 これまでの酪農政策の基本であるこれら の制度を廃止し、 7年間にわたる生産者への直接給付金の支払いに置き換える提案を 行った。

拒否権発動で見通しは不透明に

 議会で成立した予算調整法案に対して、 クリントン大統領は、 予算削減ペースの緩 和等を求めて難色を示していたが、 12月6日にはついに拒否権を発動した。 また、 こ れに続いて、 自らの路線に基づく予算調整案を議会に提出する意向を明らかにした。  このため、 今後、 議会側とホワイトハウス当局との間で、 法案修正の妥協案を探る ことになるとみられる。 なお、 同大統領は、 農業法関連事項についても、 拒否権発動 前の農業関係有力議員との会談の中で否定的な見解を述べている。 従って、 農業分野 の取り扱いをめぐっても、 交渉の見通しは不透明となっている。
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