ブロイラーの対日輸出動向 (中国)



● 第1四半期の減少は特殊事情によるもの


 平成8年度第1四半期 (4月〜6月) の中国の対日ブロイラー輸出量 (わが国 の輸入通関ベース、 以下同じ) は、 前年同期比15%減の合計5万1千トンとなっ た。 月別にみると、 平成8年4月が1万3千トン (前年同月比20%減)、 5月、6 月はいずれも1万9千トン (それぞれ同5%減、 19%減) であった。  ただし、 第1四半期の輸出量の減少については、 中国当局が昨年春に、 輸出品 に対する増値税 (付加価値税) の還付制度を7月以降停止すると示唆したことで、 前年度のこの時期に大幅な駆け込み輸出が行われたことを考慮に入れなければな らない。 ちなみに、 平成6年度第1四半期の実績と比較してみると、 平成8年度 同期の輸出量は、 95%増という顕著な増加を示している (図)。

● 採算性の悪化などで輸出に停滞感


 ところが、 このような特殊事情があるにしても、 中国の対日輸出に、 このとこ ろ停滞感がみられることは否めない。 中国の対日輸出量は、 平成8年上期 (1月 〜6月) でみても、 前年同期を14%下回っている。  こうした停滞の理由を、 中国側からみると、 近年の穀物需給の逼迫がもたらし た飼料価格の高騰によってブロイラー生産コストが急上昇したにもかかわらず、 競争激化等により輸出価格が低迷し、 採算性が悪化して輸出意欲が盛り上がらな かったことが考えられる。 また、 付随的な理由として、 わが国の輸入関係者の間 では、 欧州市場で中国産ムネ肉の引き合いが強まったことが指摘されている。  一方、 日本側からみると、 世界的な穀物高や円安により、 ブロイラー輸入価格 が総じて上昇する中で、 低価格の骨付きモモ肉が主体の米国産や、 増産傾向から 比較的安値となったブラジル産に、 需要が一部シフトしたことが考えられる。

● 第2四半期以降は増加に転ずるか


 輸入関係者によると、 中国の対日輸出は、 第2四半期以降増加し、 前年度の水 準を上回るケースも予想されている。  これは、 まず、 中国のブロイラー生産が、 5月から年末にかけて季節的な増加 傾向を示すのにともない、 輸出も増加すると考えられるためである。 前年度は、 駆け込み輸出の反動という特殊事情から、 第2四半期以降の輸出が大きく落ち込 んだが、 6年度には、 5月から12月にかけて、 対日輸出量はほぼ一貫して増加し ている (図)。 また、 今夏の中国での穀物収穫が好調であったことから、 飼料価 格は徐々に低下しつつあり、 輸出採算性が向上すれば、 輸出刺激材料になるもの と考えられる。  一方、 日本でも、 国内生産量が昨年12月から7カ月連続で前年を下回っている ことに加え、 在庫量も今年5月からは前年同月を下回っていることから、 少なく とも次の需要期に入る秋口以降は、 輸入需要が高まるものとみられる。  こうしたことから、 中国の対日輸出量は、 8年度全体では前年度と同様の20万 トン前後の水準に達する可能性があるとみられている。

● チルドの輸出増には輸送問題がネックに


 ところで、 チルド製品の対日輸出についてみると、 平成8年度第1四半期は、 前年同期を117%上回る2千9百トンとなった。 フローズン製品の対日輸出量 (4万8千トン) が前年同期を18%下回る一方で、 チルド製品の輸出量は引き続 き高い伸びを示しており、 特に、 5月の輸出量は始めて千トン台に達した。  輸送距離の関係から、 チルド製品の対日輸出は中国の独壇場であり、 また、現 地でのチルド製品の生産能力は2万トンを超えると指摘されてきた。 しかしなが ら、 このまま一本調子で輸出量が伸びるとは必ずしも言えなくなってきている。 これは、 チルド製品の定期的な海上輸送の能力が、 すでに限界に近づきつつある とみられるためである。  しかしながら、 見方を変えると、 海上輸送手段の問題が解決すれば、 チルド製 品の対日輸出が一段と増加する可能性が出てくることになる。 両国間の物流事情 が急速に変化していることからも、 今後の行方が注目される。
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