米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○フィードロット導入頭数が減少



● 前年を約10%下回る


 フィードロット導入頭数 (主要7州の収容能力千頭以上のもの) は、 94年以降、 ほぼ前年を上回って推移してきたが、 96年に入り、 4カ月連続で前年水準を下回 る動きを見せている。 96年4月までの累計では、 前年同期比9. 9%のマイナスと なった。 ただし、 一昨年同期と比べると2. 3%の増加となっており、 依然として 高い水準にある。  なお、 米国農務省 (USDA) は、 具体的なデータは現時点では入手できないもの の、 導入頭数を抑える傾向は、 収容能力が小さいフィードロットほど、 その競争 力を反映して、 より顕著にみられるとコメントしている。  USDAは、 こうした状況を反映して、 96年第3四半期以降、 生産量は前年を下回 るものとみているが、 第1四半期に7%と高い伸びを示したことなどから、 通年 では1. 3%の増加になるものと予測している。

● 収益性の悪化が原因


 導入頭数が減少しているのは、 飼料穀物価格の値上がりに伴う飼料コストの増 加と、 供給増に伴う肥育牛価格の値下がりによって、 肥育牛経営の収益性が悪化 しているためである。 USDAによれば、 大平原地域のフィードロットの収益状況は、 素畜費の低下というプラス要素で、 黒字を維持してきたが、 飼料費の増加と肥育 牛価格の下落というマイナス要素の影響が次第に拡大し、 96年3月からは赤字に 転じている。  特に肥育牛価格の値下がりは顕著で、 96年4月、 5月と100ポンド当たり60ド ル台を割り込むなど、 ここ10年来で最低の水準となっている (去勢牛、 チョイス 級の1, 100〜1, 300ポンド、 ネブラスカの相対取引価格)。 ちなみに5月の価格 は59. 7ドルで、 同月の肥育豚価格 (5主要市場の平均) より2ドル程度高いだ けにすぎない。

● より重くなる導入素牛


 フィードロットに導入される素牛は、 体重がより重くなる傾向がみられている。 全米の千頭以上の収容能力を有するフィードロットの導入素牛についてみると、 昨年12月に600ポンド未満の素牛のシェアは26%であったが、 96年4月には15% に減少した。 これに対して、 800ポンド以上の素牛のシェアは、 15%から22%へ と拡大している。  これは、 子牛生産者が深刻な肥育素牛価格の下落に対処するため、 放牧期間を 延長し、 より体重の重い素牛を出荷することで、 収入を増やそうとしていること によるものである。 ちなみに、 肥育素牛価格 (去勢牛で600‐650ポンドのもの、 オクラホマシティーの市場価格) は、 94年以降前年を下回る動きを見せており、 昨年12月からは、 前年同月と比べて2割以上低い水準で推移している。  なお、 USDAは、 導入時の体重増加によって、 フィードロットでの飼料穀物によ る肥育期間が短くなっているため、 チョイス級以上に格付けされる牛肉の供給が タイトな状況にあると指摘している。
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