EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○値下がりが続く域内バター価格



● 5月は、 ピーク時に比べ6. 8%の値下がり


 95年には、 堅調に推移していたEUの域内バター価格が、 96年に入ってからは、 値下がりを続けている。 域内の指標価格の一つであるオランダの取引価格 (ブラ ンドバター) は、 95年12月に730ギルダー/100kg (約46, 800円) とピークに達 したが、 その後は、 値を下げ続け、 96年5月には、 ピーク時に比べて、 6. 8%低 い680ギルダー (約43, 600円) となった。

● 国際需給の緩和等が原因


 このように、 域内バター価格が下落している背景には、 95年には、 ひっ迫気味 であった国際需給が、 96年に入って緩和したことにより、 域外向け輸出が減少し たこと、 および域内からの需要が低下したことにある。  特に、 EUの主要輸出先であると同時に、 95年の世界的な需給ひっ迫の要因の一 つとなったロシアの輸入が、 96年に入ってから減少し、 国際需給を緩和させてい る。 このため、 バターの国際価格は、 96年5月には、 前年に比べ13. 7%ダウン の1, 725米ドル/トン (約189, 000円) となり、 このことが域内価格に影響を及 ぼしている。  また、 EUでは、 近年消費者のし好が変化する中で、 乳業メーカーがチーズやヨ ーグルトといった、 より付加価値の高い乳製品の販売に力を入れていることに加 え、 95年の高価格でバターの需要家が購入を控える傾向が強まったことが、 96年 に入ってからの価格低下を招いている。

● 価格低迷により、 輸出補助金を引き上げ


 既に、 オランダを含め数カ国では、 バター取引価格が、 EUの介入価格328. 20 ECU/100kg (約44, 900円) を下回っており、 イタリア、 スペイン、 アイルラン ドでは、 4月からバターの介入買い入れが始まった。 このような中で、 EU委員会 は、 4月25日付けで、 バター (乳脂肪82%のもの) の輸出補助金を160ECU/100 kg (約21, 900円) から175ECU (約23, 900円) へと約9. 4%引き上げた。  これは、 EU委員会が、 介入買い入れを行うことにより、 約1万5千トン (96年 4月) にまで減少した介入在庫量を再び増加させるよりも、 輸出補助金を引き上 げて輸出を増加させるほうが、 より少ない財政負担で市況を回復できると判断し たためと考えられる。 しかしながら、 その後、 5月半ばには、 イギリスでも介入 買い入れが始まるなど、 現在のところ、 この輸出補助金の引き上げは、 あまり効 果を発揮していない状況にある。  このように、 EUのバター価格が低迷している中で、 今後のEU委員会の出方が注 目されるが、 今日までの材料から総合的に判断すると、 市況が回復するかどうか は、 やはりロシアを中心とした域外向け輸出の回復いかんにかかっていると考え られる。
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