チーズ取引の価格操作疑惑 (米国)





● NCEでの価格引き下げ操作


 ウィスコンシン州は米国最大の加工原料乳生産州で、 その85%がチーズに仕向 けられているが、 同州の農務省とウィスコンシン大学は、 先頃、 チーズ取引に関 する調査報告を公表した。 これによれば、 全米のチーズ取り引きの指標価格を形 成している全国チーズ取引所* (NCE) で、 88年から93年の間において、 売買に 参加している数社が価格を大きく引き下げる操作を行っていたとされている。 こ れらの会社は、 NCEでは売り手として利益を度外視しした取引を行い価格を引き 下げる一方で、 これを指標として実施される別の取引では、 バイヤーとして安値 で買い入れ、 全体では利益を得たとされている。  当該期間において、 NCEでの取引量は米国全体の0.5%にすぎなかったが、 NCE の価格を指標とした取り引きは、 9割を超えていたと推定されており、 NCEの価 格動向の与えるインパクトは、 極めて大きいものであったと考えられる。  * 所在地は同州グリーンベイ市。 取引には主要乳業メーカーやブローカーな どが参加している。

● 疑惑をかけられた乳業メーカーが反論


 疑惑を指摘された乳業メーカーは、 「取り引きは、 確固たる商取引目的に沿っ て公正に行われている。 報告で指摘されたような価格操作が行われたことはなく、 実際問題として、 1社または少数の会社が価格の操作をすることは不可能である」 と反論し、 報告内容は完全な誤りであるとしている。 また、 チーズ生産を行う乳 業会社の団体、 全国チーズ協会のティプトン会長も、 特定の会社が価格操作を行 っているとするこの調査報告を批判し、 NCEにおけるチーズ取引の指標価格形成 は、 ほかの農産物取引と同様、 本来の役割を果たしているとの考えを述べた。

● 公聴会で、 事実関係の調査と今後の対応策を検討


 こうした中、 この問題に強い関心を示したウィスコンシン州選出のガンダーソ ン下院畜産酪農小委員長 (共和党) は、 5月15、 16の両日に、 同小委員会におい て、 この問題に関する公聴会を実施する考えを明らかにした。 同委員長は、 この 公聴会で事実関係を調査するほか、 米国農務省または商品先物取引委員会による 規制強化なども含めて、 NCEの取引をより公正な競争の下で実施していく方法に ついても検討するとしている。
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