● 10月は、 対前年同期比9. 6%の低下
96年に入ってから、 EUの域内バター価格が低迷を続けている。 域内の指標価格
の一つであるオランダの取引価格 (ブランドバター) は、 96年に入ってから値を
下げ続け、 1月の723ギルダー/100kg (約48, 300円) から9月には660ギルダー
(約44, 100円) となった。 10月は横ばいとなったものの、 前年同月に比べ、 9. 6
%の低下と、 今年に入ってから最も大きい下げ幅となった。
● ロシア向け輸出の減少等が原因
この価格低迷の原因は、 96年に入ってからのバターの国際市況の悪化に伴う輸
出価格の低迷が域内価格に反映したこと、 および域内需要の停滞に依然として回
復の兆しが見られないことにある。
EUの主要輸出先であるロシアへの輸出は、 同国が経済事情の悪化により低価格
のニュージーランド産バターに輸入をシフトさせたため、 昨年よりも大幅に減少
している。
また、 域内のバター需要の減少は、 乳業メーカーが、 近年需要が増加している
チーズやヨーグルトなどといった、 より高付加価値の乳製品の販売に力を入れて
いることや、 また、 アイスクリームや菓子類などのバターを原料とする製品の生
産が、 消費者の健康意識の高まりなどを反映して、 昨年よりも落ち込んでいるこ
とによる。
● 今年度内は、 低迷の見込み
この価格低迷に対する措置として、 4月からはアイルランド、 イタリア、 スペ
インで、 そして5月からはイギリスで介入買入が実施された。 その結果、 4月末
には約1万5千トンにまで減少したEUの介入在庫量は徐々に増加し、 10月末には
前年同期に比べ220%増加の約4万4千トンとなった。 また、 民間在庫量は約14
万4千トンに達している。 さらに、 EU委員会は、 9月13日付けでバター (乳脂肪
82%のもの) の輸出補助金を175ECU/100kg (約25,700円) から190ECU (約27,90
0円) と約8. 6%引き上げた。
しかしながら、 国際市場の現状を見る限り、 今回の輸出補助金の引き上げ措置
が、 域内のバター市況の回復に寄与する可能性は少ないとみられる。 なぜなら、
主力輸出市場であるロシアでは経済事情が一層悪化して外貨準備が窮迫しており、
今回の措置によって、 同国への輸出が回復する可能性は少ないと思われるからで
ある。
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