● 需要期ながらも低下傾向に
牛海綿状脳症 (BSE) 問題の影響による、 牛肉からの消費シフトに伴う需要の
急増から、 豚肉価格は、 夏場にかけて歴史的な高値で推移してきたが、 最近にな
って、 やや弱含みの展開となってきた。
例年、 10月からクリスマス前までは、 季節的な需要期を迎え、 価格も堅調に推
移する時期となるが、 96年10月のEU平均豚枝肉卸売価格 (市場参考価格) は、 前
月より8%の値下がりとなった。 依然として前年との比較では高水準 (前年同月
比12%高) にあるものの、 一時のピークは、 徐々に脱しつつあるとの見方が強い。
● 値下り幅大きいドイツ
主要国別に、 10月の価格をみると、 ドイツでは、 前月より11%低下しており、
夏場の上昇率が急だった分、 比較的大きな値下がりとなった。 また、 フランス、
イギリスは、 前月よりそれぞれ8%、 4%値下がりした。
一方、 前年比でみると、 ドイツ、 フランスは、 それぞれ前年同月を14%、 11%
上回っており、 依然として高い水準を維持している。 しかしながら、 域内消費量
において圧倒的なシェアを占めるこの両国での値下がり傾向は、 域内全体の価格
に影響を及ぼしている。
なお、 域内外に豚肉を供給しているデンマークの価格は、 前月よりわずか0. 6
%の低下にとどまっているが、 これは最大の輸出先であるイギリス向けの輸出が、
最近の英ポンド高の影響により活発化していることによるものである。
● 豚肉消費増は今後も継続
10月に入っての価格低下は、 豚肉の域外輸出が減少傾向にあることや、 域内全
体の牛肉消費がわずかながらも回復に向かい、 豚肉需要を抑制する方向に働いた
ことが要因とされている。
しかしながら、 今夏の高価格をけん引した牛肉から豚肉への消費シフトについ
て、 イギリス食肉家畜委員会 (MLC) は、 一時的なものではなく、 今後も継続す
るものと予想している。 MLCによれば、 97年の生産量が96年を上回って増加する
ことによって、 今後、 需給のひっ迫傾向は収束に向かい、 食肉の中での豚肉価格
の価格競争力が増すに伴い、 牛肉から豚肉への消費のシフトは、 一層、 明確なも
のになると分析している。
● 96年平均では前年比15%高
EUの豚肉市況は、 対前月の比較においては、 徐々に弱含みの傾向となってきた
ものの、 今後しばらくの間は、 過去数年の同時期の価格を上回って推移するもの
とみられる。 フランス食肉ボード (OFIVAL) の予測によれば、 96年第4四半期の
豚肉価格は前年同期を12%上回り、 また、 96年を通しての平均価格も、 95年を15
%上回るとしている。
堅調な豚肉市況に加え、 飼料価格が値下がり傾向を示しており、 肉豚生産者は、
当面、 安定した収益が確保できることが予想される。 牛肉業界においては、 BSE
問題の深刻な影響が依然として解消されないのに対して、 豚肉業界にとっては、
これが思わぬ追い風となっているといえる。
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