農産物の自給率低下に悩むインドネシア



穀物を中心に輸入が急増


 インドネシアは、 1億7,000万人を超える人口を抱えるものの、 国内総生 産 (GDP) はまだ低く、 94年における1人当たりGDPは、 800米ドルに達して いない。 他の東南アジア諸国と同様に、 経済成長が著しいとはいえ、 全体として は、 まだ農業を中心とした発展途上国であるといえる。  そのインドネシアで、 近年、 農産物の輸入が急増し、 自給率が大きく低下して 問題となっている。 同国は、 88年以来、 食料品に関する貿易収支が輸出超過と なっていたが、 近年、 輸入が急激に増加している。  農産物輸入の増加は、 特にトウモロコシや大豆で著しいが、 これは、 鶏肉、 鶏 卵などの畜産物生産の増加に伴う飼料用需要の拡大によるところが大きい。 95 年には、 米、 トウモロコシ、 大豆など、 約15億4,500万米ドルが輸入され た一方、 輸出額は、 わずか400万米ドルであった。 また、 果物についても、 輸 出額が2億4,100万米ドルにとどまったのに対し、 輸入額が2億9,900 万米ドルとこれを上回った。

トウモロコシの自給拡大を計画


 政府は、 8月、 こうした事態を憂慮して、 トウモロコシの作付け面積を50万 ヘクタール拡大する計画を発表した。 トウモロコシの完全自給を達成することは 困難であるものの、 これにより、 少なくとも年間3億2,500万米ドルの外貨 節約効果があると説明されている。 このため、 政府内部では、 トウモロコシだけ でなく米、 大豆、 小麦などで同様のプロジェクトを実施するべきだとの意見も挙 がっている。  そうした状況下でも、 農業をめぐる国際環境は、 その厳しさを増している。 イ ンドネシアは、 先月ジャカルタで開催されたASEAN経済閣僚会議において、 当初、 国内農業保護の観点から、 フィリピンとともに、 米などの未加工農産物のASEAN 域内自由貿易地域 (AFTA) への取り組みを2020年まで延期することを主張し ていた。 しかし、 タイ等の強い主張により、 結局、 2010年までの実施に合意 せざるを得なかった。  インドネシアでは、 厳しさを増す国際環境下でも生き残ることのできる国内農 業を育成し、 農産物の輸入を減らすことができなければ、 将来、 工業化による国 家経済全体の発展を阻害する大きな要因になることが懸念されている。
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